求める要件によってはカスタマイズも
SIEM製品選定をシンプルにする7つの評価項目 自社に合った要件は?
SIEM製品を適切に選定するには、評価基準を設定し、自社のビジネスへの適合度合いを考慮することが大切だ。この記事では、評価項目の設定に必要な観点を紹介する。
セキュリティ情報イベント管理(SIEM)製品は、企業が使用するあらゆるソフトウェアのログデータを収集し、分析、報告する機能を備える。ログデータ収集の対象になるのはネットワーク管理ツールやホストOS、アプリケーションなどさまざまだ。中には、進行中の攻撃を検出して阻止する機能を備えたSIEM製品もある。SIEM製品を利用することでデータ流出などの被害につながりかねない侵害を防げる可能性がある。
SIEM製品の種類は多岐にわたり、中には手軽に導入できる簡易的なSIEM製品もある。こうした製品は、フル機能を備えたSIEM製品を導入する余裕がない企業や、その必要性を感じていない企業向けに設計されている。
本稿ではSIEM製品の選定に役立つ評価項目を紹介するが、実装機能が少なく選定に時間がかからない簡易的なSIEM製品については本稿の対象外にした。本稿で扱うのは、標準的な機能が実装されているSIEM製品を選定にする際にどのような評価基準を設定すればいいのかという点だ。
企業や組織に特有の要件に合ったSIEM製品を選ぶための評価基準を設定するのは簡単なことではない。製品を評価する際は、自社が何を重視すべきなのかを明確にするために、評価基準を一覧にしておくと役に立つ。具体的にどのような項目を考慮すべきなのか、以下で説明する。
1. 標準機能として収集、分析できるログデータの種類
あらゆるソースからログデータを取得し、分析できる性能がSIEM製品には求められる。ソースとして考えられるのは企業が一般的に利用しているセキュリティ管理のためのツール、例えばファイアウォール、仮想プライベートネットワーク(VPN)、侵入防止システム(IPS)、メールセキュリティゲートウェイ、Webセキュリティゲートウェイ、マルウェア対策ツールなどだ。
これらが生成するログデータを収集し、さらに分析する機能を備えていることがSIEM製品に期待される。分析ができなければセキュリティ管理において十分な役割を果たしているとはいえない。
OSが生成するログデータについてもSIEM製品は標準機能として収集、分析できる必要がある。ただし、ログデータを生成する機能を備えていないことが珍しくないモバイルOSは例外とする。主要なデータベース製品や、機密データを扱うアプリケーションのログデータの収集、分析についてもSIEM製品の標準機能としてあるとよい。
以上で挙げた項目以外のソフトウェアについてもSIEM製品がサポートしているとよいが、必須機能ではない。
SIEM製品が標準機能としてサポートしていないソフトウェアやアプリケーションのログを扱う場合は、開発を伴うカスタマイズによって必要な機能を実装するか、そのソースのデータは対象外にしてSIEM製品を利用するかのどちらかを判断することになる。
2. 既存のログ機能を補うことは可能か
企業が利用しているアプリケーションやソフトウェアの中には、充実したログ機能を備えているとはいえないものが存在する。SIEM製品の中には、そうしたソフトウェアやアプリケーションの不足機能を補う機能を備えた製品もある。
標準的なSIEM製品が備える機能はログデータの収集、分析、レポート作成に利用するためのものだ。しかしこの枠を超えて、十分なログ機能が備わっていないソフトウェアやアプリケーションのログデータを生成する拡張機能を備えたSIEM製品もある。
3. 脅威インテリジェンスを効果的に活用できるか
大抵のSIEM製品は脅威インテリジェンスのフィードを取り込むことができる。これらのフィードには世界中で観測された脅威に関する最新情報が格納されている。これらの情報には、攻撃を仕掛けるために使用されているホスト名や、その攻撃の特徴などが含まれる。こうしたフィードを使用する価値は次のような点にある。まず、SIEM製品がより正確に攻撃を特定できるようになる。そして阻止する必要がある攻撃や、攻撃を防ぐための最適な手法についてSIEM製品が幅広い情報を基に的確に判断を下せるようになる。
脅威インテリジェンスの品質はベンダーによって異なる。脅威インテリジェンスを評価する際は、脅威インテリジェンスの更新頻度、脅威インテリジェンスのベンダーが各脅威の悪質性への評価をどのように示しているかなどを考慮に入れるべきだ。
4. どのようなフォレンジック機能を提供できるか
フォレンジック(異常の原因特定につながる情報を見つけ出す)はSIEM製品の機能としてはまだ進化途上にある。従来のSIEM製品が採取するのはログソース側から提供されるデータのみだった。
しかし最近はさまざまなフォレンジック機能が追加され、疑わしいアクティビティーについて独自にデータ収集する機能を備えたSIEM製品も出ている。例えば、悪意のあるアクティビティーに関連付けられたネットワーク接続の全パケットを採取する機能がある。そうしたSIEM製品が採取したパケットが暗号化されていなければ、それをアナリストが分析し、そのパケットに関する深い洞察が得られる。
フォレンジック機能では特定のホストに関するアクティビティーを監視することも可能だ。特定のホストのアクティビティーを常時監視しておくこともできるし、怪しいアクティビティーの検知を起点にしてログ監視を開始することもできる。
5. ログ分析の正確性を確保するために必要な機能
SIEM製品がインシデントの検出や処理に使用される場合、SIEM製品のユーザー自身がログデータを確認し、分析できる機能が必要だ。高性能なSIEM製品でもイベントログを誤って検出、解釈してしまう場合があるためだ。SIEM製品自体を監視しておくアラート機能もあるとよい。SIEM製品が誤ってイベントログを検出した場合は、ユーザーが手作業で結果を検証しなければならない。
セキュリティ分析の業務に携わるユーザーは、調査を円滑に進めるためのインタフェースを必要としている。検索機能やデータを視覚化する機能などがそれに当たる。
6. 自動応答機能がタイムリーかつ安全で、効果的か
自動応答機能もSIEM製品の評価基準になる。この自動応答機能については、SIEM製品を利用する組織特有の要件に従って、その必要性を判断しなければならない。自動応答機能はネットワークのセキュリティ制御など、企業個別のセキュリティ管理に左右される要素が少なくない。
SIEM製品の中には、ファイアウォールなどネットワークのセキュリティを制御している機能に対して指示を送信し、悪意のある接続を終了させることができないものもある。
そのため自社で利用しているセキュリティを制御する機能に、SIEM製品からの要求を伝達できるかどうかを確認する必要がある。また次の点を考慮に入れることも重要だ。
- SIEM製品が攻撃を検出し、その攻撃を阻止するよう指示を出すまでに要する時間
- SIEM製品とその他のセキュリティ制御の機能間における通信の保護方法
- SIEM製品に期待できる攻撃を阻止する性能
- 自社のコンプライアンス戦略を支えるレポート機能
ほぼ全てのSIEM製品が詳細にカスタマイズできるレポート機能を備えており、これは企業のコンプライアンス戦略を推進することに役立つ。製品選定の際は、自社のコンプライアンス戦略に必要な要素を洗い出し、できる限り幅広くそれらの要素に関するレポートを生成することができるSIEM製品を選ぶといいだろう。
SIEM製品の標準機能として生成できないレポートがある場合は、カスタマイズで利用できるようになるかどうかを確かめておく必要がある。
下調べと評価
SIEM製品の利用には、企業内で利用しているあらゆるソフトウェアやアプリケーションとの連携が必要になる。そのプロセスは複雑であるため、自社にとってどのようなSIEM製品が最適なのか、評価基準を設定しておくことが肝心だ。全ての企業の環境に完全に適合するSIEM製品は存在しない。各企業におけるITシステムの環境やセキュリティ保護の要件はそれぞれ独自のものだ。
SIEM製品を必要とする理由さえ、企業ごとに大きく異なるだろう。コンプライアンスに関するレポートの作成、インシデントの検出と対処など、活用方法はさまざまだ。だからこそSIEM製品を購入する前に、独自の評価項目を設定することが重要だ。
本稿では、企業が取り入れるべきSIEM製品の評価基準を紹介した。ただし、ここで紹介した評価基準が全てではない。これらを基礎としてカスタマイズを加えることで、独自のSIEM製品の評価基準項目が完成するだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー