複雑な自社開発システムからの脱却
紙書類と手入力の“二重苦”に終止符 17万人を支えるヤマトの人事システム刷新
法改正のたびに発生するシステム改修と拠点間を行き交う膨大な紙書類。約17万人を抱えるヤマトグループが自社開発から脱却し、人事システムで業務の標準化とペーパーレス化を実現した事例を紹介する。
従業員約17万人(2026年3月時点)を抱え、全国に拠点を展開するヤマトグループ。その組織を支える現場や人事部門は、人事労務の維持に手間と時間を費やしていた。自社で開発した人事システムの運用において、労働関連の法改正や社内制度の変更のたびに、システムへの影響調査やプログラムの個別改修を余儀なくされていた。結果として制度変更への適合スピードが鈍化するだけではなく、システムの維持管理費用も膨らむ一方だった。
現場をさらに苦しめていたのが、紙やアナログ的手法による各種申請や照会業務だ。書類の印刷や郵送、回収、仕分けに要する物理的な手間に加え、広範囲にわたる拠点間で書類を往復させる無駄が存在し、組織全体のオペレーションを重くしていた。
こうした構造的課題を打破するために、ヤマト運輸は統合人事システム「COMPANY」の導入を決断した。システムの維持管理にかかる工数を大幅に削減するとともに、徹底したペーパーレス化を推進する構えだ。いかにして複雑化する人事プロセスを解きほぐし、次世代システムに移行したのか。
豊富な標準機能への適合がもたらす保守工数の激減
ヤマト運輸が直面していた最大の課題は、長年の運用によって個別の業務プロセスが複雑化していたこと。法改正や社内制度変更のたびにシステムの改修が発生する状態は、グループ全体での仕組みの標準化や業務変革を推進する上での制約となっていた。
今回採用したCOMPANYは、人事や給与計算、各種申請手続きといった広範な業務を網羅し、企業の複雑な運用に定額保守の範囲内で適合できる豊富な標準機能を備える。ヤマト運輸は、既存のプロセスをシステムに無理に持ち込むのではなく、システムの標準機能に自社の業務プロセスを適合させる「業務の標準化」へとかじを切った。
これによって、社会保険や税制などの制度改正があっても、大規模なシステム開発を伴うことなく、常に最新の機能を利用した円滑な実務運用が可能になる。個別改修から解放された人事部門は、システムの維持管理に費やされていた工数を大幅に削減できる。「事業構造改革に伴う人材の最適配置」や「付加価値を創出する人材の育成・採用」といった、本来担うべき人材戦略の立案と実行に注力できる体制を手に入れる。
もう一つの大きな転換が、スマートデバイスを活用したペーパーレス化の推進だ。これまで拠点間で飛び交っていた紙の申請書は、現場と人事部門の双方にデータの手入力と書類管理という二重の工数を強いていた。
COMPANYでは、各種申請や照会業務をデジタル化し、スマートフォンやタブレットからのアクセスが可能になった。これによって、場所を問わずに従業員が手続きできる環境が整備される。拠点間での書類の往復が解消され、業務効率が大きく向上する。現場における事務負担を最小化することで、従業員が本業であるサービス提供や価値創造により専念できる体制を整える。
人事システムの刷新に当たって、ヤマト運輸がCOMPANYを評価した決め手は、約17万人という国内有数の事業規模における確実な人事労務運用の継続性にある。毎月の膨大な給与計算や各種手続きの処理は、円滑な業務の根幹だ。COMPANYは大規模処理に対して、アクセス負荷に応じた拡張性を備えている。これによって、人事システムを安定稼働できるようになると同社は見込んでいる。
経営構造改革をけん引する事業投資としての展望
今回のシステム刷新について、ヤマト運輸の担当者は「単なるITツールの導入ではなく、ヤマトグループの経営構造改革を人的資本の側面からけん引する極めて重要な事業投資だ」と述べる。
この言葉には、「職場の整備や組織風土の醸成」を掲げるヤマト運輸が、組織の在り方を変革するという意志が込められている。システムの導入を通じて人事業務の標準化・効率化・集約化を進め、そこで生み出された人員や費用を再分配する計画だ。第一線で価値を創出する従業員への投資や、コントラクト・ロジスティクス事業、グローバル事業といった成長領域に振り向ける。持続可能な人事システムの確立は、同社が目指す「お客さまやパートナー、従業員から選ばれ続ける会社」を実現するための強固な土台になる。
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