生成AIはなぜ世間の関心を集めるのか。その理由は、従来型AIとの違いにある。AI市場の動向を、開発分野への影響と併せて解説する。
AI(人工知能)ベンダーOpenAIによるAIチャットbot「ChatGPT」の発表以来、学習データを基にテキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)に熱視線が集まる。その活用範囲の広さから、さまざまな業界への生成AI導入が進んでいる。
システム開発は、特に生成AI活用が期待される分野の一つだ。開発プロセスにAI技術を組み込む動きはChatGPTの登場以前からあった。生成AIはなぜここまで注目を集めるのか。
調査会社Forrester Researchでバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストを務めるマイク・グアルティエーリ氏は、近年のAI技術の特徴として「容易にアクセスできること」を挙げる。従来、AI技術の利用には高度なスキルが求められ、限られた人しか利用できなかった。これとは反対に、生成AIは専門知識を持たない人でも気軽にアクセスし、利用できる。「AIツールを活用することで、開発者の生産性は従来の倍以上になる」(グアルティエーリ氏)
従来のAI技術の大半は、単純なコード補完や自動化の機能を持つのみだった。それが近年では「開発手法そのものを変える存在」に進化しつつある。
例えば、OpenAIが開発した大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」は、コードスニペット(短いソースコードのまとまり)の生成や、技術的な質問にも答えられる。簡単なアプリケーションであれば、ソースコードの一部を作成できる。開発者は統合開発環境(IDE)で適格な提案を受け取れるようになり、プログラマー向けQ&Aサイトでソースコードを探し回る必要がなくなった。
「AI技術そのものが変わったというよりは、使う側の意識が変わったといえる」。こう話すのは、ソフトウェア開発企業Intelliware Developmentでチーフテクノロジストを務めるB.C.ホームズ氏だ。
ホームズ氏は20年以上前に金融業界でAIシステムの開発に携わっていたが、当時は「AI」という用語は一般的でなく、あまり使われていなかったという。セキュリティソフトウェア企業CurtailのCEOフランク・ウエルタ氏も「AI技術自体は以前から存在するもの」という考えだ。同氏によると、近年のセキュリティツールの中には、脅威の監視や攻撃の検出に長年使われてきた「パターンマッチング」(データから文字列といったパターンを特定し、似ているパターンを探す方式)手法を用いているにもかかわらず、「AIを活用している」とうたうものもあるという。
だが、技術自体に目新しさはなくても、AI技術の機能や使用規模はこれまでにない速度で成長を続けている。「今後10年間で、AI市場はさらに変化するだろう」とホームズ氏は見込んでいる。
次回は、AIツールを活用する際、開発者に求められる視点を解説する。
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