新たなテクノロジーの渦へ
21世紀のCIOはますます「戦略の人」となる(2/2 ページ)
テクノロジー主導で競争を高める差別化
他の研究でも似たような結論が引き出されている。例えば、CompTIAが2018年に公開した同社のレポート「Using Strategic IT for Competitive Advantage」(競争上の優位性を得るための戦略的IT利用)は「現在のIT部門と10~20年前のIT部門の大きな違いは、テクノロジーを用いて企業の戦略的目標を推進できる度合いにある」と述べている。
戦略を練り、競争力の高い差別化をする上で、CIOとIT部門の重要性が全体として増していると話すのは、CompTIAでテクノロジー部門のシニアディレクターを務めるセス・ロビンソン氏だ。
「かつては事業部門が事業目標を定め、IT部門がそれを支援していた。こうした支援をIT部門がするのは変わらない。むしろ、こうした事業目標に以前よりも直接関わるようになっている」とロビンソン氏は説明する。事業部門の目標とIT部門の相互依存関係が強まることで、CIOのこれまでの職務が広がっている。「CIOの役割には、常に少しは戦略的な要素があった。その戦略的要素が占める割合が増えている」(ロビンソン氏)
所有権の放棄と管理フレームワークの強化
企業が未来に向けて進む中で、CIOはIT部門に対して、自分たちだけがテクノロジーを所有するわけではないことを理解させる必要がある。
事業部門は、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)など、自部門でのテクノロジーの追求と導入を今後も続けることになる。その目的は、自部門の事業分野の効率を高め、事業要件に最適なテクノロジーを組み合わせることだ。
「こうしたことは事業部門が推進しなければならない。だが、そうなると、IT部門の主な役割はリスクを最小限に抑える『コントロールフレームワーク』になる。そして、こうしたことの重要性が増すにつれ、テクノロジーの連携も増えていく」(ル・クレア氏)
IT部門には変化が求められている。このトレンドにはCompTIAも注目している。
「IT部門の血はある程度、事業部門に流れ出している。だが多くの場合、IT部門は事業部門と共に歩んでおり、パートナーとして連携している。事業でこうしたことが起きるのを目にすることがあり、それは最先端になるほど増えている。事業部門とIT部門が協力して取り組む環境が形成されている」とロビンソン氏は言う。
ロビンソン氏が強調するのは、IT部門がなくなるのではなく、その役割や責任が変わっていくことだ。「事業部門の方が多くの戦略的要素に対処し、必要なものをかき集めるかもしれない。だが、それを統合し、セキュリティを確保することは事業部門には荷が重い。近い将来に事業に役立ちそうなテクノロジーを見極めることも得意ではない。そのため、技術戦略を推し進める上で、IT部門の役割はまだ多いと確信している」(同氏)
CIO同士の連携
同じように、Forrester ResearchはIT部門の役割がオーケストレーションへと向かうと予測する。こうした移り変わりが必要なのは、「組織や事業を混乱させることなく、イノベーションを運用環境に取り込むためだ」とル・クレア氏は述べる。
「事業にITが入り込むようになると、複数の担当者がCIOの役割を担う必要性もますます高まるだろう。これは大企業だけでなく、従業員が1000人しかいない企業でも同じだ」とル・クレア氏は言う。
実際、Forrester Researchのレポートではこのトレンドが強調されている。レポートは、CIOが以前にも増してイノベーションに投資し、ITアーキテクチャを管理して社内の全テクノロジーに関する戦略的ニーズを調整することを求められるようになるという。そして、これら全てに1人で対処できる担当者はいないとも指摘する。
スキル格差を減らす動的チーム
複数のCIOが率いるIT部門では、人材調達の方法がより流動的になるとル・クレア氏は予測する。IT部門では引き続き部内にチームを抱えることになる。だがチームのメンバーは戦略間や部門間をこれまでよりも頻繁に移動するようになる。部外のITチームメンバーも増え、CIOは目まぐるしく変化するチームを管理することが必要になる。
「アメーバのような適応性を備えた組織を用意して、人的資産を利用し、必要に応じてスキルを活用するという全体的な考え方はCIOにとって大きな変化になる」とル・クレア氏は語る。
Forrester Researchレポートの予測では、こうした組織の変化は、CIOを絶えず悩ませ続けてきたスキルの格差を埋めやすくするという。同レポートでは次のように述べられている。「IT部門全体がタスクに対して動的になり、幅広いソースから能力を集めるようになる。そうしたソースには、従来の従業員やロボットに加えて、成長を続けているギグエコノミー(単発の仕事で成り立つ社会構造)のメンバーによるサービスとしての専門技術なども含まれる」
4段階の成長曲線
人材育成を手掛けるOuellette & Associates Consultingでは以前から、4段階の成長曲線の一部としてIT部門の主導的役割の変化を話し合ってきた。最も低いレベルがサプライヤーだ。IT部門はそこから、ソリューションパートナー、戦略パートナーへと移行し、最終的にはイノベーションの予測者になる必要がある。そこに到達したIT部門が、状況を一変させる価値をもたらすことができる。
「あらゆる企業がテクノロジー企業になっている。そんな中では、席を獲得するという考えは過去の話だ。これからのCIOはそうした席そのものをセッティングすることになる。イノベーションの予測者として事を成し遂げることが必要だ」。Ouellette & AssociatesでCEOを務めるダン・ロバート氏はこう語る。
ロバート氏によると、さまざまな専門業界の企業に属する多くのCIOが既にこのような方法で取り組んでいるという。既に曲がり角の先に目を向け、業界の行く末を予測している。「こうしたCIOは、高い知名度と市場シェアをもたらす今までなかった顧客体験を取りまとめることによって、新たなイノベーションや業界の創造的破壊を後押しする。また新しい創造的なデータ活用方法を見つけることで、利益率の高い新規収入をもたらす製品やサービスの売り上げを伸ばしている」(同氏)
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