機能ごとの“ツール乱立”に終止符
セガサミーHDがGoogleのセキュリティサービスで“ログに埋もれる現場”を救う
少人数体制のセキュリティ運用は特定の担当者に負担が集中しがちだ。運用の属人化とシステムの老朽化というジレンマを抱えていたセガサミーHDは、この状況をどう解消したのか。
総合エンタテインメント企業としてグローバルに事業を展開するセガサミーグループ。未発売のゲームタイトルの開発データから遊技機の技術情報、ビジネスノウハウ、ユーザー情報まで、同社が保有する機密情報は多岐にわたる。外部への漏えいが許されない厳しいセキュリティ要件に適合するため、コーポレートITを担うセガサミーホールディングス(以下、セガサミーHD)は、各領域でその時々に最適な製品を個別に導入するアプローチを採ってきた。
しかし、この「個別最適」の方針は、機能ごとに管理ツールが乱立する事態を招き、運用担当者の大きな負担になっていた。ログ管理の中核を担うオンプレミスのSIEM(Security Information and Event Management)システムの老朽化も、深刻な課題だった。蓄積されるログの量が膨大になり、全てを保存して分析することが不可能になっていたのだ。クラウド型システムへの移行も検討されたが、費用の増大が懸念され、根本的な見直しは後回しにされていた。
転機が訪れたのは2024年のことだ。各国の拠点で個別に管理されていたIT施策を、セガサミーHDが統括する方針が決定した。これを機に、乱立するツールを集約し、グローバルで管理・運用できる新たなセキュリティインフラの導入に踏み切ったのだ。
多額の費用負担を回避しつつ、深刻な属人化をいかにして排除し、グローバルでの能動的なセキュリティ対策を可能にしたのか。
膨大なログを持て余す「蓄積型」からの脱却
旧来のオンプレミスシステムは、ログを集約してオンラインで閲覧可能な状態を維持するという思想で構築されていた。しかし、システムの規模拡大に伴ってログが爆発的に増加し、必要なログを全て取り込めず、期待する分析ができない状態が常態化していた。
新たなセキュリティシステムとして複数のクラウド型ツールを比較検討したセガサミーHDが選択したのは、Googleが提供するクラウド型SIEM・ログ分析ツールの「Google Security Operations」だ。
選定の決め手は、利便性の高さとログのインテリジェントな活用を可能にする仕組みにある。ログをシステムに蓄積するだけで、標準機能が自動的に脅威を検出する。カスタマイズ性の高いダッシュボードは、グローバル規模での運用標準化を促進する上で大きな利点となった。検討時の比較において、費用面での優位性が高かったことも導入を後押しした。
パートナー企業の伴走やGoogleの専門チームの手厚い支援を受け、2024年7月からの価値実証(PoV)、秋のレビューを経て、2025年4月に国内での本格的な活用が開始された。2026年7月時点では旧システムとの並行運用が続いているが、年内には完全な切り替えが完了する見通しだ。
AIの支援による属人化の排除と運用高度化
新たなシステムの導入は、サイバー攻撃の検出や分析を専門に担うSOC(Security Operations Center)の運用体制にも変革をもたらしている。セガサミーHDのSOCは少人数体制であり、特定の担当者に業務やノウハウが集中する属人化が課題になっていた。繁忙期や担当者の体調不良時に、監視や分析業務が停滞するリスクを抱えていたのだ。
この課題を解決する鍵となったのが、AI技術の活用だ。新システムでは、Googleが開発した生成AI「Gemini」が独自のアラートルール作成などの作業を支援する。これによって、専門的な知識を持たないスタッフでも、脅威や侵害の兆候に気付き、迅速に処理することが可能になった。
監視や分析の工数をチーム全体に分散できるようになったことで、属人化の問題は解消に向かっている。さまざまな従業員がSOCの運用に関わることで、SOC業務が「自分ごと化」されるという副次的な効果も生まれている。今後はチケット管理ツールとGoogle Security Operationsを連携させ、アラートの発生から担当者への通知までを一気通貫で自動化する計画だ。定常的な負担を低減し、本来注力すべき高度なセキュリティ対策の議論に人手を割ける体制を構築する。
脅威インテリジェンスの民主化による能動的防衛
運用体制の変革は、最新のサイバー攻撃手法や無害化の知見を提供する脅威インテリジェンスでも進んでいる。セガサミーHDが以前利用していた脅威インテリジェンスは、機能面では優れていたものの、ライセンス料が高額だった。そのため、各拠点に1ライセンスずつしか割り当てることができず、最新の脅威情報にアクセスできる人材がごく一部に限られるというジレンマに陥っていた。
この制限を打破するため、セガサミーHDはシステム刷新と並行して脅威インテリジェンスサービス「Google Threat Intelligence」を採用した。これによって、従来のサービスと同じ予算規模でありながら、各拠点のセキュリティ担当者全員にアカウントを付与することが可能になった。
情報アクセスの障壁が取り払われたことで、現場の担当者自身が自社の脅威情報をプロアクティブに確認する体制が整った。他システムとのAPI連携が容易な点も、業務効率化に寄与している。受け身の監視にとどまらない、能動的かつ機動的なセキュリティ対策が、現場レベルで期待されている。
世界80拠点への展開と製品開発への波及
国内での本格展開が進む中、セガサミーHDはすでに次の目標を見据えている。北米や欧州など、世界中の約80の海外拠点に対し、新たなセキュリティシステムを統一的に展開する計画だ。
エストニアの拠点では今回の全社的な取り組みに先行して導入を進めており、実践的な運用方法や細かいチューニングのノウハウについて、グループ内で積極的な情報共有が始まっている。グローバルに広く展開されており、どの地域でも標準的に利用できる汎用(はんよう)性が、各国のエンジニアに新しいツールを抵抗なく受け入れてもらうための助けになっているという。
今後は、外部から侵入可能な自社のIT資産を可視化・管理するASM(Attack Surface Management)や、クラウドネイティブなシステムを包括的に保護するセキュリティツール「Wiz」などを積極的に取り入れていく方針だ。強固なセキュリティインフラの確立を土台として、製品開発業務の生産性向上や、グローバル規模でのサービス品質の底上げにつなげる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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