生成AIで変化する開発【第2回】
なぜ開発者は「ソースコード自動生成」を素直に喜べないのか?
開発分野における生成AI導入が広がっている。生成AIツールを使うことで開発が効率化することが期待できる一方で、開発者がそれを素直に喜べない事情もある。どういうことなのか。
開発におけるAI(人工知能)技術の活用が進んでいる。AIベンダーOpenAIのAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」や、MicrosoftのAIアシスタント「Microsoft Copilot」などのAIツールは、開発の計画からソースコードの作成までを支援する。開発プロセスにAI技術を組み込むことで開発の効率が向上することが期待できるが、開発者がそれを素直に喜べない事情もある。
「ソースコード自動生成」ができても正直には喜べない“あの理由”
併せて読みたいお薦め記事
連載:生成AIで変化する開発
開発者におすすめの記事
大規模言語モデル(LLM)をベースにした生成AIツールは、技術的な質問に対しても回答を返すことができる。例えばChatGPTは、プログラミング言語「Java」や「Python」を用いてAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスに接続する方法を説明できる。
他にも、AI技術を開発プラットフォームに組み込むことで、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)呼び出しやオブジェクト(データとメソッドをまとめたもの)間のデータ移動に必要なソースコードを自動生成させることができる。このようにAI技術で自動化を進めることで、開発者はより創造的な業務に専念できるだけでなく、DevOps(開発と運用の融合)チームの負担軽減にも効果がある。
一方で忘れてはならないのが「AIモデルは完璧ではない」ということだ。人間が誤ったソースコードを書いてしまうことがあるのと同様に、AIモデルも不適切なコードを生成するリスクがある。そのためソースコードの作成者がAIモデルであれ人間であれ、同様のセキュリティポリシーやガバナンスを適用する必要がある。
別の言い方をするなら、ユーザーに十分な技術知識がなかったり、出力内容をユーザーが確認できなかったりする場合は、AIモデルが生成したソースコードを使わない方がよい。開発プラットフォームベンダーAirplaneの共同創設者兼CEOラヴィ・パルク氏は、「90%の確率で適切なソースコードを生成できるとしても、1回でもバグが持ち込まれると大変な事態になる」と警告する。
以下に、生成AIが出力するソースコードの具体的なリスクを3つ紹介する。
セキュリティリスク
AIモデルが生成したソースコードには脆弱(ぜいじゃく)性や構成ミスの懸念が含まれるが、ユーザーはしばしばそのことを忘れる傾向にある。
性能面のリスク
LLMが生成できるソースコードの品質や規模には限界があり、必ずしも希望通りのソースコードを生成できるわけではない。そのソースコードが動いたとしても、簡潔性や効率性で手書きのソースコードに劣っている場合がある。
法的リスク
著作権や知的財産にまつわるリスクもある。Tabnineのソースコード補完ツール「Tabnine」は、使用許可が下りているデータのみをAIモデルの学習に使っているが、こうした措置は全てのAIモデルやLLMで実施されているわけではない。そのためAIモデルの学習や改良に使われたデータについて、確認が欠かせない。
例えば、ChatGPTの基盤となるモデル「GPT」は、書籍や記事など、インターネットからかき集めた大量のコーパス(言語情報)でトレーニングされている。その中に独占所有権の対象となるデータが含まれていた場合、法的侵害の指摘を受ける可能性がある。
通常、個人や企業同士の特許紛争は法的手段によって解決される。一方で、GitHub CopilotやChatGPTなどのAIツールが生成したソースコードによって生じる紛争の解決プロセスは、明確にはなっていない。
次回は、開発向けAIツールを選ぶ際に、重視すべき条件を解説する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
3
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
4
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
5
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
6
見落としが多発、AI普及&データ急増に伴うネットワーク課題の意外な原因とは?
-
7
【専門家に聞く】シャドーAIや過剰共有のリスクを防ぎ、安全に生成AIを活用するポイントとは?
-
8
【コスト分析】事例が示す中堅・中小向けERPの最適コスト構造
-
9
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー