AzureやAWSで本当に安心なのか
脱“海外依存” ガバメントクラウド採択で変わる「国産クラウド」の評価
これまで海外事業者が中心だったクラウドインフラにおいて、国産クラウドが「ガバメントクラウド」に採用された。これを契機に、クラウドインフラを再評価する動きが進んでいる。企業が求める新たな選定基準とは。
クラウドインフラの選定や導入に関与する担当者の間で、システムを海外事業者に依存するリスクを見直す動きが広がっている。ネットアシストとMMD研究所は、2026年7月8日から7月14日にかけて、クラウドインフラの選定・導入関与者500人を対象とした調査を実施した。調査結果によると、勤務先でクラウドインフラを選定する際に「国産クラウドを選びたい」と回答した割合は67.5%に達した。
この背景には、特定の海外事業者に依存することで、海外法制や規制の影響を受ける可能性や、障害発生時に自社でコントロールしにくくなるといった懸念が存在する。
こうした課題を解消する手段として、政府共通のクラウドサービス利用システムである「ガバメントクラウド」における採用実績を持つ国産クラウドへの期待が寄せられている。国産クラウドが持つ具体的な優位性や、企業が選定時に評価している独自の仕組みを調査結果から読み解く。
国が選んだ安全基準
国産クラウドへの支持が高まっている最大の要因は、ガバメントクラウドにおける採用実績だ。これまで海外事業者が中心であったクラウドインフラにおいて、2026年に国産事業者であるさくらインターネットの「さくらのクラウド」が採択された。
国産クラウドとガバメントクラウドの認知者のうち、ガバメントクラウドに国産クラウド事業者が採用されたことを知っている割合は59.3%だった。同認知者全体のうち73.7%が、この採用によって国産クラウドの信頼性が高まると回答している。デジタル庁が求める厳格な技術要件を満たすシステムとして国に評価された事実が、民間企業の選定においても強力な安心材料として機能していることが分かる。
クラウドサービスの認知度を見ると、海外事業者は「Microsoft Azure」が42.4%、「Google Cloud」が41.4%、「Amazon Web Services」(AWS)が36.0%と高い水準を誇る。対して国内事業者は「GMOクラウド」が25.2%、「さくらのクラウド」が24.8%、「FJcloud-V」が24.4%にとどまっており、依然として海外事業者が強い存在感を示している。
クラウドインフラを選定する際に重視される項目としては、「セキュリティ対策の充実度」が40.2%で最多となり、「利用料金・コストの妥当性」の39.2%、「サービスの安定性・可用性」の34.6%が続いた。特定の海外事業者に重要なデジタルインフラを依存し過ぎることで生じるカントリーリスクや、為替変動による費用増大リスクが顕在化しつつある現状が、この結果に反映されている。
海外クラウドインフラへの依存に対する懸念として、「海外法制や規制の影響を受ける可能性があること」が32.6%、「重要なデジタルインフラを海外事業者に依存し過ぎること」が32.0%、「障害や仕様変更が発生した際、自社でコントロールしにくいこと」が30.0%と上位に挙がっている。日本企業が日本国内でデータを管理・運用でき、国内法制度に準拠した運用が可能な国産クラウドの独自性が、これらの課題を解消する手段として再評価されつつある。
国産クラウドに期待する点として、「セキュリティやデータ保護の強化」が47.3%と最も高く、次いで「障害対応やトラブルシューティング体制の充実」が39.9%、「料金・コストの低廉化」が38.9%となった。企業はクラウドシステムに対して、単なるインフラとしての機能だけでなく、導入後の運用から保守に至るまでの手厚い支援体制を求めている。海外事業者と異なり、日本の商習慣やコミュニケーションに最適化された迅速な障害対応が可能である点は、国産事業者の大きな差別化要因となっている。
一方で、課題も残されている。国産クラウドを導入するだけでは、全ての問題が解決するわけではない。安定した運用やセキュリティ対策、障害発生時の迅速な対処を含め、安全なシステムを維持することが不可欠だ。ネットアシストは、「クラウド選定において費用だけでなく、セキュリティや安定した運用を含めた総合的な価値が判断基準になっている」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ -
製品資料
[ペンタセキュリティ株式会社] PCI DSS v4.0.1対応の負担を軽減 審査工数とコストを削減する実践的アプローチ -
製品資料
[ペンタセキュリティ株式会社] いま「次世代WAF」が必要とされる理由 -
市場調査・トレンド
[ServiceNow Japan合同会社] 通信事業を次の段階へ引き上げるには? 主要33社の調査に見る成長戦略の勘所 -
製品資料
[ServiceNow Japan合同会社] 運用のサイロ化で連携が進まない、サービスプロバイダーの成長をどう実現する?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
VMware離れの決め手は“機能”以外だった 情シス109人が選んだ新基準と死角は
-
8
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
9
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
10
会計ソフトウェア6製品を比較 自社に合う製品は
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
7
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
8
サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー