人事担当者が語る、成功する採用戦略
優秀な人材を獲得する 採用マーケティングを高める6つのポイント
求職者が主導する売り手市場では、最高の人材の獲得は困難を極める。人材獲得競争に勝つための、採用マーケティング戦略の6つのポイントを説明する。
現在の雇用市場は応募者主導の売り手市場だ。そのため空席が出た職務を埋めるのは不可能に思えるかもしれない。
新しい時代には新たな手法が求められる。現在のHR(人事)部門は、効果が高いマーケティングキャンペーンを展開している観光ビジネスの広告代理店のように振る舞う必要がある。採用活動では、旅行先が自社に変わるだけだ。こうした応募者を引き付ける手法を本稿では「採用マーケティング」と呼ぶ。HR部門の責任者や採用チームにはこの採用マーケティングが必須になる。
「採用担当者は、いまだに求人掲示板に欠員募集をやみくもに掲載し、適格な候補者が応募してくるのを期待している。しかし『求人広告を掲載して応募者が来るのを祈る』スタイルの採用手法は信頼できない」と話すのは、Allegis Groupで企業戦略とマーケティングのエクゼクティブ・ディレクターを務めるレイチェル・ハリスラッセル氏だ。
採用マーケティング戦略は、積極性が極めて高い採用戦略だ。
「採用マーケティング戦略とは、自社の文化を目に見える形にし、最高の人材を引き付ける手法だ」というのは、セルフサービスSEOツールのプロバイダーMarketGooのCEOウエンセス・ガルシア氏だ。
自社に合わせた採用マーケティング戦略を立てる方法はたくさんある。本稿では、この戦略の基礎を築く重要な手順を6つ紹介する。
1.自社が才能を発揮できる場所であると売り込む
観光事業のマーケティングの例に戻ろう。カリフォルニアに行きたい旅行者とアイスランドに行きたい旅行者に同じキャンペーンを実施しても、魅力を感じてもらえないだろう。
同様に、採用活動では自社独自の文化を売り込むことで関心を呼び起こし、注目を集める必要がある。
まず自社で働くことについて、どのような点が気に入っているかを現社員に問い掛けることが重要だとガルシア氏は話す。社内文化を築くチームを編成すれば、組織が築き上げたことを広げていくのに役立つだろう。その文化をセールスポイントにする。具体的には、理想の採用候補者の価値観に自社の文化が一致していることを売り込むことが有効だ。自社の文化を売り込むには、その文化をメディアに話せるリーダー(CEOが望ましい)が必要だ。
ソーシャルメディア、従来型の報道機関、企業口コミサイトを通じて、自社が築いている優れた文化の評判を高めることも同じく重要だ。こうした手法には、社員が自社ブランドの最高の使者になることも含まれるとガルシア氏は話す。
2.潜在的な候補者の状況を理解する
米国の失業率の低さから考えると、従来の採用方法の効果が失われている主な理由の1つは「最高の人材が積極的に仕事を探さなくなっている」ことにあるかもしれないとハリスラッセル氏は話す。とするならば、既に雇用されている優秀な人材を引き付けることが必要になる。
ハリスラッセル氏は、多数の求人が同じ人材に集中する可能性があるため、ただ潜在的な候補者を見つけ出して転職を勧めるだけでは失敗する恐れがあると注意を促す。「共通の関心事項を持つ仲間が集うコミュニティー、Webサイト、ソーシャルフォーラム、モバイルフォーラムなど、潜在的な候補者が頻繁に訪れる場所を見つけることができなければ、求人広告は物足りないものに終わるかもしれない。そうした場所は、採用マーケティング戦略の対象としても効果がある」とハリスラッセル氏は提案する。
3.自社が理想とする人材のペルソナを知る
優れた採用マーケティング戦略になるかどうかは、募集する仕事の候補者について理解しているかどうかに左右される。
「理想の候補者が何を望んでいるかを知り、それを基に洞察して、自社のニーズを反映するターゲットペルソナや『採用したい人間像』を作成する」と話すのは、デンマークのコンサルタント会社Nextwork A/Sでコンサルタントを務めるマッツ・ヘネルン氏だ。
採用活動のターゲットを正確に定めるには、採用したい人材、その人材が見つかりそうな場所、新しい仕事を求める理由やキャリアを変える理由を知る必要がある。
B2Bデジタルマーケティング代理店Adhere Creativeでマーケティングディレクターを務めるマット・リー氏は次のように話す。「当社では、候補者が楽しいと感じた仕事について、その核となる要素を多数引き出し、それをキャンペーン促進のための広告コピーに変えた」
