人とAIを前提にビジネス全体を再設計できるか
エージェント型AIやフィジカルAIは「過度な期待」のピーク期 ガートナーが迫る現場変革
生成AIやロボットの導入だけでは勝てない。ガートナーは人の役割再設計なきAI活用に警鐘を鳴らす。先行企業との構造的な格差を回避し、過度な期待のピークを乗り越えるために情シスが今打つべき一手とは。
「AIを導入したはずなのに、現場の業務プロセスがいっこうに変わらない」。そんな焦燥感を抱える情シス部門のリーダーは少なくない。エージェント型AIやロボット技術が脚光を浴びる一方で、ツールを現場に配備するだけでは投資に見合う成果を引き出せない現実がある。
本記事では、ガートナージャパンが発表した最新のハイプサイクルから、過度な期待のピークを迎えた技術の実態と、先行企業との格差を回避するために企業が着手すべき構造改革の要点を読み解く。
エージェント型AIやフィジカルAIなど7項目がピーク期に
ガートナージャパンは2026年9月2日、2026年の日本の未来志向型インフラテクノロジーのハイプサイクルを発表した。同社が提唱するハイプサイクルとは、技術やアプリケーションの成熟度と普及率を示し、ビジネス課題の解決や新たな機会の獲得にどう寄与するかを可視化したものである。
2026年版では、事業部門を含む企業全体に影響を及ぼす基盤として、エージェント型AIのほか、フィジカルAI、マシンカスタマー、自動運転トラックなどを含む7項目が「過度な期待」のピーク期にあると位置付けられている。
このうちエージェント型AIは、複雑なタスクの一部を自動化し、製造や金融、医療といった多様な業界で業務効率の向上や新サービス創出の検証が進んでいる。ただし同技術は発展途上にあり、全ての業務を自律的に置き換える段階には達していない。現実的な運用形態としては、人間とエージェントが協調しながらタスクを遂行する形が主流となる。
社内外のデータを活用した迅速な意思決定を支援し、環境変化への適応力を高める基盤としての期待が集まる。リスク管理やリソース配分の精緻(せいち)化といった成長戦略を支える領域での活用も見込まれている。
現場の再構築と「役割再設計」が格差を生む
ハードウェアとソフトウェアが融合するフィジカルAIも大きな転換点を迎えている。ヒューマノイドを始めとするロボット技術の導入にとどまらず、製造業などの産業全体をデジタル前提で作り替える基盤として位置付けられる。
従来の現場は作業者の経験と個別の設備に依存していたが、今後はデータ中心の設計へと移り、AIがリアルタイムに判断や制御を担う構造へ移行する。この動きは製造業にとどまらず、物流、社会インフラ、建設といった広範な産業で進展すると同社は分析している。
技術導入を進めるにあたり、ガートナージャパンのディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト 亦賀忠明氏は次のように指摘している。「単なる自動化ではなく、人の技能の拡張と役割再設計を前提とすることです。People Centricな視点を組み込むことで初めて、柔軟性・創造性・安全性を維持しながら生産性と付加価値を同時に引き上げられるようになります。『人とAIを前提にビジネス全体を再設計できるか』によって競争優位が決まるようになるため、先行企業と後発企業の格差は構造的に拡大していくでしょう」
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