大容量化からスマート化へシフトする
2019年ワイヤレスネットワーク注目動向 ミリ波、5G、ネットワーク分析の未来
2019年にはワイヤレスネットワークの興味深いトレンドが幾つか期待できる。ミリ波需要の急増やエンド・ツー・エンドのネットワーク分析誕生の兆し、そして5Gサービスの開発などがある。
1年の市場動向を予測する季節がまたやってきた。ネットワーク業界、特に筆者の専門分野であるワイヤレスネットワークにおける昨今の動向を振り返るとともに、今後の展望に目を向けてみたい。既に幾つか予測を立てている2019年の市場動向のトレンドと、今後必要になると思われるワイヤレスネットワークテクノロジーの「ウィッシュリスト」についても紹介したい。
筆者はテクノロジーアナリストとして、膨大なデータを詳しく調べ、今後について正当かつ合理的な予測をまとめた。また、ワイヤレスネットワークのトレンドに何が欠けているかも指摘する。
一例として、以前ワイヤレスネットワーク技術を調査した際、筆者は携帯型の安価なアンライセンスバンド(無線局免許を必要としない周波数帯)のスペクトラムアナライザが必要だと結論した。その数年後、必要だと述べたそのデバイスが手元に届いた。現在、スペクトラムアナライザはWi-Fiなどのワイヤレスシステムの問題を物理レベルで診断する最善の方法だ。このようなワイヤレスネットワークを診断するデバイスは、ワイヤレスネットワークを利用する企業やサービスプロバイダーにとって不可欠のツールキットになっている。
この例は、アクセスポイント(AP)の一元管理、ワイヤレスネットワークの分析、AI(人工知能)技術や機械学習などのテクノロジーにも同じことがいえるだろう。求めれば、あるいは確信を持って予測すれば、それが実現する。
そこで、本稿では2019年のワイヤレスネットワークのトレンドを予測し、求めていきたい。
1. ミリ波
30GHzを上回る周波数、特に60GHz周辺のアンライセンス周波数帯の広い領域は現時点でまだ十分に活用されていない。この領域に非常に大きな潜在能力が備わっていることを考えれば、これは恥ずべきことだといえるだろう。ワイヤレス機器のコンポーネントの価格は下がり、使いやすさは向上している。無線LAN規格の「IEEE 802.11ad」とその後を継ぐ「IEEE 802.11ay」には依然として大きな期待を抱いている。このIEEE 802.11ayによって100Gbpsのデータ伝送速度が出る無線LANシステムが実現する可能性がある。
一方で、2019年には「ポイント・ツー・ポイント」「ポイント・ツー・マルチポイント」「メッシュ」などの仕組みを使ったさまざまなサービスのリリースが期待できる。さらに5G(第5世代移動通信システム)によるモバイルサービスが登場する。周波数帯はワイヤレスネットワークの高速道路のようなものだ。ワイヤレスネットワークの利用が増える中で、どの道路も無視することはできない。
2. パフォーマンスを計測するAP組み込みツール
この実現は筆者の切実な願いだ。Wi-FiのクライアントとAP間における特定の接続のパフォーマンスを計測したい。だが、現時点ではそのための手段がない。このためには基準となるベンチマークサーバをAPに組み込む必要がある。それにより、APから別の接続を使ってサーバに至るまでを徹底的に調べなくても済むようになる。現在の調査方法では変動要因が増えてしまう。組み込み型の方法は非常に簡単そうに思えるが、まだ実現していない。
3. システムに依存しないエンド・ツー・コアの分析
AI技術や機械学習に基づくネットワーク分析が欠かせない。現状のネットワークは、人間が理解、構成、最適化、トラブルシューティングし、なおかつ投資利益率(ROI)を維持するには複雑になり過ぎている。ネットワーク全体や複数ベンダーの製品をまたいで実行できる分析が必要だ。つまり、エンド・ツー・エンドの分析が求められている。ベンダーの垣根を越えた統合管理と同様、この問題は解決が難しいが、必要だ。今後数年以内に、エンド・ツー・エンドの分析を非常にうまく扱う者が登場するだろう。
4. ワンストップの「Wireless security as a Service」
セキュリティは常に進化しており、その取り組みに終わりはない。潜在的な脅威は相変わらず幅広い領域に存在していることを前提にすると、エンド・ツー・エンドのクラウドサービスがこのセキュリティ問題に対処する最善の方法になる。この分野は進んでいるが、やはりその取り組みが終わりに達することはない。2019年の願いは単純だ。あらゆる場所の全ての組織が堅ろうなセキュリティポリシーを策定し、適用することを求める。これを実施していない組織が多いことには驚かされる。
5. 通信事業者に依存しないサービス
データをただ通過させる土管屋になりたがる企業はないが、誰かがそれをやらなければならない。複数の企業がこの役割を果たすのが理想だ。市場の競争によってパフォーマンス、信頼性、可用性は向上し、コストは下がる。データの土管を担う通信事業者がサービスの付加価値向上を狙った取り組みを続けるのは問題ないが、最終的には全てのサービスが通信事業者から独立する必要がある。
その例として次のように考えて欲しい。あなたはIPアドレスを含むデータプランとしてブロードバンドアクセスを通信事業者から購入している。だが、そのIPアドレスを使った電話番号はその通信事業者のところにはない。同じことが、モバイルサービスやユニファイドコミュニケーション、その他あらゆるネットワークサービスやコミュニケーションサービスにもいえるだろう。
6. 「大容量化」に代わる「スマート化」
これまで、ネットワークシステム全体のパフォーマンスの問題に対処する方法は、次世代テクノロジーにアップグレードすることだった。例えば、10/100/1000ギガビットイーサネットやIEEE 802.11b/g/n/ac/axといった規格において、新世代のものを採用する。その方向性はいいのだが、今後はそのような総当たり的な手法ではなく、インテリジェンスを活用したより優れた手法を適用することがトレンドになるだろう。その手法として、例えばAI技術、機械学習、ソフトウェア定義のサービス、ネットワーク仮想化などがある。
時間の経過とともに、ネットワークは主にソフトウェアで定義されるようになり、専用ハードウェアによるネットワーク構築は減ってきた。ソフトウェアによるネットワークの方が柔軟性や順応性に優れている。それはパフォーマンスに優れた安価なプロセッサ上でソフトウェアが実行されるためだ。例えば、5Gネットワークの主要な要素を、既成のコンピュータとオープンソースのOSによって実行されるソフトウェアとして構築できる。あらゆるネットワークにおいて、同様の例が見られるようになるだろう。
ワイヤレスネットワークの新しいトレンドを追い続けることは、ネットワークの中でも刺激的な領域だ。ネットワーク技術は進化が速く、複雑だ。そして最も重要なこととして、面白い。2019年に読者のワイヤレスネットワークに関する取り組み全てが素晴らしい結果を迎えることを願っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー