定義から応用例まで
いまさら聞けない「ブロックチェーン」とは何か? 何に使えるのか?
近年、さまざまなビジネスへの応用が広がっている「ブロックチェーン」について、その技術と仕組み、課題、応用例を基礎から解説する。
ブロックチェーン技術は、ビットコインなどの仮想通貨を実現する手段として重要な役割を果たしており、近年では仮想通貨以外の分野での活用においても注目を集めている。2018年12月18日に開催されたブロックチェーン技術のビジネス利用に関するイベント「ブロックチェーン・ビジネスサミット」では、ブロックチェーン技術を活用中の企業による講演や、導入を検討中の企業との意見交換などが実施された。本稿ではブロックチェーン技術の開発企業、LayerXの丸野宏之氏による同イベントでの講演内容を基に、ブロックチェーンそのものの定義やブロックチェーン技術の課題、応用事例を解説する。
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ブロックチェーンとセキュリティ
「ブロックチェーン」とは
丸野氏は、ブロックチェーンについて「複数のコンピュータ(ノード)で構築された分散型の『データベース』と考えると理解しやすい」と説明する。ブロックチェーンは以下の特徴を備えている。
- 全てのノードが同一のデータを保持する
- 権限を持つユーザーのみがデータを読み書きできる
- データの改ざんを防止するプロセスがある
- 非中央集権的な構造を持つ
複数のトランザクション(取引記録)をまとめたものを「ブロック」と呼び、ブロックが連結したものを「ブロックチェーン」と呼ぶ。つまりブロックチェーンが保持する内容は一連の取引記録だ。トランザクションは取引の正当性を保証するための電子署名を、ブロックは自身が連結するブロックの識別子(ハッシュ値)を内包している。
あるノードでトランザクションが発生すると、そのノードはネットワーク内で隣接したノード(隣接ノード)にトランザクションを送る。隣接ノードは届いたトランザクションを検証し、正当性が確認できた場合、そのトランザクションをさらに隣のノードへ送信する。こうしてトランザクションがネットワーク内のノードに伝搬される。
各ノードはトランザクションを束ねてブロックを形成し、自身が持つブロックチェーンにブロックをつなげていく。つまり全てのノードが同じデータを持ち、任意の取引を検証する。これはシステムの単一障害点を作らないようにするだけでなく、データの改ざんを防ぎ、正当性を保証する効果を生み出す。
トランザクションの正当性や次に連結するブロックを判断する基準といった、トランザクションやブロックに関する取り決めを「プロトコル」という。「ビットコイン」は分散型暗号化資産を、「Ethereum」は分散型アプリケーション構築環境をそれぞれ定義したプロトコル例だ。プロトコルの中でも、特にブロック同士の連結に関するルールを「コンセンサスアルゴリズム」と呼び、ブロックチェーンの性質を決めるという重要な役割を果たす。
スマートコントラクトとは
取引行為を自動実行する仕組みを「スマートコントラクト」という。ブロックチェーン技術を活用したスマートコントラクトでは、取引を実行するための条件をあらかじめ定義しておく。第三者の介入なく取引を自動成立させられるため、プロセスにかかる人的コストを削減できる。誰でもプロセスの検証が可能である点も、取引の改ざん防止や透明性の確保につながる。
企業はブロックチェーン技術を活用することで、それまで統一できていなかった契約形態を統一し、検証や実行に手間をかけることなく取引を遂行できる。
ブロックチェーン技術の課題
ブロックチェーン技術およびスマートコントラクトが抱える課題としては、以下が挙げられる。
- 暗号化のための秘密鍵など、必要なリソースの管理が複雑なため、導入や運用に時間と手間がかかる。システムの一部でのみブロックチェーン技術を用いたり、コストの負担を分散させたりするなど、サービスや運用の設計に工夫が必要。
- 処理が遅い。補助的な操作を実行する「サイドチェーン」や、逐一通信が発生しない「オフチェーン」などを使う、あるいはより処理能力の高いプロトコルを採用するといった処理の高速化を図る。
- ブロックチェーン技術自体が改ざん耐性を持っていても、入力データに誤りがあると結果も間違ったものになってしまう。専門家による保証以外にも、別のブロックチェーン技術を通じて正当性を検証するといった方法がある。データが改ざんできないように、温度センサーなどのIoT(モノのインターネット)デバイスからデータを直接取得することも有効。
- スマートコントラクトが脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていると、取引先のセキュリティに関係なく侵害が生じる恐れがある。スマートコントラクトのプログラム自体を簡略化してセキュリティリスクを減らしたり、外部組織にコード監査を依頼したりすることで対処する。
- パブリックに公開する情報の秘匿性が保たれない。データを明らかにしないまま、結果が正しいことを証明する技術が求められる。
こうした課題の解決策は現在も研究が進められている。例えばコンピュータにおける機能別の階層構造「OSI参照モデル」のように、ブロックチェーン技術の階層構造を標準化しようという動きも出てきている。
ブロックチェーン技術を何に使うか
ブロックチェーン技術の応用に向いているのは、次の特性を備える分野だという。
- 複数の関係者が存在する
- 特定の誰かを「信頼の基点」としない(トランザクションの正当性判断のよりどころとなるような特定のノードが存在しない)
- 価値の保存や移転をする(各国の通貨や電力などの各リソースを、仮想通貨などの統一された尺度を持つ価値に変換することで、異なる性質の価値を共通化し、取引をしやすくする)
ブロックチェーン技術は「信用コスト」、つまり信用性を維持したり確保したりするための検証にかかるコストを下げるために使われる。複数機関の経由に伴う余分なコミュニケーションや確認作業を排除し、人的コストを削減できる。そのようなメリットを生かせるのは主に金融業や不動産業、公共分野といった、取引成立に至るまでの過程や、取引の正当性の保証に人的なやりとりが発生しやすい業種だ。鉱業や製造業など、取り扱う対象が実体であり、デジタル化が困難な領域を持つ業種には不向きだという。
カーシェア会社の資金調達にブロックチェーン技術を活用した事例では、トークン(独自通貨)を発行し、トークンによって国内外から資金を調達した。投資とそれに応じた利益を、トークンという共通化された価値でやりとりすることで、海外の小規模企業への投資に対する不安を解消した。さらにジョージア政府は土地登記情報をブロックチェーンに格納することで、情報登録にかかるコストを抑えるだけでなく、汚職による登記情報の改ざん防止に成功した。
価値の保存や移転を生かした例としては、電力の直接取引が挙げられる。消費者は自宅の太陽光パネルなどの自家発電設備で発電した電気をため(保存)、好きな時に独自通貨を用いて売買できる(移転)。金銭の取引以外にも、実世界のさまざまな事象に対してブロックチェーン技術のビジネス利用が始まっているといえる。ブロックチェーン技術の活用を目的化するのは望ましくないものの、適切な目的の下でブロックチェーン技術を活用すれば、相応のメリットが期待できるはずだ。
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