“脱VMware”は進むのか【前編】
「VMware依存」から脱却したい“企業の本音”と代替製品の実態
BroadcomによるVMwareの買収と、その後の方針転換は大きな衝撃を与えた。代替ハイパーバイザーやクラウドネイティブ技術などへの移行は実際に進んでいるのか。移行を検討している企業が考慮すべき要素とは何か。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収した後、VMwareの仮想化製品を、買い切り方式からサブスクリプションサービスへの移行を進めている。「この取り組みは成功を収めている」とBroadcomのCEOホック・タン氏は述べる。
タン氏は、プライベートクラウドおよびハイブリッドクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)は着実に普及しており、「VCFの利用拡大は、当社のさらなる成長につながる」と説明する。だがこの成長は順風満帆ではない。BroadcomがVCFの価値を強調する一方で、一部の顧客やパートナー企業は否定的な反応を見せている。
VMwareから離れたい企業の本音
併せて読みたいお薦め記事
VMwareからの移行は進むのか
市場の競合他社や業界アナリストは、大半のVMwareユーザーが契約を更新しつつも、代替手段を探しているとの見方を示す。OS「Linux」に組み込まれたハイパーバイザー「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)や、プライベートクラウド構築ツール群「OpenStack」などのオープンソースツールが代替候補として注目されている。Broadcomの競合仮想化ベンダーの中には、Broadcomへの依存を避けたい企業向けに、KVMをベースに独自開発した仮想化関連ツールを提供しているところがある。
ただしこうしたツールの導入は今のところ限定的だ。調査会社Data Center Intelligence Group(DCIG)のCEO兼プリンシパルアナリストであるジェローム・ウェント氏は、Broadcomが今後も仮想化市場のリーダーであり続けると予測する。
「VCFは機能が豊富で、多様なシステムとの連携が可能だ。VMware製品を利用し続けてきた企業にとっては扱いやすく、従来製品からVCFへの移行は自然な選択肢になりやすい」とウェント氏は指摘する。これに対してKVMベースの仮想化関連ツールは、連携可能なツールの発展、サポート体制、運用ノウハウといった面でVCFに及ばない点があり、問題発生のリスクを懸念する声がある。
「VMware製品が使用できなくなって業務に重大な支障が出るリスクと費用を比較した結果、企業は“仕方なく”VMware製品を使い続けることを選択している」(ウェント氏)
競合他社の動き
Platform9 Systemsは、VMwareを退社した複数のエンジニアが創設したプライベートクラウドベンダーだ。OpenStackを基盤として、VCFの競合となる仮想化製品「Private Cloud Director」を提供している。
「Broadcomが大口顧客を重視する姿勢を取ったことで、市場に新たな機会が生まれた。それに乗じて、当社もVMwareユーザーを積極的に支援している」。Platform9 Systemsの共同創設者であり製品部門バイスプレジデントのマドゥラ・マスカスキー氏はそう話す。
一部の企業はVMware製品を使い続けてるが、離脱する企業も確実に存在する。「こうした動きが、他のベンダーにとって巨大な市場を開くことになる。現状やむを得ず契約している企業も、いずれはBroadcomからの脱却を決意するだろう」とマスカスキー氏は予測する。
Platform9 Systemsは2024年11月にオープンソースツール「vJailbreak」を公開した。vJailbreakは、VMware製品で構築したVM(仮想マシン)を、Private Cloud DirectorなどのKVM互換ハイパーバイザーに移行するための無償ツールだ。
Platform9 Systemsは、VMwareの管理ツール「VMware vCenter」と同等の機能を実装しようと試みているものの、マスカスキー氏は完全に同一の代替品を探すことには懐疑的だ。むしろVMwreユーザーは、異なるシステム設計の仮想化製品や、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」をクラウドネイティブな代替手段として検討すべきだと同氏は提唱する。VMware製品からの移行で不足する機能は他のツールで補い、ベンダーロックインを避けてシステムを最新化することが望ましいというのが同氏の見解だ。
プライベートクラウドベンダーCloudSigmaも、VMware製品からの移行をビジネスチャンスだと捉えている。同社はVMware製品の代替として、KVMベースの仮想化ツールを提供している。以前はVMwareの公式パートナーとして、VMware製品を提供する立場にあった。
CloudSigmaの共同創設者兼CEOであるロバート・ジェンキン氏によると、まだVMware製品を採用していない企業のほとんどは、KVMベースのハイパーバイザーや、クラウドネイティブなツールを選択している。
「Broadcomは既存顧客からの収益最大化を図っているように見える」とジェンキン氏は言う。そうした企業のほとんどはVMware製品に大きく依存しており、移行は容易ではない。それでもKVMはベンダーロックインを回避する上で有効な選択肢だ。
ジェンキン氏はVMwareユーザーに対して、現在利用している機能を見直すことを推奨する。「VMwareが提供する機能の大部分は、KVMを通じてより低予算で実現できる可能性がある。新しいシステムを構築する際には、KVMを基盤にするのが現在のトレンドだ」(同氏)
次回は、Broadcomおよび仮想化市場の今後の展望を考察する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー