全社システムは「使われてこそ成果」
「マニュアルを徹底して作成しない」 農林中金が選んだシステム定着の逆転策
WalkMeは2026年6月25日、農林中央金庫がデジタルアダプションプラットフォーム「WalkMe」を導入し、7000人超の従業員が利用していると発表した。年末調整時期の問い合わせ削減などの成果が出ている。
農林中央金庫(農林中金)は、全社的なDX戦略に伴うシステム定着と業務効率化に向け、WalkMeが提供するデジタルアダプションプラットフォーム「WalkMe」を導入した。WalkMeが2026年6月25日に発表した。グループ会社や協力会社を含む7000人以上の従業員が利用し、特定システムにおける年末調整時期の問い合わせを約3分の1に削減するなど、具体的な成果を上げている。
農林中金は、中期ビジョン「Nochu Vision 2030」の下、業務とITを一体的に変革するDX戦略を推進している。その一環として、ITサービス管理ツール「ServiceNow」、ファイル共有サービス「Box」、経費管理クラウド「SAP Concur」、人事システム「COMPANY」などの全社システムを導入してきた。一方で、現場へのシステム定着には課題があった。マニュアルから必要な情報を探しにくく、問い合わせが頻発していたほか、画面仕様(UI)が変更されるたびに外部委託が必要になるなど、システム投資の効果を実際の業務成果に結び付けにくい状況があった。
「マニュアルは徹底して作成しない」で問い合わせ件数を削減させた経緯
こうした課題を受け、農林中金はServiceNowの全社導入に合わせてWalkMeを実装した。特徴的なのは、「マニュアルを徹底して作成しない」という方針である。ユーザーが実際にシステムを操作する画面上でガイダンスを表示し、業務の中で自然に使い方を習得できる環境を整えた。
この取り組みにより、現場を大きく混乱させることなく全社展開を進めた。WalkMeの試算によると、ServiceNow上における年間の業務削減時間は4409時間に上るという。この経験を基に、農林中金はBox、社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」、SAP Concur、COMPANYへと、WalkMeの実装範囲を段階的に広げた。
年末調整時期の問い合わせを3分の1に削減
WalkMeの活用は、単なる操作ガイドの表示にとどまらない。ユーザーからの問い合わせ傾向に応じて、必要なタイミングでガイダンスを追加したり、突発的なUI変更に迅速に対応したりできる点も効果を発揮している。
毎年、年末調整の時期に問い合わせが集中していた人事管理システムのCOMPANYでは、WalkMeを実装したことで問い合わせ件数を約3分の1に抑制した。ベンダーに開発を委託して画面や機能を改修する場合と比べ、開発工数や開発コストだけでなく、調整に伴うコミュニケーションコストの削減にもつながっている。
操作支援から社内コミュニケーション基盤へ
農林中金は、WalkMeを社内コミュニケーションにも活用している。画面上にメッセージをポップアップ表示できる「シャウトアウト」機能を使い、役員メッセージの閲覧を促進したところ、2日間で職員の約50%がWalkMe経由で記事を閲覧した。業務システム上で確実に目に留まる導線としても効果を発揮した形だ。
農林中金の理事常務執行役員でITデジタル統括責任者(CI&DO)を務める半場雄二氏は、「現場職員がシステムを十分に使いこなすためにはUIが重要だ」とコメントしている。さらに、WalkMeが得意とするユーザー行動のリアルタイム把握とAIを組み合わせることで、将来的にはユーザーが「操作する」ことを意識せず、ストレスなく業務を完了できるようになるとの見方を示した。
システム導入は、利用されなければ成果につながらない。農林中金の取り組みは、全社システムの導入後に発生しがちな「使い方が分からない」「問い合わせが増える」「UI変更に追従できない」といった課題に対し、画面上のガイダンスやユーザー行動データを活用して、システム投資を業務成果へ転換した事例といえる。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「農林中央金庫、WalkMe導入でシステム投資を成果へ 問い合わせを3分の1に削減」(2026年6月26日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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