快適なネットワークの設計戦略【第1回】
“止まらないネットワーク”に不可欠な「FHRP」「OSPF」「BGP」とは何か?
ネットワークの安定運用は、業務停止やサービス遅延を防ぐ生命線となる。ネットワークの信頼性確保において重要なプロトコルの基本を理解しよう。
業務停止やサービス遅延を防ぐ上で、ネットワークを安定的に運用することは極めて重要だ。ネットワークの信頼性を確保するには、ハードウェアだけでなく、通信を制御するネットワークプロトコルに関する知識も欠かせない。
ネットワークプロトコルは、データをネットワーク上でどのように送信するかを規定するルールとなる。そのルールがあることで、ネットワークで接続するデバイスが効率的に通信し、円滑に情報交換をすることが可能になる。本稿はネットワークの信頼性を支える主要なプロトコルとして、
- FHRP(First Hop Redundancy Protocol)
- OSPF(Open Shortest Path First)
- BGP(Border Gateway Protocol)
の3つを取り上げ、それぞれの役割や実装上の注意点などを解説する。
ネットワークの信頼性を支える「3つの重要プロトコル」
併せて読みたいお薦め記事
押さえておきたいネットワーク基礎知識
ネットワーク通信の基盤となるネットワークプロトコルは、ネットワークの信頼性を維持する上で欠かせない。中でもFHRP、OSPF、BGPは、それぞれ異なる階層でネットワークの可用性と経路制御を担う重要なプロトコルだ。
First Hop Redundancy Protocol(FHRP)
FHRPは、ルーターやゲートウェイの障害が発生した際に備えて、トラフィックをバックアップデバイスへ自動的に切り替える「冗長化」のためのプロトコルだ。FHRPには、ベンダー固有の実装と、「Virtual Router Redundancy Protocol」(VRRP)のような、標準化された非ベンダー実装が存在する。
VRRPは、複数のルーターが1つの仮想IPアドレスを共有する仕組みだ。通常は「プライマリーデバイス」が仮想IPアドレスを使って処理する。万が一、プライマリーデバイスが障害を起こした場合、バックアップデバイスが仮想IPを引き継ぎ、自動的にルーティング処理を継続する。復旧時にはプライマリーデバイスが処理を再開する。
VRRPを構成する際は、L2(レイヤー2)スイッチ間の冗長構成によるループを防ぐためのプロトコル「Spanning Tree Protocol」(STP)の設定も考慮しなければならない。ネットワークの安定性を保つには、VRRPのプライマリースイッチをSTPのルートスイッチにも設定するのが望ましい。
「オブジェクトトラッキング」機能を用いれば、VRRPの対象外のインタフェース(非VRRP)も監視できる。これらのインタフェースがダウンした場合も、バックアップデバイスに自動で切り替えられるようになり、信頼性を一段と高めることが可能だ。
Open Shortest Path First(OSPF)
OSPFは、ルーターのリンク障害を迅速に検出し、「ダイクストラ法」あるいは「SPFアルゴリズム」で最適なルートを再計算できる。再計算されたルート情報は、リンクステート広告(LSA)パケットを用いて、他のルーターに通知される。
ただし、OSPFにはスケーラビリティの課題がある。OSPFは、全てのルーターにパケットをばらまく「フラッディング方式」でLSAを配信する。そのため、ネットワーク規模が大きくなると帯域幅を消費し、ルーターのCPU負荷が増える。特に、数百台規模のルーターが存在する大規模エンタープライズネットワークでは、1つのリンク障害でも全ネットワーク全体に影響が及び、全てのルーターがルート再計算を余儀なくされる可能性がある。
この問題への対処法として、ネットワークをOSPFエリアに分割し、不必要な更新の伝播を抑える方法を推奨する。
Border Gateway Protocol(BGP)
BGPはインターネットルーティングの中核を担うプロトコルだ。ネットワークを管理する際、複数のルーターを共通ルールでまとめて、AS(自律システム:単一ポリシーで制御されるネットワークの集合)を構成する。各ASには、通常インターネットサービスプロバイダー(ISP)によって管理固有の番号(AS番号)が割り当てられる。これによりAS同士が相互接続し、ルーティング制御を維持できる。
BGPを構成する際、物理インタフェースではなくループバックインタフェース上で、AS内部のBGPネイバーシップ(隣接関係)を確立する必要がある。
一方でBGPにもスケーラビリティの課題がある。全てのルーターが互いにBGPネイバーシップを形成しなければならない点だ。この問題を緩和する代表的な手法は次のとおり。
- ルートリフレクタ
- 特定のルーターが代表して他ルーターと接続し、ルート情報を反映して配布する。例えば3台のルーターが直接3本接続しなくても2本に削減できる
- BGPコンフェデレーション
- 大規模なASをより小規模なサブASに分割し、ルーティング管理を簡素化する手法。ISPであれば大陸レベルのネットワークを地域ごとに分割する際に有効なアプローチとなる。
次回は、ネットワークのパフォーマンスを最適化するための戦略を解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー