GoogleはマルチモーダルAI「Gemini」で“シェア拡大”となるか?2024年、Googleの生成AI戦略とは【後編】

Googleは2023年末に発表した生成AI「Gemini」を発表。市場シェア拡大につなげる大きなチャンスとアナリストは見る。同社の戦略を解説する。

2024年02月21日 05時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

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 2023年、AIベンダーOpenAIのLLM(大規模言語モデル)「GPT」に世界中の注目が集まり、各ITベンダーによるAI(人工知能)関連サービスの開発が進んだ。2024年も引き続きAI市場の動向に熱い視線が注がれる。

 Googleは2023年12月、汎用(はんよう)的なAIモデル「Gemini」を発表し、同社のアプリケーション群に組み込む姿勢を明らかにした。あるアナリストは「Geminiは、Googleの市場シェア拡大の布石となる」と話す。GoogleがGeminiにかける戦略とは。同社が発表したAI関連のニュースと併せて解説する。

「Gemini」で市場シェア拡大となるか? Googleの戦略とは

 「Googleは『マルチモーダルAI』をAI戦略の鍵として捉えている」。こう話すのは、調査会社Gartnerでアナリストを務めるチラグ・デカテ氏だ。マルチモーダルとは、数値や画像、テキスト、音声など複数種類のデータを組み合わせて、あるいは関連付けて処理できることを意味する。

 Geminiは、画像かテキストどちらかのみを出力するシングルタスク型のAIモデルと異なり、質問に対して画像とテキストの両方を生成できる。テキストや画像、動画など、複数種類のデータソースから学習することも可能だ。GeminiがGoogleの製品群に組み込まれることで、企業は自社ワークフローにマルチモーダルAIを適用することが容易になる。デカテ氏は、「Geminiを企業にとって使いやすい形で提供できれば、Googleは市場におけるシェアを大きく拡大できる可能性がある」と話す。

 Geminiには処理性能や用途に応じた3つのモデルがある。その中でも高性能で複雑なタスクを処理できる最大のモデルが「Gemini Ultra」だ。

 「Gemini Nano」はモバイルデバイス向けの最小モデルだ。Gemini Nanoの中でも低メモリデバイス用の「Nano-1」の学習に使われるパラメーター数は18億個と、Microsoftが2023年12月に発表した小規模言語モデル「Phi-2」の27億個よりも少ない。高メモリデバイス用の「Nano-2」のパラメーター数は32億5000万個だ。

 一方で、AIモデルの性能はパラメーター数が大きいほど高くなるわけではない。Microsoftの主張によると、Phi-2の性能はNano-2や「Mistral」「Llama 2」といったオープンソースのAIモデルを上回るという。

Vertex AIにおけるImagen 2の提供

 Googleは、機械学習モデル構築支援ツール「Vertex AI」における画像生成モデル「Imagen 2」の一般提供を発表した。開発者はImagen 2を使用することで、従来よりも高品質な画像やロゴの生成、多言語テキストレンダリング(テキストの描画)が可能となる。

 Vertex AIの補償制度はImagen 2も適用範囲としている。例えば、著作権侵害の訴訟に関する費用の弁済も補償範囲だ。

Mistral AIとの提携

 2023年12月に3億8500万ユーロを調達したことで知られるフランスのAIスタートアップMistral AIは、LLMの提供や商品化のインフラにGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud」を使用すると発表した。Mistral AIのオープンソースLLMのパラメーター数は70億個。事前構築済みのAIモデルが集約した「Vertex AI Model Garden」で提供が開始されている。

Accentureとの提携

 ITコンサルティング会社のAccentureは、テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)の企業における導入支援の領域でGoogleと提携することを発表した。両社は共同で「Joint Generative AI Center of Excellence」を設立し、生成AIモデルやアプリケーションスケーリングといった分野で企業を支援する計画だ。

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