Salesforce調査で判明
日本のAIエージェント導入は遅れているのか 足踏みの理由と「慎重」戦略
カスタマーサービス部門でのAIエージェント導入において、日本は世界に比べて遅れている。しかし、導入済みの企業は高い精度と成果を短期間で実感している。日本企業特有の「品質重視」に基づいたAI戦略の実態とは。
人手不足や顧客ニーズの多様化が進む中、カスタマーサービス部門におけるAI技術の活用が急務となっている。文章の要約や回答案の作成など、人間の業務を支援するAIツールの展開は各社で進んでいる。しかし、人間の指示なしに自律的に業務を完結させる完全自律型のAIエージェントの導入となると、足踏みをする企業は少なくない。
セールスフォース・ジャパンが2026年7月に公開した調査レポート「カスタマーサービス最新事情:AIエージェントエディション」からは、日本のカスタマーサービス部門は他国と比べ、完全自律型のAIエージェントの導入率が低いことが明らかになった。しかし、それはAI活用に消極的であることを意味しない。日本企業は、AIツールの出力結果の確認に多大な人手をかけ、品質管理を徹底する道を選んでいるのだ。
なぜ日本企業は完全自律化を急がないのか。慎重な導入アプローチは現場にどのような成果をもたらしているのだろうか。
8割が「AIの出力確認」に追われる現状
本レポートは、2026年3月9日から4月4日にかけて実施された調査に基づく。対象となったのは、世界13カ国でカスタマーサービス職に従事する3075人(うち日本の回答者は300人)だ。
日本のカスタマーサービス部門において、人間の指示なしにワークフロー全体を自律的に行動するAIエージェントの活用率は49%にとどまる。これはグローバル平均の66%を17ポイント下回る結果だ。一方で、文章作成などの業務を支援する生成AIの活用率は83%(グローバル平均78%)、過去のデータから未来を予測する予測AIの活用率は77%(グローバル平均71%)に上る。いずれも世界平均を上回っており、AI技術の活用そのものは進んでいる状態だ。
この結果は、日本企業がAI技術そのものに消極的ということではなく、段階的かつ意図的に導入を進めていることを示している。背景には、顧客データのプライバシー保護や、法規制上のリスクといったセキュリティおよびコンプライアンス面での懸念が存在する。日本企業は、どの業務プロセスから人間の承認ステップを完全に取り除くべきか、組織として慎重な評価を実施しているのだ。
品質管理に対するこだわりの強さも、日本の顕著な特徴として表れている。AIツールを活用する日本のカスタマーサービス担当者の81%が「現在、定型的な顧客対応よりもAIツールの出力結果の確認に多くの時間を費やしている」と回答した。この割合はグローバル平均の68%を大きく上回るだけではなく、米国(72%)やインド(64%)も超えている。今後6カ月間の業務傾向についても、日本の回答者の75%が同様の傾向が続くと予測しており、グローバル平均(64%)を上回った。AIツールの出力確認業務が過渡期の一時的なものではなく、継続的な業務プロセスとして定着しつつあることを示唆している。
処理量が増加しても、日本企業は、意思決定のプロセスに人間が深く関与し続けるモデルを採用している。出力品質の確実性を保証するためには、短期的な手間の増加を受け入れるという姿勢が明確に見て取れる。
しかし、ひとたび対象業務を的確に見極め、導入に踏み切れば、日本企業は高い成果を上げている。AIエージェントを特定業務で活用している担当者のうち74%が、ナレッジ検索およびワークフォース管理でAIエージェントに自律的な業務実行を任せている。担当者のコーチングおよびトレーニングでも72%、顧客との通話終了後のアフターコール業務やナレッジの作成、パーソナライズされた商品レコメンデーションでもそれぞれ71%に達した。
AIツールが生成する回答の精度に対する評価も高く、日本の回答者の65%が「非常に正確」と回答し、グローバル平均の57%を上回った。導入後の成果が表れるのも早く、カスタマーサービス部門のリーダーおよびオペレーション担当者の36%が「30日以内に価値を実感した」と答えている。これもグローバル平均の25%を11ポイント上回る水準だ。
セールスフォース・ジャパンの三戸 篤氏(製品事業統括本部 事業統括本部長)は、調査結果を受けて、次のように話す。「日本のサービス業界は、変革において高い品質と確実性を重んじる。今回のデータは、まさにその慎重姿勢が成果につながっていることを示している」
日本企業は決してAI技術活用に消極的なわけではなく、限定的な実証実験の段階を越え、自社のコアとなる業務において着実に成果を生み出している。今後、社内におけるガバナンスの整備が進み、先行する企業の再現性の高い成功事例が共有されれば、日本市場におけるAIエージェントの導入はさらに進む見通しだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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