オープンソースが水をきれいにした?【前編】
GISデータで飲料水を届ける インド農村部「デジタル革命」の裏側
インドのアーンドラ・プラデーシュ州政府は、村落への給水パイプラインに関する情報をデジタル化し、農村部に清潔な飲料水を供給するのに役立つ地理情報システム(GIS)を構築した。
農村地域に安全な飲料水を供給することは、世界中の政府の課題だ。農村部に人口が集中するインドでは特に大きな課題になる。インド政府は、安全な飲料水の供給を農村部の100%に普及させることを目標に掲げる。
だがこの目標の実現は容易ではなく、インド農村部の大半は、人間が飲むには安全ではない、雨ざらしの飲料水に頼っている。水質の良い飲料水の貯蔵と維持に関しては、都市部と農村部で大きな格差がある。この状況は、安全な飲料水の需要が供給を上回り、水不足が発生する「水ストレス」につながる恐れがある。こうした中で、インドの州政府が進めているのがデジタル化の取り組みだ。
プロジェクト成功の鍵になったのは「GISデータ」
インドのアーンドラ・プラデーシュ州は、給水と衛生面での持続可能な公共サービスを実現するために、村落への給水パイプラインに関する情報をデジタル化する決断をした。そのために必要だったのは、位置に関するデータを統合的に分析可能にする「地理情報システム」(GIS:Geographic Information System)を実装するプロジェクトを成功させることだ。
アーンドラ・プラデーシュ宇宙アプリケーションセンター(APSAC:Andhra Pradesh Space Applications Centre)は、水資源局職員の協力を得て、水資源に関するGISデータ(地理情報や空間情報とそれらにひも付く属性情報)を収集し、GISに集積した。エンジニアは収集したデータを使って、給水パイプラインの計画や運用、維持管理、最適化の他、情報の分析など一連の工程をまとめて管理可能になった。
APSACはアーンドラ・プラデーシュ州全体で14万キロに及ぶ給水パイプラインに関するデータベースを作成した。給水パイプラインの構成要素全てに地理情報を示すタグを付け、その運用と保守を目的とするWebサービスを用意した。
給水パイプラインのGISデータは、インド政府が運営するインフラ整備に関するさまざまな情報をまとめたポータルサイト「GatiShakti Sanchar Portal」にアップロードされる。そのデータは将来、国家レベルでの水インフラの計画や管理、開発に活用される。
このプロジェクトは、2022年9月~2023年4月の期間で進められた。主にアーンドラ・プラデーシュ州政府が出資した。村落向けの給水パイプラインの地図作成は、GIS技術プロパイダーIndtrack Technologyの協力を得て、APSACが担当した。開発に使用した主なプログラミング言語やソフトウェア開発ツールは「Java」と「Node.js」で、一部にはオープンソースのソフトウェアやデータベースを使っている。
中編は、アーンドラ・プラデーシュ州とAPSACが、給水パイプラインに関するデジタル化の過程でどのような工夫をし、工期とコストを削減したのかを解説する。
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