終わらない「差し戻し」を断つ自己解決の仕組み
「マニュアル配布」の限界に直面 立命館が実現した“改修ゼロ”のAI支援導入
業務システム導入後に必ず発生する入力不備と、膨大な差し戻し作業。マニュアル整備では防げないこの悪循環を断つため、立命館が「システムを改修せずにリアルタイムチェックを実装」した手法を紹介する。
新しい業務システムを導入した際、情報システム部門や管理部門が直面する最大の壁が「現場の入力不備」だ。
学校法人立命館も、同様のジレンマを抱えていた。同法人は中期計画の下、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として購買管理システム「Coupa」を導入した。しかし、システムの利用頻度が低い教職員にとって、複雑な申請項目の理解は難しかった。その結果、必須書類の添付忘れや項目間の不整合といったミスが多発することになる。
従来のようにマニュアルを配布し、システム改修で入力制限をかけるだけでは、このヒューマンエラーは防ぎ切れなかった。その結果、事務局の担当者が目視で全件チェックし、個別に修正依頼を出すという「終わらない差し戻しのループ」に陥り、業務全体の停滞という重い代償を払っていた。
この不毛な作業から抜け出すため、立命館が選んだのは「職員にその場でミスに気付かせ、自己解決を促す」というアプローチだった。既存のCoupa本体には一切手を加えず、いかにして不備検知機能を実装したのか。
システムに手を加えず、職員に「自己解決」してもらう仕掛け
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AIツールによる業務効率化
立命館は、教職員による購買申請業務における入力不備の削減を目的に、生成AIを活用した業務支援システム「Techtouch AI Hub」を導入した。2026年6月18日、同サービスを提供するテックタッチが発表した。CoupaでAI機能が入力内容をリアルタイムに解析し、不備をその場で通知する仕組みを構築した。申請者の自己解決を促すことで、事務局のチェック負担軽減と申請者の利便性向上を推進する。
立命館は、中期計画「学園ビジョンR2030」に基づき、DXによる教育・研究・経営の高度化を進める一環として、支出管理システム「Coupa」の運用を開始した。しかし、申請業務を行う頻度が低いユーザーも多く、申請項目の理解が定着しにくいため、必須書類の添付忘れや項目間の不整合が多発していた。従来のマニュアル提供やシステム改修ではこうした不備を防ぎ切れず、システム利用頻度の低さに伴う入力不備の多発と、それに伴う事務負担の増加が顕在化していた。この結果、事務局による目視チェックの負担が増大し、修正依頼のやりとりによって業務全体の停滞を招いていたことが課題となっていた。
選定に当たり、既存システムを改修することなく画面上で直接AI機能による支援が可能な点を評価し、同製品を採用した。本体に手を加えないため短期間で高度な不備検知機能を付加できることや、入力中の内容をAI機能が即座に解析し、画面上の吹き出しで修正内容を提示できるリアルタイムな利便性が決め手となった。
運用開始から2週間で、AI機能による入力支援やナビゲーションの利用回数は1日平均100回を越えた。画面上で適切な入力を促すことでユーザー自身がその場でミスを修正するサイクルが確立し、受付部署から申請者への問い合わせや差し戻しの工数削減につながっている。
立命館の中山氏は、「既存の業務フローを壊さずに生成AIへの自然な入り口を提供できる点が非常に魅力的だった。申請前のAIチェックによって、ユーザーが都度マニュアルを参照することなく修正を行うことができ、職員の自己解決率がデータとして明確に向上したことは大きな成果だ」とコメントしている。
今後は、プロンプトの継続的改善を進めるとともに、他業務領域への展開も視野に入れる。長期的にはOCR機能を活用し、添付されたPDFの内容とシステム上の入力値の不整合を自動抽出する機能の実装も検討する予定で、点検に最も時間を要している添付書類不備のチェックを段階的に自動化することを目指す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「立命館、生成AIで購買申請の不備をリアルタイム解消 差し戻し工数削減へ」(2026年6月20日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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