露呈したAzureの容量限界とリスク
「無限の拡張性」は幻想か Azure供給不足が突きつけるマルチクラウドの必然
クラウドの「無限の拡張性」に限界の兆しが見えている。GitHubのAWS併用や日本でのAI展開遅延が浮き彫りにするAzureの死角とは。
パブリッククラウドへの移行を検討する技術決裁者に理由を問えば、過去10年間、上位3位以内に必ず「弾力性のある拡張性」が入ったはずだ。必要なときに、必要な期間だけ、事実上無限の容量をオンデマンドで利用できるという約束があるからだ。
新規顧客がその拡張性を活用しているかどうかは大きな問題ではない。大半の企業はリフト&シフトでクラウドネイティブではないアプリを移行しただけで、拡張性を使い切ってはいないだろう。重要なのは、命令1つで利用できる容量がそこにあり、準備万端で待機しているという安心感だった。
しかし、少なくともMicrosoftについては、無制限のクラウド供給に限界が見え始めている。一部の市場や部門では、リソースの提供が制限されている兆候さえある。
GitHubのリソースをAWSに逃すMicrosoft
最近の象徴的な動きは、GitHubについての報告だ。MicrosoftはGitHubを支えるために自社のAzureプラットフォームを拡張するのではなく、AWSを利用して容量を補強し、GitHubのレジリエンス(回復力)を高めているという。Redmond(Microsoft)が買収して以来、GitHubは複数回のシステム停止に見舞われてきた。
GitHub側は、インフラとサービスが密に結合している点や、容量不足など複数の課題を指摘している。これらは、通常のクラウドユーザーにとっても共通の課題だ。ベンダーロックインを助長する要因としてもしばしば批判される。
Microsoft帝国の他の領域でも、拡張性の課題が浮き彫りになっている。例えば、2025年11月に掲げたソブリンAI(主権AI)の推論環境を展開するという公約が後退した件だ。現在、対象は4つの製品領域に縮小されている。
日本での展開には最大2年の遅れが生じている。さらに、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、ポーランド、スイスに対する個別の国家向け公約は一般化された。これらの国々は今後、欧州連合(EU)および欧州自由貿易連合(EFTA)の地域サービスを共有することになる。
以上を総合すると、Microsoftはこれまでと同様に、実現不可能なことを安易に約束してしまったのではないかという疑問が湧く。
こうした兆候を無視するのは難しい。
顧客が取れる反応は、クラウドの選択肢を広げ、マルチクラウドモデルへ分散させることだろう。ただし、MicrosoftがGitHubのリソースをAWSに逃している現状を考えれば、意図せず既にマルチクラウドを利用している可能性もある。
英国のCMA(競争・市場庁)は、Microsoftを「戦略的市場地位(SMS)」の対象にするか調査中だ。EUの規制当局も、MicrosoftとAWSを「ゲートキーパー」に指定する動きを見せている。当局は「自由に他社へ移行できるべきだ」と主張するが、言うのと実行するのとでは大違いだ。
クラウドプラットフォーム間の移行は依然として困難な作業で、共通の切符を持って満員電車を降り、隣を走る別の鉄道会社の列車に乗り換えるような簡単な話ではない。クラウドのベンダーロックインは深刻で、あまりにも多くの企業が「特定サービス専用」の制約に縛られている。
移行を阻む技術的課題は、クラウドそのものよりも手前のデスクトップ環境から始まっている。PCのログインに使う企業用IDは、そのまま全てのクラウドサービスを管理していることが多い。これは他社クラウドと簡単には交換できない。デジタルIDを握る者が、圧倒的に有利な立場に立つ。
だからこそ、デジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)に基づくCMAの調査は重要で複雑なのだ。クラウドの選択と移動の自由は、社内のデスクトップ、ID、サーバルームのインフラに根ざしている。この点がMicrosoftに強力な偏りをもたらしている。
商業的・技術的に最適なクラウドを組み合わせたいという圧力は高まっている。だが、CMAやEUの規制当局が、現状を「どのクラウドでも使える」理想郷に変えられるかは不透明だ。
当局には変革のレバーがある。ただ、スタック全体への影響を精査する必要がある。Microsoftの拡張性の限界とクラウド間の移行の難しさが、エンドユーザーの利益のために市場を開放する十分な理由になるのかを検討すべきだ。
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