AI防御とK8s標準化がもたらす価値
VMware離れを食い止めるか? 今「VCF 9.1」が再評価される理由
2027年のサポート期限が迫り、約7割の企業が脱VMwareを模索するなか、最新の「VCF 9.1」に再評価の動きが出ている。AIセキュリティ強化やK8s統合は情シスの移行判断をどう覆すのか。
「VMware Cloud Foundation」(VCF)が重要な転換点を迎えている。次の展開を模索する企業のインフラ担当者にとって、VCF 9.1は単なるサポート継続にとどまらない利点をもたらす選択肢となっている。
VCF 9.1は2026年5月にリリースされた。2026年8月31日から9月3日にかけて米国ラスベガスで開催された「VMware Explore 2026」では、VCF 9.1のAIセキュリティ機能が参加者の間で大きな注目を集めた。旧バージョンのVCFが2027年10月に公式サポート終了を迎えることも関心を高めている要因だ。
VCF 9.0では、モデルの取り込みや管理を含む「Private AI Services」が統合された。続くバージョン9.1では、AIと従来のワークロードの双方を保護するために5層のセキュリティ制御が追加された。これにはVCFホストのライブパッチ適用や「vSAN」による保存データの暗号化など、脅威の検出と防御を担う機能が含まれる。
Broadcomは「Private AI Factory」の更新に合わせて、アクセス制御やデータプライバシー制御を備えたマルチテナントのモデル共有機能を追加した。さらに、150種類以上のサードパーティー製オープンソースモデルやオープンウエイトモデルに対応する新しいAIゲートウェイもプレビュー公開した。このゲートウェイはアプリケーションレベルの認可に対応する。加えて、VCF上で稼働するAIエージェントを保護する「セキュアAIエージェントフレームワーク」も公開された。デフォルトでサンドボックス環境による隔離を提供する。
あるITコンサルタントは、自身が支援する数百社の顧客企業の多くが、VCF 8から9.1へ直接移行すると予測している。プライベート環境でのモデル運用に向けたセキュリティ機能の強化が、その判断を後押しているという。
本記事では、再評価の動きが出ているVCF 9.1のAIセキュリティ強化やK8s統合は情シスの移行判断をどう覆すのかを考える。
プラットフォームのセキュリティ対応力が銀行のVCF移行を後押し
カナダのカルガリーを拠点とするITサービス企業Digitally Accurateでプロジェクトリード兼シニアコンサルタントを務めるダニエル・キア氏は、今週のTechTargetの取材に次のように語った。「Hugging Faceと連携してモデルを取得できる意義は大きい。データの外部流出や、公開環境で勝手に再学習される懸念がなくなる。今週Broadcomが発表した内容で優れているのは、デフォルトで全ての通信を拒否する設定だ。連携させたい場合は、明示的に許可を与える必要がある」
別のVCF利用企業も、VCFホストへのライブパッチ適用を始めとするプラットフォーム自体のセキュリティ向上を理由に、バージョン9.1へ移行する価値があると評価する。
「VMware Explore 2026で得た最大の気付きは、VCF 9.1の導入によって、システム全体の脆弱(ぜいじゃく)性修復を最大限に自動化し、俊敏に対応できる点だ」。北米のある銀行でVMware製品のプロダクトオーナーを務めるスコット・ラフォレ氏はそう話す。同氏は社内規定を理由に、銀行名の公表を控えるよう求めた。
ラフォレ氏は、近代化によってプラットフォームの安全性を高めるため、チームを挙げて500台のホストからなる旧「VxRail」環境の移行作業を急いでいるとTechTargetに明かした。公式サポート終了前の完了を目指しているところだ。
「VxRailでは、あらゆる変更がアップグレードを意味する。全ての関連要素を追従させる必要があるため、作業は複雑になりやすい」とラフォレ氏は言う。「7月末に重大なVMwareセキュリティアドバイザリ(VMSA)が公開された。普段なら変更管理部門がブレーキをかける場面だが、この緊急事態では立場が逆転した」
「VCF 9.1によってシステム修復を自動化し、対応の俊敏性を高められる点が最大の収穫だ。以前は年に2回アップグレードを実施していた。しかしセキュリティ脅威が増加し、Broadcomが迅速なパッチ提供を確約している以上、ベンダーのリリース速度に合わせてこちらも迅速に対応する必要がある」(ラフォレ氏)
Kubernetes戦略の明確化が促すVCFとTanzuの再評価
