ヌーラボ調査が示す組織活用の壁
生成AIで広がる「AI孤立」――個人だけが効率化、チームは置き去りの現実
業務効率化における生成AIの恩恵は、一部の個人にとどまっているのが実態だ。調査から、スキルの差による現場の摩擦や「AI孤立」といった深刻な課題が浮き彫りになった。組織全体の生産性を底上げする解決策とは。
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、生成AI(AI:人工知能)の導入による業務効率化は不可欠な取り組みになっている。しかし、その恩恵は企業全体に正しく波及しているのか。特定の個人のみが効率化の恩恵を受け、チームとしての連携に課題を抱える企業が散見される。
コラボレーションツールベンダーのヌーラボは、2026年2月25日から2月27日にかけて、全国の20~50代のビジネスパーソン1000人(管理職500人、一般職層500人)を対象に、「AIのチーム活用に関する実態調査」を実施した。調査結果によると、回答者の45.8%が生成AIの利用によって「個人の作業効率が向上した」と実感していることが判明した。
一方で、チームへの影響に目を向けると、約20%の回答者が「特に変化はなかった」と回答している。特に40代や50代の一般職において、組織的な効果を実感できていない傾向が顕著に見られた。個人の作業を生成AIで効率化する動きは着実に進んでいるものの、チーム全体の生産性向上や新たな協働の形には十分につながっておらず、過渡期にある実態が浮き彫りになった。
現場で静かに進行する「AIスキルの格差」と、これからの企業に求められるアプローチとは。
生成AIが招くコミュニケーション分断の危機
併せて読みたいお薦め記事
これからの必須スキル
調査結果を分析すると、AIスキルの個人差が現場に摩擦や不公平感を生み出していることが読み取れる。回答者全体の約16%、一般職に限れば18.0%が「生成AIの使い方に個人差があり、不公平に感じる」と回答した。プロンプト入力に長けた一部の従業員に恩恵が集中することで、チーム内に「AI孤立」が生まれ始めていることが示唆されている。
見過ごせない課題が、コミュニケーションの分断と思考力の低下だ。同僚への質問や相談の機会が減少し、チーム内における対話や偶発的なコミュニケーションが失われるリスクが高まりつつある。回答者全体の17%、特に30代の管理職層においては27.7%が「生成AIを使うことで考える力やスキルが低下するのではないか」と不安を抱いていることが分かった。業務の標準化を推し進める過程で、メンバーが生成AIに過度に思考を委ねてしまう危険性が懸念されている。
一般職の68.2%が、生成AIによるチーム活用アイデアについて「特になし/分からない」と回答している事実からも、現場には「チームで生成AIをどう活用すべきか」という明確な指針が欠如している。導入企業に対しては、実務に即したノウハウの共有や、成果の可視化を求める声が多く挙がっており、チームとしての活用方法が不明確なことが定着を阻む大きな要因となっている。
生成AIは強力な技術である一方、個人の手元の作業に閉じたままでは、協働の質の向上にはつながらない。一部の従業員のみが業務を効率化している状況や、生成AIへの過度な依存によるメンバー間の対話の喪失を防ぐためには、チーム全体で活用できる前提やルールを整えることが不可欠だ。
企業には、個人の作業支援にとどまらず、情報の整理や共有、意思決定を支える仕組みとして生成AIを機能させることが求められる。生成AIの位置付けを個人の時短ツールから、チーム全体の前進を可能にする「協働インフラ」へとアップデートすることが、次世代の組織最適化に向けた鍵になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] クラウドネイティブ戦略ガイド:8つの主要課題と解決策を解説 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] プラットフォーム技術者のための「クラウドネイティブ」プレイブック -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] ハイブリッドクラウドでハードウェア価格高騰のリスクを回避する方法 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI時代に必要なインフラモダナイゼーションの考え方とは? -
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策で見直したい「復旧できるファイル基盤」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
4
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
9
「野良Excelマクロ」に悩むSMBC日興証券が導き出した内製化の“現実解”
-
10
経営幹部が期待を膨らませる「AIエージェント」は何に使えるのか? 活用例5選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー