サイバー攻撃の高度化と深刻な専門人材不足を背景に、セキュリティ監視を外部委託する「SOCaaS」への注目が高まっている。本稿は、主要なSOCaaSベンダー5社の特徴と販売モデルを整理し、選定基準を提示する。
「24時間365日の監視体制が必要なのは分かっている。だが、動ける人間がいない」。多くの情報システム部門(情シス)責任者が抱えるこの悩みは、もはや自社努力だけで解決できる段階を超えている。セキュリティ専門家の採用市場は加熱し、たとえ採用できたとしても、最新の脅威を追い続ける教育コストが組織に重くのしかかる。
こうした「運用の限界」に対する有力な解答が、SOC as a Service(SOCaaS)だ。しかし、一口にSOCaaSと言っても、ベンダーによって得意とする領域や、情シスとの関わり方はさまざまだ。単なる技術スペックの比較で選んでしまうと、「結局、自社の担当者がアラート対応に追われる」という本末転倒な結果を招きかねない。
本記事では、世界的に評価の高いSOCaaSプロバイダー5社をピックアップし、各社の特徴を整理する。自社のリソース状況に照らして、どのベンダーが「武器」になるのか、検討するための材料となる。同時に、選定時に見落としがちな「販売モデルとサポートの関係」という、実務上のクリティカルなポイントについても解説する。
SOCaaSの評価において、多くの情シスが注意すべきポイントがある。「どれだけ多くのアラートを検知できるか」ばかりに目を向けてしまうことだ。しかし、現代のSOCaaSに求められるのは、単なるモニタリングや初期対応にとどまらない。
高度なサービスを提供するベンダーは、脅威の予兆を捉えるプロアクティブなモニタリングに加え、インシデント発生時の詳細なフォレンジック調査や、復旧に向けた具体的なアクションまでを支援範囲に含めている。評価時には、以下の3つの能力が自社の求めるレベルに達しているかを確認する必要がある。
これらの能力を踏まえ、主要な5つのベンダーがどのようなアプローチをとっているかを見ていく。
Arctic Wolfは、独自のプラットフォームとサービスを組織に提供する。その販売戦略には明確な特徴がある。同社は100%チャネルベースの販売モデルを採用しており、サービスは専らマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)などのパートナーを経由して提供される。
このモデルの強みは、情シスが既に信頼関係を築いている既存の保守ベンダーやSIerを通じて、Arctic Wolfの高度な監視能力を導入できる点にある。自社で直接ベンダー管理を実施する手間を省きつつ、既存のパートナーによる手厚いフロントサポートを受けたい企業に適している。
エンドポイントセキュリティ(EDR)に強みを持つCrowdStrikeは、SOCaaSの領域でも存在感を示している。同社は、中堅・中小企業から大規模エンタープライズまで幅広くカバーしており、販売ルートも多角的だ。
大規模企業では直接販売を進め、密接な連携体制を構築する一方で、チャネルパートナーやMSSPを通じた提供も並行して推進している。世界最大級の脅威インテリジェンスを活用した監視能力は折り紙付きであり、特に「とどめる」能力を重視する情シスにとって、同社の直接的な支援を受けられる選択肢は魅力的だ。
Rapid7は、脆弱(ぜいじゃく)性管理(InsightVM)やSIEM(InsightIDR)など、幅広い製品群を持つ強みを生かしてSOCaaSを展開している。同社の特徴は、ターゲットとする顧客層の広さと、それに合わせた柔軟な販売体制にある。
大規模組織から中小企業(SMB)までを対象に、直接販売とMSSP経由の販売を使い分けている。自社のIT資産全体の脆弱性を把握した上で、重点的な監視を実施したいと考える情シスにとって、Rapid7の統合的なアプローチは運用の効率化に寄与する。
SentinelOneは、人工知能(AI)を活用した自律型セキュリティを武器に成長を続けている。同社のSOCaaS提供モデルは、大規模企業向けにはサブスクリプションベースの直接販売を主軸としている点が特徴的だ。
一方で、中堅以下の層では、パートナーやMSSPを通じた提供を実施している。サブスクリプションモデルによる直接契約は、コストの透明性が高く、ベンダーの最新機能をダイレクトに運用に反映させたい大規模組織の決裁者にとって、予算獲得の際の説明のしやすさというメリットがある。
Sophosは、2025年のSecureworks買収を経て、MDR(Managed Detection and Response)およびSOCaaSの能力を飛躍的に高めている。同社の基本戦略は「パートナーファースト」であり、チャネルパートナーを重視した販売プログラムを展開している。
ただし、特筆すべきは、大規模エンタープライズでは直接的なエンゲージメントも行う点だ。Secureworksが持っていた高度なインシデント対応能力がSophosのポートフォリオに加わったことで、パートナーを通じた「身近なサポート」と、グローバルレベルの「高度な解析力」を両立させたい組織にとって、有力な候補となっている。
海外の有力ベンダー5社を見てきたが、日本の情シスが選定する際に最も考慮すべきは「責任の境界線」だ。SOCaaSを導入したからといって、社内のセキュリティ責任がゼロになるわけではない。
特に、Arctic WolfやSophosのようにパートナー(MSSP)が介在する場合、「誰が最後の判断を下すのか」を契約前に明確にする必要がある。ベンダーが異常を検知し、MSSPがそれを精査し、最後に自社の情シスが「遮断」のはんこを押す――このプロセスに時間がかかっては、SOCaaSの価値は半減する。
明日はわが身となるサイバー攻撃に、情シスが今すぐ確認すべきは、自社のセキュリティ運用における「判断のボトルネック」だ。そこを埋めてくれるのが直販モデルなのか、それとも伴走型のパートナーモデルなのか。自社の組織文化に照らした検討が求められている。
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