安全なモバイルデバイス利用をかなえるネットワークセキュリティ【前編】
“脱VPN”は序の口? モバイル時代にネットワークセキュリティ再考が必須な訳
業務利用が広がるモバイルデバイス。そのセキュリティを確保する上で、従来型の汎用的なネットワークセキュリティツールには限界があるという。それはなぜなのか。
モバイルデバイスへの脅威は、マルウェアだけではなくネットワーク経由の攻撃にも広がっている。それに伴って企業は、利用するネットワークを問わずにモバイルデバイスを保護できるセキュリティツールを求めるようになっている。
IT部門は、モバイルデバイスで扱う機密データを保存時・転送時の双方で保護するために、ネットワークセキュリティを強化すべきだ。従来のLANにとどまらず、インターネット接続を前提としたモバイルデバイス特有の課題に対処する必要がある。
BYOD(私物デバイスの業務利用)か企業支給かにかかわらず、進化する脅威からモバイルデバイスを守るために、IT部門ができることがある。中でも重要なのが、モバイルデバイスの利用を前提としたネットワークセキュリティツールを戦略的に導入することだ。
モバイル時代に「汎用型ネットワークセキュリティツール」が直面する限界
モバイルデバイスかどうかに関係なく、IT部門はネットワークを監視・保護するために、さまざまなネットワークセキュリティツールを導入してきた。モバイルデバイスの業務利用が一般化したことで、従来のネットワークセキュリティツールだけでは対処に限界が見え始めている。
汎用(はんよう)的なネットワークセキュリティツールには、次のようなものがある。これらはモバイルデバイスが利用するネットワークの保護には一定の効果があるものの、モバイルデバイス固有の脅威には十分に対処できない場合がある。
- IAM(ID・アクセス管理)
- VPN(仮想プライベートネットワーク)
- NAC(ネットワークアクセスコントロール)
- IDS(不正侵入検知システム)/IPS(不正侵入防止システム)
- SWG(セキュアWebゲートウェイ)
デバイスとLANの間に暗号化通信のトンネルを構築するVPNは、安全なリモートアクセス手段として広く利用されてきた。ところが一部の用途では通信遅延が発生しやすく、モバイルデバイスの普及による接続数の増加に対して拡張性が不十分な場合があるなど、時代にそぐわなくなりつつある。VPNには、攻撃者が侵入した際に、ラテラルムーブメント(別のネットワークセグメントへ不正アクセスしながら横方向に移動する行為)をしやすいというリスクもある。
NACは、デバイスの状態やコンプライアンス(法令・規定順守)ポリシー、ユーザー情報に基づいて、ネットワークアクセスを制御する仕組みだ。以前から稼働するNACは、設計時の前提が現在の環境と合わなかったり、固定的な設定や後付け機能によって管理が複雑化したりして、OSや利用場所に応じた制御が困難なことがある。最新のセキュリティツールや運用管理ツールと連携する際には、個別設定や手動での調整が必要になることも珍しくない。
IDS/IPSは、疑わしいネットワーク活動の監視・検知や既知の攻撃のブロックを可能にする。ただしモバイルデバイスでは、外部アプリケーションとの通信がHTTPSなどによって暗号化されていることが一般的であり、こうしたアプリケーション経由の攻撃については可視性が低下し、脅威を検知できない可能性がある。
SWGは、インターネットのトラフィック(送受信されるデータ)をフィルタリングし、悪意のあるWebサイトを識別・遮断する。モバイルデバイスのユーザーにとって有用ではあるものの、Webブラウザを経由しないクラウドアプリケーションやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)通信など、Webブラウザ外で発生する接続まではカバーできない。その結果、Webサイト以外の経路を利用した攻撃やデータ流出リスクに対しては、効果が限定的となる。
「ゼロトラストセキュリティ」がモバイルデバイスのセキュリティ確保の基本
ネットワークとモバイルデバイスの双方に対するセキュリティを同時に高める――。これを実現する上で重視すべきなのが「ゼロトラストセキュリティ」の概念だ。ゼロトラストセキュリティは、全てを信頼せずに検証を前提とするセキュリティモデルを指す。有線LANや無線LANに加え、公衆無線LANサービスといった信頼性の低いネットワークを利用するモバイルデバイスを保護する上で、ゼロトラストセキュリティの具現化が重要になる。
ゼロトラストセキュリティを具現化する手段として有効なのが「SASE」(Secure Access Service Edge)だ。SASEは、ネットワーク全体およびモバイルデバイスに関する幅広いセキュリティ対策に貢献する。SASEは「SD-WAN」(ソフトウェア定義型WAN)などのネットワーク機能と、SWGや「ZTNA」(ゼロトラストネットワークアクセス)、「CASB」(Cloud Access Security Broker)、「FWaaS」(Firewall as a Service)といったセキュリティ機能を併せ持つ。
VPNの代替として利用が拡大しているのがZTNAだ。SASEのコンポーネントでもあるZTNAは、ユーザーやデバイス単位でアクセス可能なアプリケーションを限定し、それぞれのアプリケーション専用に個別の接続経路を設定する。
IAMは、ゼロトラストセキュリティを実現する上で中核を担う機能であり、ユーザー認証にとどまらず、アプリケーションやネットワークへのアクセス権限の一元管理を可能にする。IAMに「MFA」(多要素認証)を組み合わせることで、特にモバイルデバイスを対象としたアクセス制御を一層強化できる。
後編は、モバイルデバイスの安全なネットワーク利用を支えるセキュリティツールを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
インシデント発生後に最も重要な「最初の48時間」 どう乗り切る? -
製品資料
急激なデジタル化の裏で増大するデバイスのリスク 東急建設はどう対処した? -
製品資料
「フロンティアAI」実践解説:セキュリティ対応に向けた5つのステップ -
製品資料
WSUS非推奨化でさらに混迷 複雑化するサーバ環境の運用負荷をどう解消する? -
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
2
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
5
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
6
VMware離れを食い止めるか? 今「VCF 9.1」が再評価される理由
-
7
同じ攻撃で明暗 CISAの侵入テストで見えた「機能するSOC」3つの鉄則
-
8
「即戦力」は幻想? 中途の3割が消えるAI時代のエンジニア生存戦略
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
「週5出社」で社員が消滅? テレワーク廃止の悲惨な末路と“退職のサイン”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー