多様な人材を定着させるには【後編】
キーワードは「EVP」 IT人材にとって“本当に働きやすい会社”を目指すには?
人材の流動が激しいと言われるIT業界で、2025年も労働人口の動きが活発化する見通しだ。従業員の満足度を高め、定着率の向上につなげるための施策にはどのようなものがあるのか。専門家の声を基に紹介する。
IT業界では、慢性的な人手不足や従業員の定着しにくさが課題となっている。一方、IT人材コンサルティング企業BIE Executivesでテクノロジー部門シニアディレクターを務めるマシュー・ウィップ氏は、2025年には労働人口の確保は厳しい状況になると予測する。ウィップ氏によると、2023年から2024年にかけて、労働市場は停滞し、企業は財務的な圧力から人材の獲得を控えていた。そのため転職する人材は限定的だったものの、2024年9月と10月に求人数は増加し、労働市場は改善の兆しを見せている。
労働市場の動向を踏まえると、現状に満足していない従業員は「2025年に新しい転職機会を探すか、少なくともそうした機会に対してより前向きになる可能性がある」とウィップ氏は予測する。労働人口の動きが活発化する可能性がある中、企業はどのような対策を取ればいいのか。
人材流出を防ぐための施策とは
併せて読みたいお薦め記事
連載:多様な人材を定着させるには
「静かな退職」「静かな休暇」とは
慢性的な人手不足や人材の定着に課題を抱えるIT業界において、企業の中には、資格取得の補助制度や充実した福利厚生などを通じて従業員に提供する価値(EVP:Employee Value Proposition)の向上に注力しているところがある。ところが、2024年9月に調査会社Gartnerが公開した調査結果によると、自社がEVPの向上に適切に取り組んでいると考える従業員は調査対象の33%にとどまる。この結果は、従業員1300人に調査を実施した結果に基づく。
「EVPに関して、『これを提供すれば従業員が定着する』という魔法のリストは存在しない」。Gartnerでシニアプリンシパルを務めるケイア・バートン氏はこう話す。効果的なEVPには企業文化や提供する内容の伝え方、その実施方法、従業員の受け止め方が肝要だとバートン氏は説明する。
バートン氏は、有給休暇が20日の企業Aと40日の企業Bを例に挙げる。同氏によると、従業員の満足度が高いのは「40日も有給休暇がある企業B」ではなく企業Aの方だ。各企業の実態を詳細に見ると、企業Aの休暇日数は企業Bよりも少ないものの、休暇を時間単位で取得できる仕組みや、使いやすい自動承認プロセスがある。企業Bの自動承認システムは融通が利かず、利用しにくい状態だという。
EVPの効果を最大化するためには何が必要なのか。バートン氏は、上司によるコミュニケーションの重要性を挙げる。同氏によると、企業の経営層が公式に発表するよりも、直属の上司がEVPについて伝えた方が、従業員はその内容を受け入れやすい。「EVPを実現する上で、上司が強力な推進力となる」(同氏)
ウェルビーイングを維持するための文化の構築
マンチェスター大学アライアンスマンチェスタービジネススクール(The University of Manchester Alliance Manchester Business School)で教授を務めるキャリー・クーパー氏は、「ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)を維持するための文化」の構築を提唱する。具体的には以下の取り組みを実施することが鍵になる。
- 従業員の都合に応じた働き方を実施できるようにする
- 恒常的な長時間労働を要求しない
- 従業員を承認と報酬に基づいて管理する
- 定期的に従業員の声を聞く
タウンゼンド氏は別の視点から、従業員のウェルビーイングについて次のように説明する。「透明性が重要だ。定例会議でフィードバックをするといった形式的な取り組みに終始せず、従業員の声に耳を傾け、自社に変化をもたらす機会を持つべきだ」
個人の業務目標を事業目標と整合させ、将来の道筋を明確にするような、キャリアを開発するための手段を従業員に提供することも一考だとタウンゼンド氏は述べる。
クーパー氏は「IT業界の根本的な問題は、管理職への昇進が人材管理能力ではなく技術力に基づいていることだ」と指摘する。両方の能力を同等に重視して管理職を採用したり昇進させたりすれば、従業員の定着率は向上し、次世代が求める文化を創造できると同氏は説明する。
「人材の定着や維持の目的は、単に退職を防ぐことではなく、この会社に残りたいと思わせることだ」。タウンゼンド氏はこう指摘する。「成長するための機会を提供できているか、その企業で働く目的は何か、前向きな職場文化を作るためにはどうすればいいか、この質問に答えられるようにすることが人材を維持することにつながる」(同氏)
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー