1300人規模のナレッジ基盤移行
「AIに聞け」はなぜ失敗する? 出前館に学ぶ“問い合わせ地獄”からの脱却法
社内にAIツールを導入しても、無秩序なデータ群しかなければ回答の精度は落ち、IT部門への問い合わせが増大する。1300人規模のナレッジ基盤を刷新した出前館の事例に解決の糸口を探る。
「AIブーム」を背景に、社内ナレッジのAI活用が進んでいる。しかし、無秩序なデータ保管システム(ナレッジ基盤)にそのままAIツールを接続しても、古い情報や無関係なデータを拾い上げてしまい、「使えないAI」になるだけだ。その結果、従業員の自己解決を促すはずが、IT部門への問い合わせが逆に増えてしまうという本末転倒な事態になりかねない。
全国でデリバリーサービスを展開する出前館も、かつては「検索結果の汚染」という構造的課題に直面していた。同社が以前利用していたツールは関連会社との共有システムだたため、検索時に不要な情報が常に混在していたという。必要な情報に素早くたどり着けない現場のストレスは、社内問い合わせの増加と業務効率の低下という形でIT部門を圧迫していた。
旧ツールの保守期間終了が迫る中、出前館は単なる「ツールの乗り換え」ではなく、業務委託を含む約1300人規模の組織的なAI活用を前提とした根本的な刷新を決断する。目指したのは、単なるドキュメント保管庫ではなく、1300人規模の組織的なAI活用を前提とし、AIツールが正確な回答を導き出すためのクリーンなデータソースとして機能するナレッジ基盤の構築だ。
1300人の知見を集約する「次世代ナレッジ基盤」の必須要件
出前館は、全社における検索性の改善とセキュリティ、統制の一本化およびAI活用を前提とした情報環境の整備を目的に、コラボレーションソフトウェア「Notion」とAIアシスタント「Notion AI」を採用した。2026年5月21日、Notion Labs Japanが発表した。子会社や業務委託などを含む約1300人規模での利用を開始している。情報集約と組織的なAI活用を推進することで、さらなる業務変革を目指す。
全国47都道府県でデリバリーサービスを展開する出前館では、これまでナレッジ基盤として利用していた他製品のサポート終了を契機に、情報管理システムの刷新を検討していた。従来のツールは関連会社との共有システムだったため、検索結果に不要な情報が混在し、必要な情報に素早くたどり着けないという構造的な課題を抱えていた。これが社内への問い合わせ増加や業務効率の低下を招く要因になっていたため、情報共有の最適化が急務となっていた。
採用に当たっては、複数製品を比較検討する中で、外部システム連携、SSO(シングル差0員オン)連携、AI機能の充実度などを評価した。特に、Notion AIを中心としたAI機能とAPIの汎用(はんよう)性によって、将来的なカスタムエージェント活用を含めた組織的なAI活用を推進できる点がポイントとなった。「Slack」や「Box」といった外部サービスと連携して社内ツールの「連携ハブ」として機能し情報集約ができる点や、データベースをはじめとする標準機能の自由度が高く、ナレッジ管理を超えて業務運用を拡張できる点も選定の決め手となった。
出前館は、2026年1月に100人規模で先行利用を開始し、同年4月に全社契約を締結、5月に全社展開を開始した。ドキュメントとデータベースをシームレスに一元化できるNotionの導入によって、テンプレート化や権限設計による運用の標準化が進行。現場主導での継続的な情報アップデートが容易になり、部署やプロジェクトの垣根を越えて情報同士をリンクさせることで、これまでサイロ化していた知見の集約が進んでいる。
今後は、Notionをメインナレッジ基盤として定着させるとともに、Notion AIを活用して「まずNotion AIに聞く」導線を広げ、社内問い合わせの自己解決率向上とナレッジ業務の生産性向上を目指す。将来的にはカスタムエージェントも活用し、「1次受付はAI、それ以降は人」という役割分担の下、AIと人が協働する業務システムの構築を進める。
出前館 IT本部本部長兼VPoEの米山輝一氏は、Notionの全社導入について「単なる情報共有ツールの刷新ではなく、社内に点在する知識や業務プロセスをつなぎ、誰もが必要な情報に素早くアクセスできる環境を整えるための重要な一歩だ」と語る。その上で、「NotionとNotion AIを活用することで属人化を減らし、小さな改善を積み重ねながら大きな変革につなげたい。従業員一人一人の生産性と創造性を高め、ライフインフラの実現を社内ITの面から力強く後押しする」と展望を話す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「出前館、Notionでナレッジ基盤を刷新 1300名規模で組織的AI活用へ」(2026年5月22日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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