生成AIで変わるコーディング【前編】
AIコーディングと「コード補完」「ローコード」「静的解析」の違いとは?
コーディング支援ツールはAI技術を活用することで、どのように進化してきたのか。「コード補完」「ローコード」「静的解析」などとの違いを踏まえて解説する。
人工知能(AI)技術を用いたコーディング支援ツール(以下、AIコーディングツール)の利用が開発現場で広がりつつある。コーディングを支援するツールはAI技術を取り入れることで顕著な進化を遂げているが、実は全く新しい技術というわけではない。
AIコーディングツールは、その前身となったツールから何が進化したのか。以前から使われてきた「インテリジェントなコード補完」「ローコード開発」「静的解析」などと比べてみよう。
AIコーディングと「コード補完」「ローコード」「静的解析」の違い
AIコーディングツールは、AI技術を用いてソースコードを自動生成したり、修正内容を提案したり、エラーを特定したりするものだ。では、AIコーディングツール登場以前の「コーディング支援」とはどのようなものだったのか。
1.インテリジェントなコード補完
インテリジェントなコード補完は、プログラム作成時、書きかけのソースコードを完成させるまで支援する機能だ。簡単な構文ミスやスペルミスの修正もできる。例として、OS「Linux」のシェル(コンピュータに対する命令を解釈するプログラム)である「Bash」に付随するコマンドライン補完機能が挙げられる。
「Ubuntu」といったLinuxディストリビューション(配布用パッケージ)でコマンド操作ツール「端末」(ターミナル)を開き、文字を幾つか入力してタブキーを押すと、入力した文字に基づいたコマンドの候補リストが表示される。
以下は、ターミナルに「bas」という文字を入力した場合の例だ。
chris@chris-Gazelle:~$ bas
base32 base64 basename basenc bash bashbug
chris@chris-Gazelle:~$ bas
ユーザーがコマンドを誤って入力した場合はその誤りを検出し、正しいコマンドの候補を提供する。以下は「bash」と間違えて「bassh」と入力してしまった場合の例だ。
chris@chris-Gazelle:~$ bassh
Command 'bassh' not found, did you mean:
command 'bash' from deb bash (5.1-6ubuntu1)
command 'bssh' from deb avahi-ui-utils (0.8-5ubuntu5)
Try: sudo apt install chris@chris-Gazelle:~$
インテリジェントなコード補完の起源は20世紀後半にさかのぼる。当時のプログラマーは、簡単なスペルチェック機能を用いてソースコードの入力ミスを確認し、ソースコードの精度を高めていた。
一方で、インテリジェントなコード補完は、ソースコードの生成や修正の提案ができるわけではない。その役割はあくまで、入力されたソースコードが事前に設定したルールやデータと合致するかどうかを確認するにとどまる。
2.ローコード開発
ローコード開発ツールを使うと、手動でのコーディングをほとんどせずにアプリケーションを作成できる。ローコード開発ツールとは、最低限のソースコード記述による開発を可能にするツールだ。インテリジェントなコード補完のようにソースコード行ごとの補完と検証をするものではなく、プログラム全体を作成するのがローコード開発ツールの目的だ。非技術者でもソフトウェア開発ができるというメリットがある。
ユーザーは、ローコード開発ツール内で提供されるソースコードモジュールを組み合わせることでアプリケーションを作成できる。既存のモジュールを組み合わせることでしかアプリケーションを構築できないため、一般的な開発ツールと比較して狭い範囲の用途にか使えない。
「SQL」「FOCUS」などの「第4世代言語」(エンドユーザーが自ら開発できるよう設計されたプログラミング言語)の登場後に、ローコード開発ツールが誕生したと言われている。
3.静的解析
静的解析ツールは、ソースコードに潜むセキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性やバグ、その他の不具合を自動的に解析して見つけ出すことができるツールだ。
静的解析ツールはほとんどの場合、ソースコードの完成後に使用される。これは、ソースコードを書く段階から使用されるAIコーディングツールとは対照的と言える。
従来、静的解析はルールベースで解析していたため、AI技術を使うことはほぼなかった。しかし、セキュリティベンダーSnykの「DeepCode AI」など、静的解析と機械学習の概念を組み合わせ、リアルタイムにソースコードを解析できるようにしたツールも登場し始めている。
後編は、主要なAIコーディングツールを紹介する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法 -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 対話型AIエージェント×RAGで社内情報の検索/問い合わせを効率化するには? -
技術文書・技術解説
[株式会社クレスコ] ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
-
3
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
6
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
7
APIキー奪取から3時間でクラウド掌握 Anthropicが暴いた「バイブハッキング」の現実的な防御策
-
8
「AIならすぐできるはず」と言われるエンジニア 他職種とのずれを埋めるには
-
9
AIエージェントが自社を襲う 人間より危険な「非人間ID」の盲点
-
10
AIエージェントはどう作る? まず押さえておきたい重要技術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー