人材採用に潜むリスク【前編】
「雇用した専門家が素人だった件」が発生する事情、虚偽を見抜く方法
SAP製品の経験者を採用したら実は素人だったという。人材市場の変化がこうした悲劇を助長している。オンライン面接が増える中、応募者の虚偽を見抜くにはどうすればいいのか。
ここ2年、IT分野の職歴を偽る応募者が増えており、採用に掛かる負荷も増大している。だがそれだけではない。内部関係者に起因するセキュリティ侵害につながる恐れもある。
応募者には、経歴を誇張したいという誘惑が付きまとう。誇張し過ぎて、資格を故意に偽る応募者も少数だが存在する。悪意からこうしたことをする応募者はめったにいないとしても、いれば問題を引き起こす。
Digital Pathwaysのコリン・タンカード氏(マネージングディレクター)は言う。「友人が『SAP製品の経験がある』という人材を何人か採用した。同社は創業間もなかったため、商談を勝ち取るためにこうした専門家を必死で引き入れようとしていた。こうして採用した人材をオランダに派遣してSAP製品のインストールを試みて、初めて彼らが何も知らないことが分かった」
応募者の虚偽を見抜けない企業のつらい事情
人材の面接と採用には時間も人員も必要だ。応募者に偽りがあれば同じことをもう一度全て繰り返さなければならない。Peterson Technology Partnersのニック・シャー氏(創設者、プレジデント)は言う。「1人の応募者の面接には約23時間半かかる。10人面接すれば230時間を超える。このマンパワーは大きい。その人材が6カ月半勤務し、その時点で未経験者だったことが判明したら、法外な賃金を支払っていたことになる」
下心を持って応募する例もある。この応募者の目標はキャリアパスをショートカットすることではなく、機密情報にアクセスすることだ。この種の産業スパイはめったにいないが、それでも脅威ではある。
ユーザー企業のデイブ・リア氏は言う。「重要なインフラを扱う企業なら、全国規模で大混乱を引き起こすかもしれない。財務情報や個人情報を扱う企業なら、機密情報を失うリスクがある。どちらのシナリオも制裁や罰則につながったり、企業の評判を落としたりする恐れがある。その結果、事業継続に影響が及ぶかもしれない」
コンピューティングの急速な進化はIT分野の人材市場における競争の激化を促し、テレワークは地域という呪縛から採用活動を解放した。
「コロナ禍の前でも、人材の確保は難しかった。コロナ禍中は少し落ち着いたが、3カ月後には再び人材確保が極めて難しい状況に戻った。コロナ禍によって異なる地域で人材を獲得する余地が広がった。それが人材の需要を高騰させている」(シャー氏)
対面面接とリモート面接
ロックダウン中にテレワークに移行したのを受け、面接も「Microsoft Teams」や「Zoom」などを使ってオンラインで行われるようになった。
リモート面接によって、応募者が故意に偽る機会がもたらされた。第三者がイヤフォンを使って面接に答えるケースや、面接に合格した人物と実際に採用された人物が異なるケースもある。
応募者が偽るリスクを低減するための手順が幾つかある。応募者と対面で面接すれば、外部的な手段を用いて自身を偽る機会が減るため非常に効果がある。「応募者と対面で面接すると、応募者が発する言葉よりもボディランゲージによって多くのことが伝わる可能性がある。防御的な姿勢を取ったり質問に曖昧に答えたりするのは、真実を隠そうとしているか、単に神経質な人がフォーマルな場を苦手とすることを示す可能性がある」とリア氏は述べる。
テレワークやハイブリッドな働き方が広がる中で、常に対面での面接ができるとは限らない。オンラインで面接する場合は応募者がはっきりと見えるようにし、ヘッドフォンを付けない方法で行う必要がある。「応募者はPCの前に座り、PCに直接話し掛けなければならない。応募者の口の動きが見えるように部屋の照明を明るくしてもらう。応募者が技術的な問題を抱えていて画面の共有や動画撮影ができない場合は、全てが整うまでスケジュールを延期する。それができないなら、面接をそれ以上進めないことだ」(シャー氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー