企業がAI技術を活用する上で、データの取り扱いや説明責任といったプライバシーに関する懸念の解消は重要な課題だ。AI技術の恩恵を最大化し、安全かつ倫理的に活用するために、今すぐできる7つの施策を紹介する。
人工知能(AI)技術のビジネス活用が急速に進む一方、個人情報や企業秘密などの機密情報をAIモデルやAIベンダーがどう扱うのかに対するプライバシーへの懸念が浮上している。企業の社会的信頼にも関わるこうしたリスクに対処し、安全にAI技術を活用するための7つのベストプラクティスを解説する。
プライバシーの懸念に対処し、ビジネスでAIを安全に利用するために、企業は以下の7つのプライバシーに関するベストプラクティスを採用すべきだ。
AI技術を業務で使用する際は、その目的を達成するために必要なデータのみを収集するように徹底する。エンドユーザーの個人データやプロンプト(AIモデルへの指示)が、AIモデルの訓練にどのように使用されるのかについて、エンドユーザーが明確な説明を受け、納得した上で同意(インフォームドコンセント)していることを確認しなければならない。顧客応対にAIツールを導入する場合に、個人を特定できる情報や会話履歴を保存せず、問い合わせ対応に必要な情報のみを取り扱うようにするといった具合だ。
エンドユーザーとAIツール間の全通信を暗号化し、第三者によるデータ盗難や傍受を防ぐ。AIモデル訓練用のデータ、システムのバックアップ、開発環境などに保存されているデータも暗号化し、不正アクセスを阻止する。暗号鍵を安全に管理する専用システムを導入することも有効だ。
個人情報、健康情報、財務情報などの機密情報を削除またはマスキングして、第三者がエンドユーザーの個人行動を分析(ユーザープロファイリング)することを防ぐには、以下に挙げるプライバシー保護技術を活用できる。
AIモデルの性能を維持しつつリスクを低減する上では、以下のプライバシー保護技術の採用も検討するとよい。
説明可能なAIモデルは、性能と信頼性を維持しながら、エンドユーザーには出力しか見せないというブラックボックス化のリスクを軽減する。そうしたAIモデルを実現する手法の一例である「LIME」(Local Interpretable Model-agnostic Explanations)は、AIモデルへの入力データを少しずつ変化させてその出力結果を分析することで、どの要素がAIモデルの意思決定に影響を与えているのかを可視化する手法だ。
自社が利用しているAIツールが、EU(欧州連合)の「一般データ保護規則」(GDPR)や米カリフォルニア州の「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(CCPA)といったプライバシー関連規制に準拠していることを確認する。定期的な監査、コンプライアンス(法令順守)関連文書を管理し、データ収集および利用に関するエンドユーザーへの説明が重要だ。これらの措置は、規制当局による調査の際に、企業がデューデリジェンス(適正な評価手続き)を果たしたことの証拠になり得る。
AIツールと関連データのアクセス権限を、必要最低限の担当者のみに付与する。エンドユーザーの役割に基づいてアクセス権限を設定する「ロールベースアクセス制御」(RBAC)を導入し、誰がいつ機密データを参照したのかを追跡できるようログを取得、監視する。これによって社内データの不正利用リスクを低減し、問題発生時の責任の所在を明確にする企業の説明責任体制を確立できる。
企業がAI技術を導入、運用するための、各部門や担当者の役割、責任範囲、手順を定義するAIガバナンス体制を策定する。AIモデルのエラーやデータ侵害といった予期しない問題に備えて、問題発生時の報告ルートや対処手順を具体的に定めたインシデント対応計画も盛り込むべきだ。
暗号化基準の徹底や、監査に備えたデータリネージ(データの出自や変更履歴)の維持など、データスチュワードシップ(データの適切な定義や利用を推進する取り組み)を実現するための手順を整備する。AIモデルの判断が倫理的な問題や不公平な結果を招かないよう、具体的な倫理基準を設定することも不可欠だ。問題を早期に発見するためには、AIモデルのバイアスを定期的にチェックしたり、AIモデルの弱点を検証する「敵対的テスト」といったリスク評価手法を取り入れたりすることが有効だ。
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