「生成AIでアプリ開発」がもたらす、効率化どころじゃない“根本的な変化”とはLLMで変わる開発【前編】

大規模言語モデル(LLM)などのAI技術を用いたアプリケーション開発は、従来の開発と何が違うのか。考慮すべきポイントと併せて解説する。

2024年03月22日 07時30分 公開

 OpenAIのAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」や、MicrosoftのAIアシスタント「Microsoft Copilot」をはじめとする各種AIツールの登場により、テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)や、その基となる大規模言語モデル(LLM)の可能性が広く認知されることとなった。

 今やLLMの用途は日常業務の補助にとどまらず、革新的な製品やサービスの開発と、ビジネスの差別化にも役立てられている。専門家によると、AI技術を用いた開発には、従来のアプリケーション開発とは根本的に異なる点があるという。具体的に何が違うのか。

「AIによる開発」と従来の開発の“根本的な違い”は?

会員登録(無料)が必要です

 従来の開発では、既知のシステムやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用する際、入力内容とそれに対応する結果の文書化が可能だった。「常にとは限らないが、システムが出力する内容は決定的で予測可能だった」。こう話すのは、ソフトウェアベンダーTricentisでAI担当のバイスプレジデントを務めるデビッド・コルウェル氏だ。

 その仕組みを、生成AIは根本から変えた。LLMは膨大なデータで訓練されるが、だからといって出力する内容が正しいとは限らない。「これはバグではなく、むしろ生成AIの本質的な特性だ。将来的にLLMが改善されることを願うしかない」とコルウェル氏は話す。

 ただしコルウェル氏は、生成AIによる出力内容が常に正しいわけではない点を問題視すべきではないと捉えている。その代わりに、AI技術を理解することに時間をかけるべき、いうのが同氏の助言だ。

「AI開発」におけるツールの有効性

 LLMの導入に当たってはフレームワーク(プログラム開発に必要な機能の集合体)を活用できる。例えば、開発者はAI開発向けのオープンソースフレームワーク「LangChain」を使うことで、迅速にプロトタイピング(試作品を用いた事前検証)や実験を実施できるようになる。

 ローコード(最低限のソースコードを記述)開発ツールの活用も有効だ。ローコード開発ツールは、機械学習の専門知識が不足しているユーザーでも使いやすいインタフェースになっていることが一般的だ。

 ただしローコード開発ツールを使う際の注意点もある。「ローコード開発ツールによってLLMを搭載したアプリケーション開発は容易になるが、専門的なタスクを組んだり複雑なLLMを扱ったりする際には限界がある」。モバイルデバイスベンダーZebra TechnologiesでAI研究グローバルディレクターを務めるアンドレア・ミラビレ氏はそう指摘する。

 LLMの性能を強化するためには、ハイパーパラメーター(機械学習モデルのトレーニングに使う変数)の調整、学習データの管理の実施が欠かせない。開発者がLLMの挙動を適切に判断するには、機械学習アルゴリズムを正しく理解する必要がある。


 中編は、生成AIの導入に乗り出す前に確認すべきポイントを解説する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

約80%の企業でAIが定着していない? その理由と成功させるためのポイントとは

生成AIを活用して業務や顧客体験の再構築を進める動きが活性化しているが、その多くが、PoCやラボ環境の段階にとどまっている。なぜなら、生成AIの可能性を最大限に引き出すための、インフラのパフォーマンスが不十分だからだ。

市場調査・トレンド グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

ソフトウェア開発ライフサイクルにおける、生成AI活用のポイントを考察する

昨今のソフトウェア開発では、AIコーディングアシスタントの活用が主流になっている。しかし、最適なコーディングアシストツールは、開発者や企業によって異なるという。導入の際は、どのようなポイントに注意すればよいのか。

製品資料 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

データベースをモダナイズし、生成AIを最大限に活用する方法とは?

生成AIの活用にはデータベースが重要となるが、従来のデータベースは最新テクノロジーに対応できないなどの課題がある。本資料では、データベースをモダナイズし、生成AIを用いてビジネスイノベーションを生み出すための方法を探る。

製品資料 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

検索体験と結果の質をどう高める? ユーザーに喜ばれる検索体験を実現する方法

ビジネスにおいて、検索体験およびその結果の質の向上が重要なテーマとなっている。顧客はもちろん、自社の従業員に対しても、実用的な答えをより迅速に、手間なく入手できる環境の整備が求められている。

事例 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

検索の効率化からデータ活用まで、生成AIの業務組み込み事例5選

登場以来ビジネスへの活用方法が模索されてきた生成AI。近年では業務組み込みにおける具体的な成功例が数多く報告されている。本資料では、5件の生成AI活用事例を交えて、業務に組み込む上での具体的なアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。