Salesforceで収益管理基盤を構築
「営業・契約・経理で数字が合わない」 ユニファが年3000時間削れた訳
保育総合ICTサービス「ルクミー」を提供するユニファは、データ基盤を導入し、商談から契約、請求までのデータをSalesforce上で一元化した。その結果、年間3000時間超の業務削減を実現した。
営業部門が管理する商談金額と、契約部門が扱う受注金額、経理部門が確認する請求金額が一致しない――。複数のシステムにデータが分かれている企業では、数字の差異を調べるだけで多くの時間を費やすことがある。
保育総合ICTサービス「ルクミー」を提供するユニファは、商談から契約、請求までのデータを一元的に管理する収益管理基盤を構築した。オプロの収益管理プラットフォーム「ソアスク」を導入し、基幹システムとして利用する「Salesforce」上で各データを連携させた。
その結果、営業、契約管理、請求の各部門を合わせて、年間3000時間以上の業務を削減した。単なる作業時間の短縮だけでなく、従業員が同じ前提の数字を見て、営業活動や経営判断に利用できる環境を整えたという。特にユニファは、保育業界ならではの事情から、契約・請求管理が複雑になっていたという。
保育業界“ならでは”の事情とは
ユニファは、保育士不足や業務過多といった保育現場の課題解決を目的に、保育総合ICTサービス「ルクミー」を展開している。
ルクミーでは、園児の睡眠中の状態を確認する午睡チェックセンサーなどのハードウェアをSaaS(Software as a Service)型で提供するほか、保育施設で撮影した写真を販売するフォト事業なども手掛ける。
同社の契約・請求管理が複雑になる理由は、大きく2つある。
1つ目は、サービスのプランやオプション、キャンペーン、割引によって課金条件が変わることだ。施設の状況や契約内容に応じて機能を追加する場合もあり、契約ごとの料金体系が複雑になりやすい。
2つ目は、自治体ごとに契約や請求の条件が異なることだ。保育施設では自治体の補助金を利用してサービスを導入するケースが多く、契約期間や支払い方法、請求書などの記載内容を自治体の要件に合わせる必要がある。施設の統廃合に伴い、契約内容を途中で変更することもある。
課金条件と契約実務の両方が複雑になるほど、複数のシステムに分かれたデータを人手でつなぐ負担は大きくなる。
商談、契約、請求が別システムに分断
ソアスクの導入前、ユニファは商談情報をSalesforce、契約・受注情報を別の業務ツール、請求情報を会計システムで管理していた。
それぞれのシステムを利用する担当部門も異なり、商談から請求までのデータを一貫して確認することが難しかった。
例えば、営業担当者が管理するSalesforceの商談情報には、具体的な見込み金額が十分に登録されていなかった。そのため、担当者は商談金額ではなく、訪問や連絡などの行動目標を中心に営業活動の優先順位を決めていた。
商談金額、契約金額、請求金額に差異が生じた場合も、どの段階で数字が変わったのかを追跡する仕組みがなかった。担当者は複数のシステムを確認して数字を照合し、原因を特定する必要があった。
解約率や顧客単価といった経営指標の算出も属人化していた。複数の業務ツールを利用する権限と業務知識を持つ一部の管理職が、各システムからデータを集め、スプレッドシートでクロス集計してレポートを作成していたという。
個人がそれぞれの方法で抽出、加工したデータを会議に持ち寄るため、集計期間や対象顧客などの前提が食い違うこともあった。同じ指標について話していても、参加者が見ている数字が異なる状態だった。
Salesforce連携機能の廃止を機に刷新
ユニファが管理システムの刷新を検討し始めたのは2023年ごろだ。それまで使用していたサブスクリプション管理ツールについて、Salesforceとの連携機能を廃止する方針が示されたことがきっかけだった。
同社は、Salesforceの画面から見積もり、契約、請求に関するデータを扱える点を評価していた。連携機能がなくなれば、従来の業務を維持することが難しくなると判断した。
スプレッドシートを使った管理も検討したが、契約内容を変更する際に過去の履歴を参照したり、複雑な請求条件を継続的に管理したりすることは困難だった。そのため、新たなサブスクリプション管理システムを導入する方針を決めた。
製品の専門性だけでなく「現場で使えるか」を重視
製品選定では、Salesforceとの親和性を第一の条件として、複数のサービスを比較した。
候補には、統制や決済機能に強みを持つ専門性の高い製品もあった。しかしユニファは、機能の豊富さだけでなく、営業担当者などが日常的なSalesforceの操作の中で利用できるかどうかを重視した。
複雑な課金条件やプラン構成について、ベンダーと相談しながら設定を詰められる柔軟性も評価した。既存システムからのデータ移行費用を含めても予算内に収まり、投資効果を見込めることからソアスクを採用した。
導入時には、大量のデータを処理できるか、短期間で移行を完了できるかが懸念となった。オプロからデータ移行ツールの提供などの支援を受け、予定したスケジュール内で移行を終えたという。
見積もりから請求まで数字を追跡可能に
ソアスクの導入後、ユニファは商談時の見積もりから契約、請求までのデータをSalesforce上で一貫して確認できるようになった。
契約金額や請求金額に差異が生じた場合は、最初に作成した見積もりまでさかのぼって数字を照合できる。差異がどの段階で発生したのかを特定しやすくなり、その後の修正や再発防止策も検討しやすくなった。
商談情報に見込み金額がひも付いたことで、営業担当者の動き方も変わった。単純な行動回数だけでなく、商談金額や受注可能性を踏まえて、対応する案件の優先順位を判断できるようになった。
営業担当者は、自分が担当する園や施設の契約状況や請求金額をSalesforce上で確認できる。マネジャーも、個人が作成したスプレッドシートではなく、共通のレポートを見ながら営業状況を確認できるようになった。
解約率や顧客単価といった指標も、特定の管理職だけに頼らず、Salesforceのレポートから取得できる。データの抽出条件や集計方法が統一されたことで、会議の参加者が同じ前提の数字を使って議論できる体制が整った。
契約書の作成や承認作業も効率化
データの一元化は、契約関連の作業削減にもつながった。
以前は、1つのサービスやオプションごとに別の契約として扱っていたため、同じ顧客との取引でも契約書が複数枚になる場合があった。電子契約サービスによる送付も複数回必要だった。
現在は契約情報をまとめて管理できるようになり、契約書の作成や送付にかかる工数を削減した。承認フローもSalesforce上で完結する。
別の業務システムに残っていた反社会的勢力の確認などの業務についても、統合を進めている。こうした改善を合計すると、営業、契約管理、請求の各部門で、年間3000時間以上の業務削減効果が出ているという。
データ基盤の整備をAI活用の前提に
ユニファは今後、一元化した収益データをAI活用にもつなげる考えだ。
同社は既に、過去の写真や保育日誌からレポートを自動生成する機能や、音声を活用したサービス開発など、保育ICT製品へのAI導入を進めている。
社内業務では、見積もりの作成時に、過去の受注データなどを基に「この提案を追加すると受注確度が上がる」「必要な提案項目が不足している」とAIが営業担当者に提示する仕組みなどを構想している。
ただし、AIが有効な提案をするためには、商談、契約、請求のデータが共通のルールに基づいて整理され、数字の関係を追跡できる必要がある。
ユニファの事業企画部システム企画課で課長を務める佐藤和徳氏は、AIが業務システムからデータを取得して処理する時代には、まず人が理解できる状態でデータの一貫性を確保することが最低限の土台になると説明する。
業務システムの統合では、画面やツールを1つにまとめることが目的になりがちだ。しかしユニファの事例が示すのは、部門間で数字の定義と前提をそろえ、見積もりから請求までの経緯を追跡できる状態をつくることの重要性だ。
データの分断を解消すれば、手作業を減らすだけでなく、現場の判断や部門間の議論、将来のAI活用を支える収益管理基盤にもなり得る。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「ユニファ、収益管理基盤構築で年間3000時間超の業務を削減」(2026年7月20日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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