見えない実際原価、遅れる月次集計
壊れていない基幹システムをなぜ「SAP」へ? 創業80年メーカーの決断
長年稼働する独自システムは、正確な原価把握を阻み、経営判断を遅らせる要因になる。事業拡大に伴うデータ分断のリスクを避けるため、三和ニードル・ベアリングがクラウド型ERP導入に踏み切った経緯とは。
事業規模の拡大に社内システムの機能拡充が追い付かなくなれば、運用の負担や経営判断への支障が生じる。創業80年を迎える精密部品メーカーの三和ニードル・ベアリングは、事業の拡大に伴い、既存システムの限界に直面していた。
三和ニードル・ベアリングは30年以上にわたって、独自開発した基幹システムを運用してきた。一方で生産計画や原価計算などの領域はシステム化されておらず、個別の処理に依存せざるを得なかった。その結果、見積時点の原価は算出できても「いくらかかったのか」という実際原価を正確に把握できず、月次の経営データの集計に時間を要していた。
このようなブラックボックス化した業務プロセスは、現場の非効率にとどまらず、経営判断の遅延という重大なリスクを招く。そこで三和ニードル・ベアリングは、単なる老朽化への対処ではなく、EV(電気自動車)やヘルスケアなど成長分野へのグローバルな事業拡大を見据えて、経営判断を支えるデータ基盤への刷新を決断した。国内外のERPベンダー5社の製品を比較検討した末に選んだのは「SAP Cloud ERP」の採用と、業務を標準に合わせる「Fit to Standard」のアプローチだった。
「個別対処」「属人管理」からの脱却
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基幹システムのSAP移行
創業80年の精密部品メーカー、三和ニードル・ベアリングは、30年以上稼働してきた基幹システムをSAP Cloud ERPに刷新する。導入パートナーには、システムインテグレータを選んだ。これまで把握できていなかった実際原価と製造実績を可視化して、経営判断を支えるデータ基盤を整える。2026年10月22日、システムインテグレータとSAPジャパンが発表した。
三和ニードル・ベアリングは、1946年の創業以来、マイクロシャフトやコロ(ニードルベアリング用の転動体)などの精密金属部品を製造し、自動車、産業機械、医療機器といった幅広い産業に供給する。EV関連部品、ヘルスケア、ロボティクスなどの成長分野にも事業を広げ、中国・福州の製造子会社を含む、グローバルな供給体制を築いた。中期経営計画で、基幹システムの刷新を重点施策の一つに位置付けており、今回の刷新は、システムの老朽化や障害への対処ではなく、事業の拡大を見据えた計画的な取り組みだ。
従来の基幹システムは、オフィスコンピュータ上にスクラッチ開発で構築したものだ。長年業務を支えてきた一方、生産計画や原価計算など、システムがカバーしていない領域は、個別に対処せざるを得なかった。見積もり時点の原価は算出できても、実際にかかった原価を把握できず、月次の経営データの集計にも時間を要した。事業の拡大に伴い、経営判断に必要なデータを、速やかに得られる統合データ基盤の整備が課題になっていた。
コンサルティングファームと連携して、国内外の5社のERP製品を候補に選び、RFI(情報提供依頼)とRFP(提案依頼書)を経て、各社のデモンストレーションを比べた。「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を中核とするSAP Cloud ERPを選んだ理由は、生産管理領域の対応力に加え、会計まで一貫してカバーする機能の網羅性だ。パートナーは、複数のSAPパートナーを比べ、コンサルティングファーム、導入パートナー、ユーザー企業が一体となってプロジェクトを進める体制と、その方針への共感を重視した。最終的には、業務をどこまで理解しようとするかというシステムインテグレータの姿勢と、共にプロジェクトを進める体制づくりの考え方を評価した。
プロジェクトは、標準機能に業務を合わせるFit to Standardのアプローチで、業務を再設計する。原価と製造実績を可視化することで、製品別、顧客別、分野別の状況を把握し、経営判断のスピードを高めることを目指す。整備したデータ基盤の上で、AIツールの活用も進め、人にしかできない業務に、従業員が集中できる業務体制を見据える。
三和ニードル・ベアリング 上席執行役員の島田淳企画管理本部長(営業本部長を兼務)は、今回の取り組みを、足元の業務課題の解消にとどまらず、事業の成長を支える基盤への投資と位置付ける。「まずは見えていなかったものを見える状態にすることで、現場に気付きが生まれ、それが行動につながると考えている」と話す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「三和ニードル・ベアリング、30年超の基幹システムをSAP Cloud ERPで刷新」(2026年10月22日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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