パススルーと仮想GPU【第1回】
「GPU」を「仮想マシン」で使う その理由と割り当て方法
企業のインフラでは、従来使われてきたCPUに加えて「GPU」の役割が重要になりつつある。同じくインフラにおいて重要な仮想マシン(VM)でGPUを使う理由とは。具体的な方法と併せて解説する。
仮想マシン(VM)は、アプリケーションを実行するインフラのリソース利用を効率的にする仕組みだ。インフラ間での移動ができる移植性を備えてもいる。VMは企業のシステムでは欠かせない存在となっている。
一方でインフラでは、GPU(グラフィックス処理装置)の役割が重要になりつつある。CPU(中央演算装置)は、真偽を判断する基本的な演算処理である「論理演算」には適しているが、小数点を含む数を扱う場合に必要になる「浮動小数点演算」のような複雑な演算処理をするには能力が不十分だった。
「GPU」を「仮想マシン」(VM)で使う
併せて読みたいお薦め記事
「GPU」と「VM」の話題をより広く
GPUはCPUでできることの限界を超えて、より複雑な演算処理や高度なグラフィックス処理の実行を可能にしている。そこで、GPUをVMでどう使うかが以前に増して大きな関心事になってきた。
VMにGPUを追加することで、リアルタイムのデータ可視化や仮想デスクトップの画像処理など、要求が厳しくなりがちな演算処理をオンプレミスやクラウドサービスの仮想化インフラで効率的に実行できるようになる。
ただし、GPUがあればそうしたメリットを自動的に享受できるわけではない。VMでGPUサポート機能を使用するには、サーバのリソースを仮想化するソフトウェアである「ハイパーバイザー」で、GPUを使用するための設定をする必要がある。基本的にハイパーバイザーでは、「パススルー」と「仮想GPU」(vGPU)の2つのモードでGPUを利用できる。
パススルーモードでは、VMはGPU全体のリソースの利用と制御ができるようになる。仮想GPUモードでは、GPUのリソースを分割することで複数のVMがGPUのリソースを共有できるようになる。
GPUのパススルーとは何か?
本稿ではまずパススルーモードについて説明しておこう。パススルーモードでは、ハイパーバイザーは1つのVMに1つのGPUを割り当てる。VMは、グラフィック情報を一時保存する「GPUメモリ」を含めて、GPUの演算リソースを全て利用できるようになる。
こうしたパススルーの仕組みは、「vDGA」(Virtual Dedicated Graphics AccelerationVirtual Dedicated Graphics Acceleration)と呼ばれることがある。これはGPUを直接割り当てることを意味した用語だ。Virtualという単語が付いているが、他のVMがそのGPUにアクセスしたり、利用したりすることはできない。
パススルー機能は、コア(演算処理を担う個々の部品)の単位ではなくコアを搭載するチップの単位で動作する。GPU製品によって違いはあるが、チップには多数のコアが搭載されている。パススルーモードではそのコアの全てを1つのVMに割り当てる。逆に言えば、一部のコアを異なるVMに割り当てることはできない。
ただし最近のグラフィックボード(ビデオカード)は複数のチップを搭載していることが少なくない。そうなると個々のチップを異なるVMに割り当てることはできる。例えばNVIDIAのグラフィックボード「NVIDIA Tesla M6」(NVIDIA M6)には1枚のチップがあり、「NVIDIA Tesla M60」(NVIDIA M60)には2枚のチップがあり、「NVIDIA Tesla M10」(NVIDIA M10)には4枚のチップがある。
NVIDIA M10は、 NVIDIAが開発したコアの一つ「CUDAコア」(CUDA:Compute Unified Device Architecture)を2560個搭載している。企業においては、複数のVMでGPUを利用できるようにするために、複数のチップを載せたグラフィックボードを導入することがあるだろう。
パススルーモードは、演算処理の負荷が高くなるアプリケーションや、グラフィックスを多用するアプリケーションを実行するVMに適している。複数のユーザーがVMを共有して利用する場合に、パススルーによる演算処理のパフォーマンスが発揮されると考えられる。
ハイパーバイザーとしてはMicrosoftの「Hyper-V」、Cloud Software Group(旧Citrix Systems)の「XenServer」、2023年11月に旧VMwareを買収したBroadcomの「VMware ESXi」でパススルーモードが利用できる。
次回以降は、仮想GPUの基本や具体的な設定手順を紹介する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
5
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
6
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
7
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
8
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
9
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
10
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー