ミッションクリティカルインフラのクラウド移行
オンプレ保守切れの恐怖 地銀協が次期インフラに「Oracle Cloud」を指名した理由
オンプレミスインフラの保守切れに際して、安易に機器更新で延命すれば運用費用の増大という負債を抱えかねない。地銀61行の厳しい要件をクリアし、持続可能なシステムに移行したプロジェクトの全容に迫る。
全国地方銀行協会が2004年から運営し、会員である地方銀行61行が利用する信用リスク情報統合サービス「CRITS」。財務・信用情報やスコアリングモデルを一元化して提供するこの金融機関の根幹システムにおいて、長年稼働してきた従来のオンプレミスインフラが保守終了(EOSL:End Of Service Life)のタイムリミットを迎えていた。
ミッションクリティカルなシステムの刷新において、最も無難な選択肢は既存インフラの単純なリプレースだ。しかし、セキュリティ要件が厳格化する中で現状維持を選べば、将来的な運用費用の増大、手作業による運用の肥大化や作業ミスのリスクという技術的負債を抱え込むことになる。
そこで全国地方銀行協会は、厳格なセキュリティと安定性を維持しつつ、費用抑制と将来の拡張性を備えた「持続可能なITインフラ」への移行を決断し、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の採用に踏み切った。
なぜ金融機関の厳しい要件に対し、クラウドインフラとしてOCIを選んだのか。決め手になったのは、現場の運用負荷を劇的に下げるためのアーキテクチャ設計にあった。手作業による構築ミスを未然に防ぎ、作業効率を飛躍的に向上させた移行プロジェクトの全容を紹介する。
「脱オンプレミス」を成功に導いた運用自動化設計
全国地方銀行協会は、地方銀行61行が利用する信用リスク情報統合サービスCRITSのITインフラを刷新した。従来のオンプレミスインフラの保守終了に伴い、OCIを採用した。2026年7月21日、構築と運用支援を担う日鉄ソリューションズが発表した。セキュリティと安定性を確保しながら、運用費用の削減や管理の自動化を図る。
CRITSは全国地方銀行協会が2004年から運営するサービスで、加盟行の信用リスク管理を支える。財務・信用情報データベース、財務スコアリングモデル、信用VaR(バリューアットリスク)モデルの3機能を統合して提供している。従来のオンプレミスインフラの保守終了期限が迫る中、リプレースや運用に伴う費用と手間の抑制、拡張性を備えたITインフラへの移行が課題となっていた。
全国地方銀行協会は、金融機関でのシステム構築実績やクラウド移行のノウハウを評価し、日鉄ソリューションズをパートナーに選定した。設計から構築、移行、運用までを一括して支援する体制を構築した。
新しいITインフラでは、データベースサービスである「Base Database Service」を活用し、自動バックアップ機能によって高信頼性の確保と運用負担の軽減を両立させた。運用面では、日鉄ソリューションズの運用支援サービスである「emerald for OCI」を導入した。標準化した運用手法を適用し、短期間かつ低予算での立ち上げを実現した。併せて、インフラ構築の自動化手法であるIaC(Infrastructure as Code)ツール「Terraform」を導入し、手作業によるミスの防止と作業効率の向上を図った。
今回のクラウド移行によって、高度なシステム監視や障害対応、容量管理の自動化を実現した。サーバリソースの最適化と運用効率化を進め、インフラと運用を含めた総費用の削減を見込む。拡張性の高いインフラを整えたことで、将来的な利用拡大や機能追加にも状況に応じて対処する姿勢だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「全国地銀協、信用リスク基盤『CRITS』のクラウド刷新にOCIを採用」(2026年7月21日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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