「銀行ごとの接続」から脱却へ
みずほ銀行とSAPが戦略的提携 単一チャネルで複数銀行を接続し資金管理を効率化
みずほ銀行は邦銀として初めて、SAPの「SAP Multi-Bank Connectivity」を導入する。単一の標準チャネルを通じて複数銀行と接続でき、資金決済や資金管理業務の効率化が期待されるサービスだ。
グローバルに事業を展開する企業では、複数の銀行との資金決済や入出金管理を実施することが一般的だ。しかし銀行ごとに接続方式や運用方法が異なるため、システム連携や保守運用が複雑化し、財務部門や情報システム部門の負担となる。
こうした課題の解決に向け、みずほ銀行はSAPと戦略的提携し、SAPのマルチバンク接続基盤「SAP Multi-Bank Connectivity」(SAP MBC)を邦銀として初めて導入した。まずはアジア太平洋地域(APAC)の一部地域でサービス提供を開始する。2026年6月2日、SAPが発表した。
複数銀行との接続を「単一チャネル」に集約
SAP MBCは、企業の基幹システムと複数の取引銀行を単一の標準チャネルで接続できるクラウド基盤だ。
従来、企業が複数の銀行と取引する場合、銀行ごとに接続方式やインタフェースを管理する必要があり、支払指示や入出金情報の取得、取引状況の確認などの運用が複雑になりやすかった。
SAP MBCを利用すれば、企業は1つの標準的な接続基盤を通じて複数銀行とデータをやり取りできるため、システム接続や運用管理の負荷を抑えながら資金管理業務を効率化できる。
みずほ銀行はSAP MBCの「Member Bank」として参画し、この基盤を利用する企業に対して銀行サービスを提供する。
既存の財務システムを生かしたまま利用しやすく
今回の提携の特徴は、企業が既に構築しているTreasury Ecosystems(財務管理の仕組み)との親和性を高めている点だ。
企業は既存の財務システム環境を大きく変更することなく、みずほ銀行との接続を追加しやすくなる。その結果、新サービスの導入期間短縮や運用の柔軟性向上、日々の資金管理業務の機動性向上が期待される。
みずほ銀行アジアパシフィック地域本部長兼常務執行役員の材木孝一氏は、「より標準化された接続を通じて法人顧客への資金管理サービス提供力を高める。既存の財務管理の仕組みの中でみずほ銀行を利用しやすい環境を提供し、迅速なサービス導入や柔軟性向上を支援する」としている。
自動化とリアルタイム可視化で資金管理を高度化
SAPによれば、この仕組みによって決済処理の自動化だけでなく、資金状況のリアルタイム可視化やデータ連携の自動化も可能になる。
その結果、企業は流動性をより効果的に管理し、市場環境の変化にも迅速に対応しやすくなる。SAP APAC Regional Business Suite Leaderのベレーナ・シオウ氏は、日々の業務支援のあり方を一段進める取り組みだと評価している。
APAC戦略とEmbedded Financeへの布石
SAPが公開している「SAP Corporate Fact Sheet」によれば、2026年5月時点で世界の商取引の84%はSAPの顧客企業が担っている。みずほ銀行にとってSAP MBCへの参画は、こうしたグローバル企業へのサービス提供力を高め、銀行接続の選択肢を広げる戦略的な意味を持つ。
また、みずほ銀行グローバルトランザクションバンキング営業部APAC室長のアシュトシュ・クマル氏は、本提携を「Embedded Financing」(企業の業務プロセスに金融機能を組み込む考え方)の進展に向けた重要な一歩と位置付けている。企業が利用する業務システムの中に金融サービスを自然に組み込む環境整備を進めることで、APAC地域における先進的なトランザクションバンキングパートナーとしての地位強化を目指す考えだ。
なお、今回のサービス提供はAPAC域内の一部地域が対象であり、日本国内での提供については、関係各所と連携しながら今後の可能性を検討するとしている。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「みずほ銀行、SAPの接続基盤でアジアの資金管理を効率化 邦銀初の導入」(2026年6月4日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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