メタバースのこれからを探る【前編】
メタバースが人気にならない原因はやはり“あれ”?
世間の注目を集めてきたメタバースだが、いまだに広く普及しているとは言い難い。その原因はやはり“あれ”なのか。今後どのような展開が待っているのだろうか。
2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が発生したことを契機に、テレワークが急速に普及した。その状況下で、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を使ったものなどさまざまなコラボレーションツールが登場している。
中でも注目を集めてきたのが仮想空間「メタバース」だ。メタバースは従来よりも効果的でインタラクティブ(双方向性があること)なコラボレーションを実現すると期待されているものの、当初の期待ほどには普及していないのが現状だ。その原因とは何なのか。
メタバースが人気にならない“あの原因”
AR/VR技術は、直感的かつイマーシブ(没入感があること)な体験を提供し、物理的に離れた場所でもチームのコラボレーションを可能にする。例えば、現場での作業状況を、AR/VR技術を用いて遠隔地のチームとリアルタイムで共有し、的確な指示や判断を仰ぐことができる。
こうしたAR/VR技術の活用方法に対する期待感は高まっているものの、日常生活やビジネスで広く普及するには、まだ時間がかかると見込まれる。書籍『The Metaverse: And How It Will Revolutionize Everything』(メタバースは万物にいかに革命を起こすか)の著者マシュー・ボール氏は、「土木、工業デザイン、実地訓練といった用途でXR(Extended Reality、ARやXRの総称)技術は既に活用が進んでいる」と話す。一方で、「今のところ、一般の人や企業がAR/VR技術を使いたいと感じるようなキラーアプリケーションはまだ存在しない」とも言及する。
特に課題となるのがハードウェア面の制約だ。ヘッドセットのサイズや重量、バッテリーといった課題が、消費者への普及を阻んでいる。これらの懸念を補うほどのメリットを感じられないためだ。
加えて、ヘッドセット使用時に酔いや目の疲れを感じる、いわゆる「VR酔い」も課題の一つだ。こうした症状は「輻輳調節矛盾」によって引き起こされる。つまり、現実世界では、物体を立体的に捉える目の動き(輻輳)とピント調整(調節)は自然に一致するが、仮想空間ではこれが一致しづらく、違和感や疲労を引き起こす。こうした課題を解消するために、バリフォーカル(可変焦点)レンズなどの新しいディスプレイ技術が開発されているが、実用化にはまだ至っていない。
ヘッドセットの重さやバランスも課題だ。特に前方に重さが偏った設計では、長時間の使用が首や肩に負担をかけ、使用感を損なう。サイズの小型化、演算能力の強化、バッテリー持続時間の向上、発熱の抑制など、多岐にわたる技術的改善が必要だ。使いやすさや快適性だけでなく、コスト面への配慮も求められる。
こうした課題が残る一方で、ヘッドセット技術は着実に進化を遂げており、より効果的で革新的なコラボレーションの実現に向けた貢献が期待されている。その具体的な進化は以下の通り。
- 周囲の環境認識
- ヘッドセット内蔵のカメラを通して、装着中も周囲の環境を把握できるようにする。これにより、使用中の事故や物損リスクを軽減できる。混合現実(MR)環境では、現地とオンライン両方から参加するチームメンバーの顔が見えるため、より自然なやりとりが可能になる。
- トラッキング技術
- 手と目の動きをより高度に追跡する能力によって、仮想オブジェクト(仮想世界における物体などの構成要素)をスムーズに操作できるようになり、共同作業での利便性が向上する。
- 顔の表情やまばたきといった細やかな動きを再現し、メンバーの反応を可視化することで、より直感的かつ効果的なインタラクション(相互のやりとり)が可能となる。
後編は、「空間コンピューティング」について解説する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
5
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
-
6
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー