分断されたシステムが招く問題
モデルナが直面したデータ散在 Salesforceの「AIエージェント」が救世主に?
ライフサイエンス業界ではシステムの分断によるデータの散在や業務の属人化が深刻な課題となっている。バイオファーマ企業のモデルナは「Agentforce Life Sciences」を導入し、この問題にどう立ち向かうのか。
バイオファーマ企業のModernaは、SalesforceのAIサービス「Agentforce Life Sciences for Customer Engagement」を採用し、グローバル規模での営業業務を一元化したことを発表した。
近年、ライフサイエンス業界ではビジネスのグローバル化が加速する一方で、地域や部門ごとにシステムが分断され、データが散在してしまうことが大きな課題になっている。Modernaも例外ではなく、複数の地域にわたって運用されるシステム群の集約が急務になっていた。
Modernaは今回、顧客である医療従事者とのコミュニケーションをはじめ、フィールドサービスやカスタマーサービスといった業務を一元化するシステムを構築した。これによって、医療従事者のニーズを全方位から把握し、最適な顧客体験を提供することを目指す。
散在するデータをいかにして集約し、日々の営業活動にAIエージェントを組み込むのか。システムの具体的な仕組みと、現場にもたらす変化の詳細を紹介する。
煩雑な事務作業や属人的な営業からの脱却
Modernaが構築する新たなシステムの核となるのは、散在するデータの統合と「信頼できる唯一の情報源」の確立だ。
Modernaは、基幹業務システムであるSAP製ERP(統合基幹業務システム)やEコマースシステム、複数の地域で個別に稼働していたシステムから顧客データを抽出し、単一のシステムに集約している。ここで重要になるのが医療データの正確性と安全性だ。ライフサイエンス業界に特化したデータサービスであるIQVIAの「OneKey」を活用することで、常に最新かつ信頼性の高い参照データを維持し、セキュアなマスターデータ管理を実現する。
データ管理システムの一元化に続くステップが、AIエージェントを活用した現場の営業活動の高度化だ。同社のフィールドチームは、AIエージェントである「Agentforce」を日々の業務プロセスに組み込む。Agentforceは集約されたデータとリアルタイムのインサイトを分析し、営業担当者に対して医療従事者との対話における「次に取るべき最善のアクション」を提示する。
加えて、Agentforceは訪問計画の作成を自動化し、訪問後の活動報告業務を効率化する。これによって、営業担当者は煩雑な事務作業から解放され、より効果的で意義のある医療従事者とのコミュニケーションに注力できるようになる。
このシステム一元化は、マーケティング活動のグローバル展開にも寄与する。複数のチャネルを横断したマーケティング施策を一括で管理して実行できるため、個別のデータに基づいたデータ駆動型のキャンペーンを展開し、営業活動とカスタマーサービスを緊密に連動させることが可能になる。
特筆すべきは、特定のベンダーに縛られないオープンなアーキテクチャを採用している点だ。営業、医療、患者サービス、コンタクトセンターといったさまざまな部門の業務を接続できるため、既存のIT投資を無駄にすることなく、事業の変化に合わせて迅速かつ大規模に拡張できる優位性を持つ。
Salesforceが提供する「Agentforce Life Sciences」は、製薬会社や医療機器メーカーが直面する特有の要件に適合するように設計された、業界特化型のAIエージェントだ。ライフサイエンス業界では、電子カルテなどの構造化データだけではなく、医師の所見や研究論文といった非構造化データが膨大に存在する。Agentforce Life Sciencesは、これらの異種データを連携させ、適切な文脈に合わせて解釈する能力を備えている。
従来のルールベースのツールとは異なり、状況に応じて自律的に行動し、意思決定を下すことができる点も大きな特徴だ。Agentforce Life Sciencesは過去のデータから継続的に学習し、新しい状況に適応しながら個別のインサイトを提供することで、複雑で変化の激しい医療現場において精度の高い判断を支援する。
膨大なデータセットを、人間よりも高速かつ高精度で処理、分析できる点もAgentforce Life Sciencesの特徴だ。これによって、小さなミスが重大な結果を生む可能性のある医療分野において、ヒューマンエラーのリスクを軽減する。反復的なタスクを自動化することで手間を削減し、限られた人材の配置を最適化して、より本質的な業務に集中できる体制を構築する。強固なデータセキュリティシステムも備えており、HIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)などの規制を順守しながら、機密性の高い医療データを安全に処理できる。
Modernaの取り組みは、単なるツールの導入にとどまらず、データとAIエージェントを業務の中核に据えた「モダンなAI駆動の組織」への変革だと言える。同社は今後、単一システムで属人的な業務を標準化し、グローバル規模で医療従事者との関係性強化を目指す。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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