個別製品をVCFに統合したことが値上げの根拠だとBroadcomは主張する。だが、Informa TechTargetの調査部門Omdiaの調査によると、企業の69%が既存の仮想化プラットフォームの代替策を検討している。この値上げは競合ベンダーへの追い風にもなっている。
しかし、今回示されたBroadcomのKubernetes戦略の調整により、VCFと「VMware Tanzu」の双方を再評価する動きが参加者の間で広がった。
従来、同社のKubernetes対応はTanzu製品に依存していたが、VCF 9.1では「VMware vSphere Kubernetes Service」(VKS)がインフラの基本機能となった。IT運用チームは統一されたAPIを使い、仮想マシン(VM)とコンテナを並行して管理できる。今週、TanzuはVCFに加えて、パブリッククラウド上のディストリビューションを含む他のコンテナ基盤にまたがるKubernetes IaaSのサポートを発表した。
VMware Explore 2026のある参加者は、自社がVCF 9へ移行するか競合製品を選ぶかまだ決めかねているものの、VKSの新たな位置付けによってBroadcomが有力な選択肢に残っていると話す。
「VCF 9.1は、誰もが待ち望んでいた形になった」。ニューヨーク州バッファローのVMwareユーザー会リーダーを務め、航空宇宙企業でインフラエンジニアとして働くリチャード・ケニヤン氏(社名非公開を希望)はそう語る。「認定を受けたプラットフォームであり、Kubernetes環境で主要な構成要素となった。どのVMwareライセンスを選んでも標準で含まれている点も評価できる」
Kubernetes戦略が明確になったことで、2026年4月にエージェント型オーケストレーションやデータサービス機能を追加したTanzuを再検討する参加者も現れた。
「長年にわたり、VCFやVMwareの製品群でTanzuをどう位置付けるべきかが議論されてきた」。コロラド州フォートコリンズのビール醸造会社New Belgium BrewingでIT運用ディレクターを務めるアダム・リトル氏はそう振り返る。同社はすでにVCF 9を運用し、複数のエージェント基盤を評価している。「開発者は納期の短縮やVCFとの統合速度に期待を寄せている。VMとコンテナの連携という課題に、両者をつなぐ接着剤としての役割に注目している」(リトル氏)
数千社規模の導入基盤を持つVCF全体と比べ、Tanzuの導入実績は数百社にとどまる。エージェント型AIの基盤争いで、Tanzuは依然として後発の立場だ。しかしBroadcomのTanzu部門ゼネラルマネジャーを務めるプルニマ・パドマナバン氏によると、Kubernetes戦略の変更と2026年4月のエージェント型AI機能の追加によって、Tanzuへの関心が再び高まっているという。
「過去6~8カ月で導入の動きが戻り始めている。構成が整理されており、データサービス管理、セキュリティ、AIといった具体的な用途で採用が進んでいる」(パドマナバン氏)
「AgenticOps」を重視する「VCF 9.x」のロードマップ
AIエージェントは、すでにVCF 9.0のAIアシスト機能を支えている。VCF 9.1では管理画面の最上位タブに配置され、障害管理の際にチャット形式でナレッジベースを照会できる。BroadcomのVCF部門でAI・先端サービス担当グローバルヘッドを務めるクリス・ウルフ氏によると、同社は今後、VCF向けに「AgenticOps」と呼ばれる自律的な自動化を拡大し、ユーザーに代わって作業を実行する機能を追加する計画だ。
「今後予定されている2回のマイナーリリースで、サポート窓口への問い合わせ検索や診断支援にとどまらず、プロアクティブな診断機能を提供する。問題の兆候を捉え、ログの解析を支援して迅速な原因究明を可能にする。VMware Explore 2026のデモで示したように、エージェントが特定の問題や設定ミスを検知し、変更を実行するかどうか管理者に確認を求める運用が可能になる」(ウルフ氏)
カンファレンスの参加者からは、VCF 9への移行後にAgenticOpsを試したいという声が聞かれた。例えばラフォレ氏は、「Microsoft Copilot」を使って独自の自律型ワークフローを構築し、既存のVCFインフラ管理に活用している。しかし、トークン費用の制約に直面しているという。
「『特定仮想マシンの稼働環境はどうなっているか』『全体でvSANをどれだけ消費しているか』といった具体的な確認に使っている。それ以上の用途に広げようとすると、社内のガードレール機能に引っ掛かり、トークン上限を3万8000%超過していると警告が出てしまう」(ラフォレ氏)
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