大容量ファイルと分散NASが生む問題
拠点NASの分散管理が限界に ID権限設定を5分に縮めた第一貨物の決断
拠点ごとに乱立するNASと、部門ごとにばらばらな大容量ファイルの送信方法。放置すれば統制が効かず、情報漏えいや管理者の負担増を招く。全国71カ所の事業所を展開する第一貨物は、この課題をどう解決したのか。
企業のファイル共有システムにおいて、拠点や部門ごとにファイルサーバやNASが乱立している状態は珍しくない。しかし、こうした「分散管理」はIT部門にとって悪夢の始まりだ。人事異動や組織改編のたびに個別のユーザーアカウントの作成や権限付与に忙殺され、誰がどのフォルダにアクセスできるのか、全容を把握できなくなるからだ。社外とのやりとりにおいて「メール添付の容量制限」の壁に直面した現場の従業員が、無料のファイル転送サービスを勝手に使い始めるリスクも潜んでいる。
総合物流企業である第一貨物も、こうした課題に直面していた。同社は全国71カ所の事業所を展開しており、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)4台を分散運用し、個別設定でアクセス権限を管理していた。約1500件分のIDに対する権限付与や設定の確認作業に膨大な時間を要する上に、ファイルの削除や移動が発生した際の操作履歴の特定にも手間取り、管理者の負担は限界に達しつつあった。
そこで第一貨物は、社外ファイル共有の利便性向上にとどまらず、社内の権限設定の在り方を含め、ファイル運用全体を根本から見直す決断を下した。移行に際しては、オンプレミスシステムにあった約10TBのデータから不要なファイルを削除し、約6.5TBに対象を絞り込んだ。どのように「5分以内の権限設定」と「安全な共有」の両立可能なシステムを構築したのか。
「開いたままのファイル」がデータ移行を阻む
第一貨物は、クラウドファイルサーバ「Fileforce」を全社システムとして本格運用に移行した。ファイルフォースが、2026年8月6日に発表した。従来はNAS4台で分散運用していたが、これを一元管理へと集約し、約1500件のIDを保有するファイル共有システムを再構築した。これによって管理者の運用負荷を軽減するとともに、社内外での大容量ファイルのやりとりの円滑化を図る。
第一貨物は1941年設立の物流企業で、全国71カ所の事業所を展開し、貨物自動車運送事業をはじめとする総合物流サービスを手掛けている。同社は従来、事業所や部署ごとにNAS4台を分散運用し、個別設定でアクセス権限を管理していた。利用範囲の拡大に伴い、権限付与や設定の確認作業に時間を要していた他、ファイルの削除や移動が発生した際の操作履歴の特定にも時間を要し、管理者の作業負担が課題となっていた。社外とのやりとりでメール添付の容量制限に直面し、部門ごとに異なる方法でファイルを授受する場面もあった。
課題の解消に向けて複数の企業向けクラウドストレージを比較検討した結果、Fileforceの採用を決めた。採用に当たっては、「Windows」の標準ファイル管理ツールである「エクスプローラー」に近い操作感で現場に展開しやすい点や、標準搭載のランサムウェア(身代金要求型マルウェア)対策機能、容量課金でユーザー数無制限という料金体系を評価した。多拠点かつ利用者数が多い第一貨物の運用形態に適合すると判断した。
移行に当たっては、オンプレミスシステムにあった約10TBのデータから不要なファイルを削除し、約6.5TBに対象を絞り込んだ。業務への影響を抑えるため、データ転送ツールを用いて週末や夜間に段階的な移行を進めた。
Fileforceの運用開始によって、従来分散していたファイル運用が一元化され、権限付与作業はWeb管理画面で完結するようになり、依頼から5分以内で付与可能になった。詳細な操作ログの把握が容易になり、問い合わせ時の初動対処や状況確認の負荷が軽減した。実務面では共有リンクの活用によって大容量ファイルをメール添付せずに受け渡しできるようになり、営業部門での顧客対応が円滑化した他、有料オプション「IntelliSearch Pro」の全文検索機能で必要な情報へ素早くアクセスできる体制も整った。
第一貨物 情報システム部長の田中氏は、「大容量ファイルをメール添付せずに受け渡しできるようになり、社内外のやりとりがスムーズになった。特に営業部門での顧客対応の円滑化につながっている。検索レスポンスも速く、実務で使いやすい」と評価している。今後は万が一の障害や攻撃に備えた安心感を維持しつつ、社内の情報活用の効率向上を進める方針だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「第一貨物、ファイル基盤の一元化で権限設定を5分以内に短縮 約1500ID規模で運用再構築」(2026年8月7日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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