約8割が複数業務を兼務
責任感が強い人ほど抱え込む バックオフィス属人化が解けない理由
ITベンダーのアイルは、バックオフィス業務の担当者に実態を聞いた調査結果を発表した。結果からは、属人化を誘発、固定する業務環境の課題が浮き彫りになった。
ITベンダーのアイルは2026年8月18日、販売・在庫管理など売り上げに関わるバックオフィス業務の担当者を対象にした「バックオフィス業務実態調査」の結果を発表した。調査は2026年6月、売上管理や在庫管理、受発注管理、請求管理、営業事務、データ入力などを担当する587人を対象に実施した。
調査によると、回答者の87.2%が「特定の担当者しか分からない業務がある」と答え、59.4%は「現在担当している業務の引き継ぎは難しい」と回答した。
調査結果からは、バックオフィス業務の属人化に危機感を抱く担当者の姿が浮かび上がる。それでも現場では、特定の担当者に仕事が集中する状態からなかなか抜け出せない。何が背景にあるのか。
なぜバックオフィスは「その人にしか分からない」に陥るのか
属人化の一因として考えられるのが、1人の担当者が幅広い業務を抱えている実態だ。
調査では、担当している業務を尋ねた。その結果、「データ入力」が38.5%で最も多く、「営業事務」が33.6%、「在庫管理」が32.2%、「売上管理」が30.3%、「請求管理」が30.2%、「受発注管理」が28.8%と続いた。
さらに、回答者の78.7%は、複数の業務を兼務していると回答した。データ入力だけでなく、受発注や在庫、売り上げ、請求など複数の業務を1人で担当しているケースがあった。
バックオフィス担当者の人数を聞いた質問では、「11人以上」が26.1%で最も多かった一方、「1人で担当している」と回答した人も6.8%いた。少人数で幅広い業務を回している場合、目の前の処理を優先するあまり、手順の標準化やマニュアル作成、他の担当者への引き継ぎまで手が回りにくい状況も考えられる。
担当者が不在になると「顧客対応が遅れる」
属人化は、担当者個人の負担だけの問題ではない。調査では、担当者が不在になった場合に起きる影響を尋ねた。その結果、「顧客対応の遅延」が33.6%で第1位だった。「データの保管場所が分からない」が29.8%、「在庫状況が分からない」が27.9%と続いた。
さらに、回答者の75.0%は「バックオフィス業務が停止すると企業活動に影響がある」と回答した。バックオフィス業務の担当者が休暇を取ったり退職したりした場合、社内業務が滞るだけでなく、顧客対応や在庫管理といった事業活動にも影響を及ぼす恐れがある。
紙やFAXも残る 情報が担当者の頭の中に集まりやすい環境
業務で使うツールにも、属人化を生みやすい要因が見える。調査では、「業務でよく利用するツール」についても聞いた。その結果、「メール」(61.3%)、「表計算ソフト」(60.5%)、「紙」(48.0%)、「FAX」(35.4%)が並んだ。
「日常業務でよく行っている業務」を尋ねたところ、「電話・メール対応」(58.9%)、「書類作成」(50.1%)、「Officeソフトへのデータ入力」(47.4%)が上位に並んだ。「1日のうち最も時間を使う業務」を聞いた結果、「専用システムへのデータ入力」が16.2%、「Officeソフトへのデータ入力」が13.8%、「Excel・CSV加工」が12.1%だった。
メール、表計算ソフト、紙、FAX、専用システムと複数の手段を使い分けていると、情報の所在や処理方法は分散しやすい。結果として、「どのファイルを見ればいいのか」「どの順番で処理するのか」といった業務知識が担当者個人に蓄積しやすくなり、属人化が助長される可能性がある。
月末や決算期に仕事が集中
業務量の波も、属人化を解消しにくくする要因になり得る。
「業務が集中するタイミング」を尋ねたところ、「月末・月初」が48.9%で最多だった。「繁忙期」が39.7%、「決算期」が36.6%、「棚卸時」が24.9%と続いた。
「業務量の波の大きさ」を聞いた質問では、「非常に大きい」が27.7%、「やや大きい」が42.5%で、合わせて70.2%の回答者が「業務量の波は大きい」と認識していることが分かった。
繁忙期に処理すべき仕事が一気に増えれば、業務を別の人に教えたり、手順を整理したりするよりも、「分かっている人が自分でやった方が早い」という判断になりやすい。その積み重ねによって、さらに特定の担当者へ仕事が集中する悪循環に陥る可能性がある。
それでも仕事を抱える理由は
一方、調査からは、バックオフィス担当者が自身の仕事に強い責任感を持っていることも分かる。
調査では、「バックオフィス業務は『売り上げを支える仕事』だと思うか」聞いた。その結果、「そう思う」と回答した人は86.0%に上った。
「業務のやりがい」を感じる場面を聞いたところ、「ミスなく回せた時」が40.0%で最も多かった。「感謝された時」が30.3%、「現場に頼られること」が28.4%、「業務改善できた時」が27.4%、「売り上げを止めないこと」が26.1%と続いた。
これらの結果からは、「自分がミスなく処理しなければならない」「現場から頼られた仕事には応えたい」「自分が業務を止めてはいけない」と考える担当者の姿がうかがえる。
属人化は、担当者が意図的に仕事を手放さないから起きるとは限らない。むしろ、企業活動を止めないために目の前の仕事を確実に処理し続けた結果、その担当者にしか分からない業務が増えていくケースもありそうだ。
アイル システムソリューション事業部 部長の坂東哲也氏も、バックオフィス担当者が「縁の下の力持ち」として責任感と誇りを持って企業活動を支えていると指摘している。
「頼れる人」に依存しない仕組みが必要
属人化を解消する際に注意したいのは、担当者の責任感そのものを問題視しないことだ。
企業活動を支えようとする意識は、本来は組織にとって重要な力だ。しかし、「その人が頑張れば仕事が回る」という状態を放置すれば、責任感の強い担当者ほど仕事を抱え込みやすくなる。
必要なのは、個人が持つ知識や判断基準、作業手順を可視化し、他の担当者でも同じ業務を遂行できる状態に変えることだ。データの保管場所を統一したり、作業手順を標準化したり、システムによって入力や転記を減らしたりすることも選択肢になる。
「縁の下の力持ち」の責任感に頼って業務を回すのではなく、その知識や経験を組織全体で使える仕組みに変えられるか。バックオフィスの属人化を解消するには、担当者個人ではなく、業務の設計そのものを見直す必要がありそうだ。
本稿は、アイルが2026年8月18日に公開したプレスリリースを基に作成しました。
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