4.採用候補者に仕事の内容をアピールする
売り手市場でも、採用マーケティング戦略には仕事リストが重要な要素になる。応募者はGlassdoorなどの企業口コミサイトをチェックして、社員が書き込んだ自社での仕事についての口コミを確認するかもしれない。ソーシャルメディアをチェックして、自社の文化について話しているフィードの内容を見たり、LinkedInでの結び付きをたどっていたりするかもしれない。しかし見込みのある候補者が応募者になるかどうかが決まるのは、採用担当者が自社や仕事の内容を提示する方法によるところが大きい。自社を売り込む機会を失ってはならないということだ。
遠隔地採用に主眼を置く人材紹介会社DistantJobでマーケティングディレクターを務めるルイス・マガリャエス氏は次のように話している。「当社は、仕事の全内容をマーケティングによって提示している。自社が抱える人材をクライアントに売り込むのと全く同じように、空席のある職務を自社が抱える候補者に売り込もうとしている」
「見込みのある応募者が読んで、挑戦したくなるような素晴らしく魅力的な仕事紹介をすることがポイントだ。それだけではなく、取り組む職務の内容やその仕事の素晴らしさを正直に評価して伝えるべきだ」(マガリャエス氏)
5.人材獲得のためのツールを活用する
応募者が就業機会を探す方法の中には、従来のオンラインによる方法もあれば、モバイルを利用する方法もある。応募者のスキルによっては、求めるキャリアチャンスを見つけるのにさまざまな方法を選択できる。一人一人の候補者が好みのツール(ソーシャルメディアなど)を利用して自社の採用情報を見つけられるように、連絡や応募を実行しやすくした方がよい。
分かりやすい応募フォームや事前に質問が設定された入力フォームを使って、簡単に応募できるようにしたり、募集用のテキストメッセージを掲載したりすることも効果がある。
「当社では、『文章で応募』キャンペーンを導入した。これはかなりの成功を収めた。ただしもっと効果が高かったのは、応募処理をするスタートページの形式を簡単にしたことだった。少数の質問だけで仕事に適した候補者を特定する方法を考えるよう、社内採用担当者に指示した。こうした質問だけを掲載し、他は全て削除した」(リー氏)
人工知能(AI)技術を用いたツールもある。こうしたツールは、採用担当者にとっては人材を見つけ出すことを、候補者にとっては企業紹介から素晴らしい体験や将来を思い描くことを迅速かつ簡単にする。
「候補者情報を収集するAI対応のツールがあれば、デジタルソースチャネルを自動検索して、候補者についての情報を構築できる。人手で情報収集するよりはるかに短時間で済む」(ハリスラッセル氏)
ハリスラッセル氏は次のように付け加える。「モデルとの一致をアルゴリズムで調べるのにAI技術を適用するツールもある。こうしたツールは、空席のある職務に本当に適したスキルや能力を認識することで、見込みのある候補者と募集機会に結び付ける。最後に新しいAI技術は採用過程の手作業や管理作業を自動化するのに役立つ可能性がある。そうなれば採用担当者は応募者との関係を築き、応募者が肯定的な体験を得られるよう働きかけることに専念できる」
6.目標を立て、測定を繰り返す
採用マーケティング戦略を適切に管理するには、取り組みの現状を示す信頼性の高い測定基準が必要になる。
「マーケティング戦略が機能しているかどうかを確認するには、測定可能な目標を明確に定義する。目標のある採用マーケティング戦略を制定し、その成果を測定する企業は、最高の人材を求める戦いに勝利し、彼らを自社ブランドの支持者や提唱者として雇い入れることができるだろう」(ハリスラッセル氏)
採用マーケティング戦略の導入を始める前に、戦略全体を洗い直し、計画に十分な時間を費やすようにすることも必要だ。
「採用マーケティング戦略を開始するには、その戦略を実行に移す担当者を考える。多くの場合、採用活動は1人の担当者または1つの担当チームが実施しなければならないと考えられている。真実は全く逆だ。可能であれば、共同で行う取り組みが大きな効果を生み出すだろう」と話すのは、英国を拠点とするWebデザインとデジタルマーケティング企業Imaginaire Digitalでデジタルマーケティングエクゼクティブを務めるチャーリー・ウォラル氏だ。
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