事例だけでなく中身で選ぶ
「クラウドERP」の失敗しない選び方 オンプレミスとの違いも解説(2/2 ページ)
「クラウドERP」だけで選んではいけない
企業が見過ごしがちなのは、購入対象はクラウドERPそのものだけではないことだ。ベンダーが提供する周辺サービスも購入対象になる。
ベンダーからクラウドERPを直接購入する以外に、付加価値再販業者(VAR)を利用することも可能だ。VARは、製品/サービスに関連機能やサービスを追加するなど、細かい調整を加えて販売する企業を指す。アプリケーションに関する独自の知識を備えており、クラウドERPの導入やシステムインテグレーション、カスタマイズ、エンドユーザーのトレーニングを支援する。
クラウドERPに限らず、ERPシステムの導入や刷新を検討している企業は大抵、似たようなユーザー事例の有無をベンダーに尋ねる。だがベンダーの評価は、こうした基本要素だけで済ませるべきではない。適切な評価を実施し、そのベンダーのビジネスが長期にわたって立ち行くかどうかを見極めることが欠かせない。調査会社やコンサルティング会社によるERPベンダーの調査結果に注目すべきだ。製品/サービスの研究開発にどれだけ投資しているかなど、ベンダーの細かい点にも注意を払うことが重要になる。
ベンダーが実際に提供するクラウドERPの中身は、必ず明確にしておかなければならない。クラウドを前提として開発された“真のクラウドERP”か。単にクラウドの選択肢をそろえたオンプレミスERPか。リモートアクセスできる従来型のERPシステムにすぎないのか――。そうしたことを明確にする必要がある。
利用可能なモジュールを尋ねることも重要だ。その上で、必要な機能をベンダーが用意しているかどうかを判断する。これらの視点で、ベンダーとその製品/サービスを比較することが不可欠だ。そうして初めて、自社のビジネス要件に最適なベンダーとクラウドERPを見極めることができる。
さまざまなSLA
サービス品質保証契約(SLA)で提供するサポートのレベルは、ベンダーによって異なる。明確に定義されたSLAは、企業とベンダーの間で争いが起きた場合に、両者を守る。
クラウドERPの可用性を確認することが大切だ。法制度が求める要件と、ベンダーが提供するセキュリティ要素について理解することも欠かせない。必要な保護レベルをベンダーと交渉し、データの所有権や管理、復旧に関する責任の所在を把握する必要がある。
料金の根拠を確認することも大切だ。エンドユーザーの増減に合わせて料金がどう変わるのか、そうした増減に伴って生じる可能性のある費用はいくらなのかが、条項で定められていることが重要になる。ベンダーは将来的に料金を引き上げる可能性がある。値上がりし続ける料金を支払うか、別のクラウドERPに移行するかの選択肢しかない状況は回避すべきだ。
他のシステムと同様、クラウドERPそのものの料金だけでなく、トータルコストを知っておくことも重要になる。計算をすれば、システム連携や導入、継続的なサポートなどの追加コストが、どの程度必要になるかが分かる。こうしたコストの多くは交渉可能だ。
計画とトレーニングの実施
クラウドERPベンダーとの関係は長期にわたることになる。そのベンダーがクラウドERPをどのように実装しているのか、可能な限り把握しておくことが賢明だろう。必要なモジュールや機能を一括導入する「ビッグバンアプローチ」を採用すべきか、段階的な導入を採用すべきかについても検討しておいた方がよい。この判断は、企業規模や導入したいモジュール、企業戦略に基づく優先順位に左右されることがある。
企業がクラウドERPと共に維持や新規導入を考えているシステムによっては、システム間連携が重要な関心事項になる。既存のデータをクラウドERPへ移行する計画も同様だ。クラウドERPベンダーに、連携手法や利用可能なデータ移行ツールについて確認する必要がある。ベンダーに対して、システム連携やデータ移行に関する、類似のユーザー事例の提示を求めることも有効な手段だ。
記事冒頭に示した表(右に再掲)は、検討事項ごとにオンプレミスERPとクラウドERPの相対的な機能レベルを比較している。例えばオンプレミスERPでは、データの制御性が高レベルになる。一方のクラウドERPは、一般的には本格的なデータ制御機能は提供しない。クラウドERPの方がより導入しやすく、クラウドERPの方が、オンプレミスERPよりも短期間で導入できる。
エンドユーザーがひときわ大きな関心を向けるのが、トレーニングとサポートだ。企業は、エンドユーザーが各自のスキルを磨くために、どのようなリソースを利用できるかを把握する必要がある。ベンダーはFAQ(よくある質問集)やマニュアル、リモート/オンサイトのトレーニングプログラムなどを用意している。ただし利用に当たっては追加コストが発生する場合がある。
難しいとは限らないクラウドERPの選択
クラウドERP選びは困難な作業になる可能性がある。大規模な投資となる以上、選定プロセスを慎重に進めることが大切だ。信頼できる選定手法に加え、適切な経験や専門知識を組み合わせることで、選定や導入に当たっての落とし穴を回避できる。これにより最適なソフトウェアを選び出し、最終的にクラウドERP導入で成功を収める勝算を高めることができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー