周波数と価格は根深い問題か
「『5G』の“サブ6”と“ミリ波”はどちらが必要なのか」問題 真剣な分け目に
「5G」の世界的な普及は一筋縄ではいかない。ABI Researchの調査が、周波数帯や価格が各国の5G市場に影響を与える可能性を示した。
「5G」(第5世代移動通信システム)の普及を妨げる可能性のある問題が、調査会社ABI Researchが2021年11月に発表した調査レポート「Emerging Markets Broadband Objectives: Spectrum Requirements」で明らかになった。利用する周波数帯やエンドユーザー向けの価格などが5Gの使用に影響を与える。
6GHz帯以下の「サブ6」、26GHz帯以上など高周波数帯の「ミリ波」の2つに5Gの電波は大きく分類される。ABI Researchのレポートは、新興国市場の5G基地局のほとんどはサブ6になると予測している。サブ6は広いカバレッジ(通信可能エリア)を提供できるし、新興国市場のデータ伝送容量の要求に十分応えられるためだ。一方のミリ波について、ABI Researchは「サブ6よりも広い帯域幅を確保できる可能性が高く、非常に高いデータ伝送容量を実現できる」と説明している。
「サブ6」と「ミリ波」はどちらが必要か? 分岐点に差し掛かる5G
ABI Researchは「ミリ波は不利になる」と指摘する。電波の伝搬特性が悪いことから電波が遠くまで届きにくい、遮蔽(しゃへい)物の後ろまで電波が回り込みにくいなどの問題が伴うからだ。十分に電波を届けようとすればサブ6よりも基地局の設置にコストがかかる可能性がある。
ミリ波は主に先進国市場の都市や郊外の商店街で使われる見込みだ。新興国市場の商業地区でも使用される可能性がある。ただしABI Researchのリサーチアナリスト、ディーン・タン氏は「実のところ、新興国市場の通信事業者が必要としているのはサブ6のカバレッジとデータ伝送容量だ」と指摘する。サブ6は新興国市場の需要に十分なデータ伝送容量を持ち、電波がより遠くまで届き、雨などの悪天候でも電波が減衰しない特性があることがその理由だ。
周波数帯が1GHz以下のローバンド、1GHz~6GHzのミッドバンド、ミリ波の使用見通しについてABI Researchは調査した。調査対象にした新興国32カ国のうち、2023年までに半数の国が1GHz以下のローバンドを使用し、約87%がミッドバンドを使用する見通しであることが分かった。これに対し、2023年までに26GHz帯を割り当てる国は34%、28GHz帯を割り当てる国は12%にとどまった。
5Gの利用が広がるためには、どの国においてもエンドユーザーが自らの可処分所得に適した価格の端末を入手可能になることが基本になる。新興国市場の場合、ABI Researchは「スマートフォンの販売価格が100ドル程度」であることが、5G市場が広がる条件になるとみている。新興国市場ではミリ波が使える端末を購入できるエンドユーザーもいると考えられるが、「端末メーカーは製造コストを抑えるためにサブ6用の端末に注力する必要がある」と同社は指摘する。同社のレポートによれば、2026年には新興国市場におけるサブ6用の5G端末の出荷台数は6億台に迫る。2020年からの年平均成長率(CAGR)は22.7%になる見通しだ。
「通信事業者にとっては、利用する周波数帯を世界的に統一することが重要だ」と、ABI ResearchのAPAC(アジア太平洋地域)担当バイスプレジデント、ジェイク・ソーンダズ氏は説明する。それによって通信事業者は、月額10ドルを切ったARPU(エンドユーザー当たりの平均売上高)を維持することができるという。例えばソーンダズ氏によれば、ナイジェリアのAirtel Networksの月間のARPUは約3.6ドル、インドのReliance Jio Infocomm(Jio)の場合は1.93ドルだ。こうした水準を維持するために、新興国市場の通信事業者は、現地のニーズと要件に合わせて最適な周波数帯を活用する戦略を見いだす必要があると同氏は言う。
サブ6はIoT(モノのインターネット)や、通信事業者の固定通信網とエンドユーザー宅を無線で接続する「固定無線アクセス」(FWA:Fixed Wireless Access)においても重要な周波数帯だとABI Researchは説明する。ただし消費者が価格に敏感な新興国市場では、FWAの大部分は5Gではなく、サブ6を使用する「LTE」(Long Term Evolution)になる可能性が高い。特に農村部や、固定通信網の敷設が困難な地域でその傾向が強くなるという。
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