2024年、生成AIはどのような進化を遂げるのか。新しいモデルの登場や新規ベンダーの参入など、生成AI市場の動向をアナリストの予測を基に解説する。
2023年は、AI(人工知能)ベンダーOpenAIの「ChatGPT」をはじめとするAIチャットbotに注目が集まった。2024年の生成AI市場においては、技術進化や新しいAIモデルの登場、新規参入企業の増加などが期待される。その具体的な内容とは。本稿は2024年の生成AI市場で予測される5つのトレンドのうち、3つ目から5つ目として、LLMの進化や新しいAIモデルの登場などを紹介する。
生成AIはパーソナルアシスタントとして機能する段階には至っていない――。音声認識ソフトウェアを手掛けるAIベンダーのSpeechmaticsで最高調達責任者を務めるトレバー・バック氏は、2023年12月に開催されたイベント「The AI Summit New York」のパネルディスカッションでこう語った。
現状、生成AIの基となる大規模言語モデル(LLM)をユーザーが望む通りに機能させるには、プロンプト(情報生成のための質問や指示)がうまく伝わるように改善するなど、ユーザーによる工夫が不可欠だ。ただし調査会社Gartnerでアナリストを務めるアルン・チャンドラセカラン氏によると、今後はLLMが進化するにつれて、プロンプトの重要性が下がっていくという。
つまりLLMが、プロンプトの意図をより良く理解できるようになるということだ。チャンドラセカラン氏は、タスクを与えると自律的に手順を考えて実行できる「自律型AIエージェント」が登場する可能性について言及する。
例えば、企業がWebサイト作成に当たり、ロゴマークを作りたい場合を考えてみよう。これまでは生成AIに対し、特定の条件を細かく伝えてロゴマークを生成してもらう必要があった。自律型AIエージェントは、ロゴマークの用途を踏まえて出力内容を調整するだけでなく、Webサイト作成のサポートや、ドメイン名の使用可否の確認まで先回りしてできるようになる可能性がある。現状より少ないプロンプトで、システムが一連の手順を提案してくれる。
数値や画像、テキスト、音声など複数種類のデータを組み合わせて、あるいは関連付けて処理できる「マルチモーダルAI」が市場に出てきている。
例えば、OpenAIの画像生成モデル「Dall-E」はマルチモーダルAIの一つで、テキストから画像を生成できる。他にも、Googleが2023年12月に発表した「Gemini」もマルチモーダルAIだ。Geminiは画像かテキストどちらかのみを出力するシングルタスク型のAIモデルと異なり、質問に対して画像とテキストの両方を生成できる。テキストや画像、動画など、複数種類のデータソースから学習することも可能だ。
調査会社Gartnerでアナリストを務めるアルン・チャンドラセカラン氏は、マルチモーダルAIはユースケース(想定される活用例)の拡大に役立つと話す。例えばヘルスケア領域において、テキストに加えて音声や画像を組み合わせれば、診断の正確性を強化できる。「ユースケースの開拓において、マルチモーダルAIのポテンシャルは計り知れない」(チャンドラセカラン氏)
マルチモーダルAIの他に、誰でも自由に利用や改良ができる「オープンソースAI」の利用も拡大するとゲッツ氏は予測する。「AIモデル市場は弱肉強食の世界になる。そこでは強いモデルが弱いモデルを駆逐するのだ」(ゲッツ氏)
2023年、数多のスタートアップ企業が続々と市場に参入した。この流れは2024年にも加速し、その結果、より高度なAIツールが登場する可能性がある。こう話すのは、調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるローワン・カラン氏だ。
カラン氏によると、スタートアップ企業はChatGPTのようなAIチャットbotそのものを開発するというよりは、既存のアプリケーションに既存のAIモデルを活用した機能を組み込む傾向にあるという。開発にはオープンソースツールやプロプライエタリツール(ソースコード非公開のツール)を使用し、以下のようなAIモデルを活用してサービスを制作するとみられる。
2024年は、企業向け生成AIがどのようなエコシステム(生態系)を形作るのかに注目する1年になりそうだ。「2023年は、生成AIに順応する最初の年だった。2024年以降、具体的にどのようなサービスが登場するかはっきりするだろう」(カラン氏)
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