博物館のDX推進【前編】
博物館が進める800TBのストレージ刷新 “ITで文化財を守る”仕組みとは?
ニュージーランドのオークランド戦争記念博物館は、ストレージの刷新によって、400万点を超える収蔵品の保護、文化を保護するデータ活用に乗り出している。どの製品を導入し、どのような効果を得ているのか。
ニュージーランドのオークランド戦争記念博物館(Auckland War Memorial Museum)は、400万点以上の所蔵品と世界有数のマオリおよび太平洋諸島民族の工芸品を所蔵する博物館だ。デービッド・マクリントック氏がテクノロジーおよびデジタル部門長に就任した2019年当時、同博物館のITインフラは未整備の状態で、システムの連携が取れておらず、セキュリティポリシーや災害復旧(DR)機能が欠けていた。
そうした状態から脱却するために、オークランド戦争記念博物館は新たなストレージを導入し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現した。膨大な所蔵品をデジタル化したデータの取り扱いなど、さまざまな課題にどう対処できるようになったのか。
800TBのストレージで実現した“職員を安心させる”仕組み
セキュリティとバックアップのニーズを満たすために、オークランド戦争記念博物館はDell Technologiesのストレージ製品「PowerScale」を3拠点に導入した。同博物館のストレージ需要は年々増加しており、主要拠点とバックアップ拠点で合計800TBのストレージ容量を実現することを計画している。
拠点の一つはオークランドから離れた場所にあり、1PBのアーカイブデータを保有する。その中には主要な文化的資料の改変不可能な複製データもある。マクリントック氏は、今回のシステム刷新でリスク分散やデータセキュリティ強化が実現したことで、「組織の関係者に大きな安心を提供できた」と述べる。
一部のマオリおよび太平洋諸島民族の工芸品、人骨などの機密性の高い収蔵品は、一般公開が制限されている。オークランド戦争記念博物館は、こうした品目が金銭的価値をはるかに超える文化的価値を持つことを認識しており、文化的に重要なアーカイブデータの管理、利用、保存に関する決定権を、その文化の代表者が制御できる「デジタル主権」を重視する。これを受けて、マオリおよび太平洋諸島民族の視点を取り入れたデータガバナンスの拡張を検討している。
マクリントック氏がオークランド戦争記念博物館におけるデジタル化の取り組みについて語った際、「データは土地である」という考え方が登場した。これは、ニュージーランドへの移住者が先住民の土地や文化を侵略して植民地化した「過去の過ち」を、IT領域でも繰り返すべきではないという意味だ。
世界中の先住民は自らの文化的データを大手IT企業に委ねることに慎重な姿勢を示している。一方でこの考え方を実現すれば、情報の閲覧を制限することにつながる。
ギャラリー、図書館、アーカイブ、博物館(GLAM)分野の組織には十分な資金があるわけではないが、豊富な資料を有する。「ニュージーランドが新たな歴史カリキュラムを導入した今、われわれのアーカイブデータを教育分野で活用できる可能性がある」とマクリントック氏は指摘した。
ストレージ刷新による効果
オークランド戦争記念博物館はこれまで、信頼性に不安のある外部委託のテープバックアップを利用していた。今回のストレージ刷新によってその必要性がなくなり、クラウド型バックアップサービス「Dell APEX Backup Services」へのスムーズな移行を成功させた。
PowerScaleが搭載する保護機能「Ransomware Defender」を活用することで、ファイル名の一括変更などの不正行為を防止し、ストレージシステムのセキュリティ強化も実現した。ストレージ管理を省力化することによって、オークランド戦争記念博物館はビジネス継続性とデータの整合性に焦点を当てた堅牢なサイバーセキュリティ体制を確立した。
古いストレージは処理速度などの面でデジタル化チームの作業を遅らせる要因になっていたが、今回の刷新によって作業効率が上がり、「デジタル化を推進する」というCEOの目標に合致するものとなった。収蔵品のデータ化は、展示スペースの節約や劣化しやすい展示品の取り扱い制限の緩和につながり、オークランド戦争記念博物館とその収蔵品をより広い層に利用してもらえるようにすることに役立つ。
「最適なデータストレージシステムを導入することで、オークランド戦争記念博物館はDXの目標を実現する体制が整った」(マクリントック氏)
次回は、博物館が推進するAI(人工知能)プロジェクトを紹介する。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
6
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
7
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
8
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
9
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
10
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー