セキュリティはプロセスであって、製品ではない
「AIセキュリティ製品」を万能だと思ってはいけない、これだけの理由(1/2 ページ)
ITリーダーはセキュリティレベルを引き上げる手段として、AI技術に注目している。AI技術はどの程度のセキュリティを提供できるのか。AIセキュリティ製品の利点と、現状の限界について解説する。
サイバーセキュリティの重要性がかつてなく増す中で、セキュリティを次のレベルに引き上げるために人工知能(AI)技術を使う専門家が少なくない。最高情報責任者(CIO)にとって重要な問題は、AI技術でどの程度のセキュリティを提供できるのか、現実的にはAI技術を活用したセキュリティ製品(以下、AIセキュリティ製品)にどれほど期待できるのか、という点だ。
定義ファイルを使ってマルウェアを検出し、ルールベースのシステムでネットワークの異常を検出する――。こうした従来のセキュリティ製品が採用してきた手段は、既知の脅威に関する情報を大量に必要とする。実際のマルウェア流行があって初めて、セキュリティ専門家は悪質なファイルを抜き出して固有の特徴を見極め、その助けを借りてマルウェアを認識できる。
同じことはルールベースのシステムにも当てはまる。われわれは自らの経験を基に、何を悪質な行為と見なすのかというルールを設定したり、単純にシステムにロックを掛けて、あらゆるアクセスを制限したりすることで安全を守る。
これらの手段の問題は、その受動的な性質にある。攻撃者は、既知のルールをかわすための革新的な手口を見つけ出す。セキュリティ専門家がハッキングに気付いた時には、既に手遅れのこともある。
併せて読みたいお薦め記事
「AIセキュリティ」についてもっと詳しく
サイバー攻撃に悪用されるAI技術
「AIセキュリティ製品」の可能性
AIセキュリティ製品と従来型セキュリティ製品の違いは、その適応性にある。AI技術は従うべきルールを必要とせず、パターンを見極めて学習できる。「脅威を一対一でマッピングして対抗する定義ファイルベースのアプローチと異なり、AI技術は過去に観測されたあらゆる脅威について学習をすることで、それまでにはなかった新手の脅威を特定する」。セキュリティベンダーのVectra AIでセキュリティ分析責任者を務める、クリス・モラレス氏はそう解説する。
一般的なランサムウェア(身代金要求型マルウェア)による攻撃を例に取ろう。何らかの手段で標的のデバイスに感染したランサムウェアは、デバイス内部のファイルをスキャンし、重要と見なしたファイルのコピーを暗号化。元のファイルを削除して、暗号鍵をランサムウェアの運営者に送る。攻撃者は個別の被害者に固有の暗号鍵を入手する。
セキュリティサービスを手掛けるNisosの最高セキュリティ責任者、ダグ・シェパード氏は、こうしたランサムウェアによる一連の流れは「独特だ」と指摘。「信頼できるソフトウェアに、こうした挙動はあまり見られない」と語る。従来型のマルウェア対策ソフトウェアでランサムウェアによる攻撃を阻止するためには、既知のランサムウェアの観測で得られる特徴を探す必要があり、有用性は限られる。
AIセキュリティ製品は対照的に、ランサムウェア「らしい」挙動を特定できる。「AIセキュリティ製品は、こうした一連の出来事に着目し、好ましくないものにフラグを付ける」(シェパード氏)
AIセキュリティ製品は「インテリジェンス」が肝
AIセキュリティ製品のもう一つの強みは「インテリジェンスの組み合わせ」にある。コンピュータシステムはさまざまなソフトウェアコンポーネントで構成される。各コンポーネントは独自のセキュリティ対策の仕組みを設けており、ログファイルを記録する。今までは人間がこの全てを監視して、それぞれを個別に調べる必要があった。
全システムを横断するパターンを発見できるのも、AIセキュリティ製品の強みだ。AIセキュリティ製品は、ログファイルに記録されたタイムスタンプやエンドユーザーを確認して、それぞれのエンドユーザーがどのような行動をしているのかを把握できる。これによって悪質な挙動をうまく洗い出すことができ、検知漏れも減らすことが可能だ。
「セキュリティチームはアラートが多過ぎて、それに対処できるアナリストの人手が足りない課題に直面している」と、セキュリティを含めたソフトウェアベンダーであるMicro Focusのサイバーセキュリティエバンジェリスト、チェイス・クローソン氏は話す。機械学習をはじめとするAI技術を利用することで、本当に対処すべきアラートを絞り込むことができ、検出や対処の平均時間も改善できると、クローソン氏は説明する。
クローソン氏によると、最終目標となる半自律的なセキュリティオペレーションセンター(SOC)では、アナリストは最も複雑あるいは最も重大なイベントのみに対処すればよく、残りは機械に対処法を学習させて自動化する。
AIセキュリティ製品は、攻撃者にとって全く新しい課題を浮上させる。クローソン氏やシェパード氏のようなセキュリティ専門家の予想では、総当たり方式のブルートフォース攻撃やbot攻撃はいずれ過去のものになり、攻撃者が侵入するためにはAI技術を使わなければならなくなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー