従来の仮想化システムにおけるライセンス費用の高騰や、運用管理の複雑化が企業を苦しめている。「Red Hat OpenShift」を活用し、仮想化費用を約60%削減する道筋を立てた大手銀行の事例を紹介する。
デジタルサービスの多様化やAI技術の進展を背景に、金融業界ではITインフラの最適化が急務になっている。2024年7月から8月にかけて、Accentureが326の銀行エグゼクティブを対象に実施した調査によれば、59%の銀行が依然としてレガシーなITシステムに関する課題を抱えている。特に、従来の仮想化システムにおけるライセンス費用の高騰や、仮想マシン(VM)とコンテナが混在することによる運用管理の複雑化は共通の悩みだ。
ポーランドの大手銀行Alior Bankも、こうした課題に直面していた。同行は、2025年から2027年に向けた経営戦略の中で、新たなモバイルデジタルバンキングサービスの拡充を掲げている。その技術的土台として、数百台に上るVMを稼働させる既存の仮想化システムから脱却し、インフラを刷新する決断を下した。
この刷新によって、仮想化にかかる費用を約60%削減し、わずか2年半以内でインフラ刷新への投資を回収できる見込みだ。大規模な移行を支えた技術的アプローチと、金融機関に不可欠な可用性をいかにして確保したのか。脱レガシー仮想化の具体的な道筋を探る。
Alior Bankが費用削減と運用効率化の切り札として採用したのは、Red Hatのコンテナ管理ツール「Red Hat OpenShift」と、Hitachi Vantaraの大規模データ向けファイルストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform One」(VSP One)を連携させたシステムだ。最大の目的は、VMとコンテナを単一の仕組みの上で並行稼働させることにあった。
VMをKubernetes基盤で実行する拡張機能「Red Hat OpenShift Virtualization」を活用することで、これまで別々のシステム構成として扱われていたVMとコンテナを一元化し、コンピューティングリソースのサイロ化を解消できる。これによって、Alior Bankのアプリケーション開発部門は、従来型システムとクラウドネイティブなシステムを同一のツールや手順で管理できるようになり、運用負荷が大幅に軽減される。
ただし、ミッションクリティカルな銀行業務において、コンテナとVMを混在させるインフラへの移行は決して容易ではない。極めて高い応答性能と、障害時にもサービスを止めない堅牢(けんろう)性が求められるからだ。
この要求に応えるため、ストレージ層にはブロックデータ用の高性能モデル「Hitachi Virtual Storage Platform One Block 26」(VSP One Block B26)の他、大容量・高速処理に特化した「Hitachi Virtual Storage Platform E1090」(VSP E1090)や「Hitachi Virtual Storage Platform E990」(VSP E990)といったストレージ製品群を選定した。
ここで鍵になるのが、複数拠点にまたがる「Active/Active構成」だ。これは、本番用と待機用を分ける従来の「Active/Standby構成」とは異なり、複数のデータセンターを同時に本番稼働させる仕組みだ。拠点間でデータをリアルタイムに同期、二重化する技術「Hitachi Global-Active Device」を利用することで、障害時にもシステムを停止させることなく、継続的な運用を実現する。システム切り替えによるタイムラグやデータ損失が生じ得る従来の災害対策(DR)よりも、優れた回復力を備えている。
このシステムには、コンテナからストレージを直接操作するための標準規格「Container Storage Interface」(CSI)に準拠した連携用ソフトウェアが組み込まれている。これによって、OpenShiftの管理画面からVSP Oneのストレージ容量などのコンピューティングリソースを動的に割り当て、自動で管理することが可能になる。
Alior BankのCTO(最高技術責任者)であるピョートル・クシャク氏は、「従来の仮想化システムから脱却することで、費用削減を実現しながら、アプリケーションを自在に支えるインフラを構築できる」と、その独自性と優位性を強調する。インフラ部門責任者のヤツェク・ガズダ氏も、VMとコンテナ化されたワークロードの一元化が大きな効率向上をもたらし、管理負担を削減すると評価している。
実際の移行作業においては、Red Hatが提供するVM移行ツール「Migration Toolkit for Virtualization」(MTV)が活用されている。これによって、既存の業務プロセスへの影響を最小限に抑えつつ、安全かつ迅速な移行手順が確立された。すでにストレージインフラの導入は完了しており、2026年5月時点では数百台のVMを対象としたワークロードの順次移行が進められている。
将来的なAIツール活用を見据えれば、システムの拡張性の確保は避けられない。Alior Bankは今回の刷新によって、費用増の呪縛から解放されるだけではなく、アジャイル型開発を実現する盤石なシステムを手に入れた。今後は、銀行の根幹を成すコアバンキングシステムや顧客管理システムも、この一元化されたシステムに移行させる計画だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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