無線LAN新規格の開発ペースが加速している。ただし一部の機能は十分に活用されないまま、新規格の開発が進んでいる。こうした状況に専門家は危機感を抱いている。
無線LANの次世代規格「IEEE 802.11be」(Wi-Fi 7)に準拠した製品が既に市場に出ている。無線LANの専門家は、既存の無線LAN規格に未解決の問題があるにもかかわらず、無線LAN規格の開発がハイペースで進められていることに不満を抱いている。
「われわれはまだ『IEEE 802.11ax』(Wi-Fi 6)の約束を果たしていないのに、Wi-Fi 7に目を向けている」と、無線LANの専門家向けカンファレンス「Wireless LAN Professionals Conference」(WLPC)の主催者であるキース・パーソンズ氏は語る。Wi-Fi 6にはどのような課題があるのか。無線LANの専門家がWi-Fi 6に抱いている不満とは何なのか。
Wi-Fi 6は、「OFDMA」(直交周波数分割多重接続)を採用した。OFDMAは、チャネル(データ送受信用の周波数帯)を複数に分割し、クライアントデバイスごとに割り当てるものだ。この機能はクライアントデバイスが密集した環境での利用を想定している。だがパーソンズ氏によると、ほとんどのユーザーはクライアントデバイスでOFDMA機能をオフにしている。この機能が正確に動作しないからだ。
では、無線LAN業界が既存の問題を解決しないまま、Wi-Fi 7に早々に移行しようとしているのはなぜなのか。Wi-Fi 7は、2.4GHz帯と5GHz帯に加えて6GHz帯も使えるため、チャネルが増える。理論上は、この機能によって通信速度と接続可能なクライアントデバイス数が増える。無線LANの業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)の年次レポート「WBA Annual Industry Report 2024」によると、回答者の42%が、Wi-Fi 6の拡張版「Wi-Fi 6E」とWi-Fi 7の最も重要な仕組みは「6GHz帯が利用可能なこと」だと考えている。
6GHz帯を利用できることは評価されている一方で、Wi-Fi 7は、Wi-Fi 6Eと同じ課題に直面しそうだ。例えば、6GHz帯を使用するには、さまざまな前提条件が整う必要がある。以下の条件がその一例だ。
こうした注意点は、Wi-Fi 7の普及に水を差す可能性がある。仮に6GHz帯を使える条件が整わないなら、Wi-Fi 6からWi-Fi 7にアップグレードする必要性は限られている。6GHz帯を利用できるメリットの一つは、デバイスが密集する状況でも通信の安定性が改善することだ。しかし、6GHz帯が必要なほどデバイスが密集する状況は限定的だ。
「無線LAN の開発者は、ユーザーが求める経済的な正当性が見いだせないのに、物事を前に進めようとして、ハードウェア開発のためのハードウェア開発に陥っているのではないか」。ITサービス企業EVOTEKでユーザーエンゲージメント戦略ディレクターを務めるショーン・ニール氏はそう指摘する。
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