帳票システムの分離によるアーキテクチャ戦略
ServiceNowの“個別開発”の落とし穴 農林中金が帳票問題を解決した方法
クラウドシステムの適用領域が広がるにつれて、日本特有の複雑な帳票要件が壁になる。農林中央金庫は、「ServiceNow」で帳票ごとの個別開発を避け、将来的な保守の手間を増大させないアーキテクチャをどう実現したのか。
農林中央金庫は、業務効率化や業務の堅確性を高めるためにITサービス管理ツール「ServiceNow」を中心としたデジタル化を推進している。社内のワークフローシステムを刷新して、グループ全体で約7000人が利用する全社システムへと成長を遂げた。
しかし、ServiceNowの適用範囲が金融機関特有の業務へと広がるにつれて、帳票出力の課題が浮上した。受発注購買業務などの業務において、押印や可変長の住所を所定の位置に正確に配置するといった複雑な要件が求められたのだ。これらをServiceNowで帳票ごとに個別開発やカスタマイズをすれば、初期開発の負担だけではなく、業務変更のたびに改修が必要になって、将来的な保守運用の手間が大きく跳ね上がる懸念があった。
こうした保守運用の落とし穴を回避するため、農林中央金庫はServiceNowでの個別開発を避け、ServiceNowと帳票出力の仕組みを切り分ける方針を採用した。
ServiceNowの改修を最小限に抑える「切り離し戦略」とは
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カスタマイズを避ける運用
農林中央金庫は、ウイングアーク1stのクラウド帳票サービス「SVF Cloud」を採用し、ServiceNowと連携する帳票出力システムを構築した。2026年10月27日、ウイングアーク1stが発表した。ServiceNowのカスタマイズを最小限に抑えながら、帳票を一元管理できる体制を整えた。受発注購買管理システムの帳票18種類、年間5万枚規模の出力を同年11月に本稼働させる予定だ。
農林中央金庫は、農業協同組合(JA)や漁業協同組合(JF)、森林組合(JForest)など、農林水産業者の協同組織を会員とする民間金融機関。1923年に設立され、JAバンクやJFマリンバンクの事業を支えるリテールビジネスの他、農林水産業や食農バリューチェーンに関わる顧客への金融サービス、国内外での投融資などを手掛ける。
農林中央金庫は業務効率化や業務の堅確性、収益向上に向けて、ServiceNowを中心としたデジタル化を進めてきた。稟議(りんぎ)や各種申請に使っていたワークフローシステムをServiceNowに刷新し、2026年10月時点ではグループ全体で約7000人が利用している。申請・承認プロセスの簡素化や承認の迅速化にもつながったという。
一方、ServiceNowの活用範囲が個別性の高い業務や金融機関特有の業務に広がるにつれて、帳票出力が課題として浮上した。受発注購買業務や資金動向管理、出資者向けポータルなど帳票出力が欠かせない業務が多く、押印や可変長の住所を所定の位置に正確に配置することも求められる。帳票ごとにServiceNowで個別開発すると、初期開発に加えて業務変更のたびに改修が必要になり、保守の負荷が大きくなる懸念があった。そこで、ServiceNowと帳票出力の仕組みを切り分ける方針を定めて、ServiceNowとの親和性や帳票の表現力、開発・保守のしやすさ、将来の拡張性を評価してSVF Cloudを採用した。
帳票システムの開発は2026年4月に開始した。農林中央金庫はSVF Cloudについて、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で帳票を開発でき、フォーマットに沿って効率的に作成できる点に加えて、日本語のドキュメントやQ&Aといったサポート体制も利点として挙げる。新たな仕組みでは、ServiceNowに入力されたデータを他のマスター情報とひも付けてSVF Cloudで帳票を出力し、PDFやMicrosoft Excel形式で契約システムやファイル共有サービス「Box」に格納する。資金動向システムでも50種類の帳票に対応する基盤を整え、2027年4月の公開を予定している。本稼働前の段階でも、ServiceNowへの機能集約とBoxとの連携によって、Boxへの文書保存が自動化されるなど利便性は向上しているという。
農林中央金庫は、ServiceNowやBoxの導入・活用で蓄積した知見を外部向けのビジネスとして展開する方針だ。ビジネス共創部の担当者は「外部企業へのServiceNowやBoxの導入支援は2025年4月から実施している。自社で実際に悩み、試行錯誤しながらDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてきたからこそ、導入時につまずきやすいポイントや現場に定着させる工夫も伝えられる。この経験を生かして、今後もお客さまの業務変革と新たな価値の創出を目指す」とコメントする。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「農林中央金庫、SVF Cloudで帳票出力基盤を構築 ServiceNowの改修を最小限に」(2026年10月28日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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