米国特許商標庁から学ぶデジタル変革【前編】
「脱メインフレーム」で“40年の歴史”を終わらせる 米特許機関の決断
米国特許商標庁(USPTO)が2018年に着手したデジタル変革は、システムの不具合が発端だった。さまざまなハードルを乗り越え、USPTOが脱メインフレームを成功させた方法とは。
米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office:USPTO)は19世紀の初頭から220年以上にわたり、特許を扱う機関としてさまざまなイノベーション(技術革新)に触れてきた。USPTOが2018年に直面したのは、庁内システムの不具合による一時のサービス停止だ。それを機に、同機関はシステム刷新を決断した。
大規模な作業になった脱メインフレーム
2018年8月にシステムの不具合が発生し、約5日間、USPTOの特許出願データベース「Patent Application Locating and Monitoring」(PALM)が使えなくなった。PALMは特許の出願や検索、特許料の支払いなどに用いられる、USPTOの中核システムの一つだ。サービス停止中、利用者は紙ベースで手続きをしなければならず、大きな手間が掛かったという。USPTOはこの件を機に、システムを一新することを決めた。
システム刷新の土台づくりとしてUSPTOは、CIO(最高情報責任者)のジェイミー・ホルコム氏を採用。ホルコム氏はCTO(最高技術責任者)のスティーブン・ミチェフ氏をはじめ、IT部門の幹部を増やして経営レベルでデジタル変革(DX)に本腰を入れてきた。
ホルコム氏によると、デジタル変革の取り組みの成果は徐々に出てきた。「職員のIT利用が本格的に変わるまで、約2年の時間を要した」と同氏は述べる。職員はデジタル変革によって仕事の効率が上がったことをモチベーションにして、IT利用の幅を広げることに積極的な姿勢を示しているという。
USPTOのシステム刷新における柱の一つは、データベースをメインフレームのアプリケーションから切り離すことだった。USPTOは約40年間、メインフレームを基盤とした特許管理システム「Trademark Register Application Monitoring」(TRAM)を使っていた。TRAMはプログラミング言語「COBOL」よりも前に開発された「ALGOL」(ALGOrithmic Language)で構築されていた。
ALGOLの知識を持つUSPTOの職員3人が開発チームの他のメンバーとタッグを組み、TRAMをOracleのデータベースと互換性があるシステムに置き換えた。USPTOのCIO(最高情報責任者)ジェイミー・ホルコム氏によると、TRAMには800個以上のサービスが含まれており、移行は大規模な作業になった。
それだけではない。「従来のTRAMがCRM(顧客関係管理)システムと同期していたので、データの完全性を保つためにはCRMシステムにも変更を加えなければならなかった」とホルコム氏は振り返る。2023年9月、CRMシステムの改修が完了したという。
その後、USPTOのIT部門は新しいシステムを運用するために、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」を用いて、コンテナの利用によって自動化に取り組む方針を決めた。現在、構成管理ツール「Puppet」やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツール「Jenkins」を採用し、システム運用の自動化を始めているという。
後編は、組織改革を含めたUSPTOの取り組みを紹介する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
5
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
6
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
-
9
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
10
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー