生成AIブームは2024年も続き、企業におけるAI活用はますます進むと予測される。注視したいのが「BYOD」の動きだ。2024年の生成AI市場に起こる変化を解説する。
2022年11月、AI(人工知能)技術ベンダーOpenAIはAIチャットbot「ChatGPT」を発表した。提供開始からわずか数日で、100万人のユーザーを獲得するとは誰が予測できただろう。2023年1月にその数は1億人に達している。
テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)の認知度が急速に広がった2023年に続き、2024年は生成AIの成長軌道がさらに上向きになるだろう。生成AIはどのような進化を遂げるのか。本稿では予測される5つのシナリオのうち、1つ目を紹介する。
生成AIブームの初期には、データ漏えいといったリスクを警戒して、ChatGPTの社内利用を制限する企業が目立った。その中にはSamsung ElectronicsやJPMorgan Chase、Appleも含まれる。「企業の慎重な姿勢は変わらないが、生成AIの業務利用が拡大するのは間違いない」。そう語るのは、調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるミッシェル・ゲッツ氏だ。
「BYOAI」(Bring Your Own AI)が普及する可能性についてもゲッツ氏は言及する。BYOAIは、職場で承認されているか否かにかかわらず、従業員が自身で選んだAIサービスを利用することを指す。BYOAIが機密情報の流出や法的侵害につながる恐れがあるため、企業は適切なリスク対策を講じる必要がある。
石油大手のBPは、AI技術を積極的に取り入れる企業の一つだ。同社のインキュベーションおよびエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるジャスティン・ルイス氏は、2023年12月に開催されたカンファレンス「The AI Summit New York」のパネルディスカッションで、「AIを全員の手に」という考えを強調した。
「AIを全員の手に」という考えは、全従業員がAIツールを使うことを指すのではない。技術経験の有無に関係なく、全従業員が自分でAIツールを開発し、公開、共有までできるようにすることを意味する。「生成AIの参入障壁が下がってきているおかげで、この構想は実現に近づいている」とルイス氏は述べる。今までAI技術に触れた経験や開発経験のない「市民開発者」たちが、AIツールを自身で開発して活用できるレベルに到達できれば、イノベーションをより迅速に進められるはずだ、というのが同氏の考えだ。
BPはAI技術を活用して、従業員の生産性を高めたり補ったりする取り組みを進めているという。「最も強く影響が出ている分野では、従業員のパフォーマンスや業務スピードが10倍以上改善した」とルイス氏は話す。その一例が、ソフトウェアエンジニアリングだ。BPには、AI技術を用いたコードレビューサービスを提供するチームが存在し、175人分のエンジニアが作成したコードを1人のエンジニアでレビューできる体制をとっている。「AIには、組織の形成についての考え方を大きく変えるほどのインパクトがある」とルイス氏は話す。
次回は、5つのシナリオのうち2つ目を紹介する。
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適切に生成AIを使いこなすために、情報には「共有範囲」を設定することが重要となるが、管理が不十分だと“過剰共有”の状況が発生する。過剰共有は社内での情報漏えいにつながる可能性もあるため、十分な対策が必要となる。
生成AIの活用には機密情報漏えいなどのリスクがあるため、利用を制限しているケースもある。しかし、完全に利用を制限してしまうと競合に後れを取る可能性がある。そこで重要なのが、セキュリティと利便性を両立できるような環境構築だ。
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