ある調査では、世界企業の4分の3がAIツールを「業務に不可欠」だと見なしている。この潮流の一方で、日本が活用度と信頼度の両面で世界から遅れている実態が明らかになった。日本企業が後れを取っている原因とは。
企業のAI(人工知能)技術導入は試験段階を終えて本番運用に入り、業務に不可欠な存在になりつつある。この潮流に乗り遅れまいとする一方で、企業はAI技術をどこまで信頼し、業務を任せられるのかという問いに直面している。こうした変化に対して、日本企業はどのように向き合っているのか。ある調査から、世界と日本の間にある「意識の差」が明らかになった。
インシデント管理ツールベンダーPagerDutyは2025年7〜8月、世界6カ国のITおよび事業部門の幹部1500人を対象としたアンケート調査を実施した。
調査によると、回答者全体の74%が「AIツールなしでは業務に支障が出る」と回答し、AI技術がすでに事業の根幹を支える重要な技術として位置付けられていることが明らかになった。特に、ソフトウェア開発の現場での活用は顕著で、回答者の84%がソースコードの作成やレビューといった業務にAI技術を取り入れている。
AIモデルが自律的に判断し、タスクを実行する「AIエージェント」についても、調査対象企業の75%が複数のAIエージェントをすでに運用していると答え、その急速な拡大ぶりがうかがえる。回答者の77%が、「1年前と比べてAIモデルの生成内容への信頼度が高まった」と答えており、その要因として49%の回答者が「生成内容の品質向上」を選択した。企業の経営層は、AIモデルが出力する結果の精度向上や、成功体験の積み重ねによって、その信頼を深めていることが読み取れる。
回答者全体のグローバルな傾向と日本の状況は大きく異なる。AIツールを「不可欠」だと回答した日本の回答者の割合は67%と調査対象国の中で最も低く、世界平均との間に差が見られる。
この慎重な姿勢は、AI技術への信頼度において顕著に表れている。システム障害やセキュリティ問題といった危機発生時に、「人の代わりにAIエージェントに対処を任せられる」と答えた日本の回答者は64%にとどまり、世界全体の平均回答率81%を大きく下回った。
この背景には、AIツール管理体制の整備の遅れがある。AIツールの利用に関する明確な社内ガイドラインを導入していると答えた日本の回答者は32%だった。AIモデルが生成したソースコードの品質を確保するためのテストプロセスを確立している日本企業は19%と、米国の59%に及ばず、品質管理が場当たり的になっている実態も明らかになった。
PagerDutyのプロダクト担当シニアバイスプレジデントであるデービッド・ウィリアムズ氏は、「自動化とAIエージェントを取り入れた企業は、効率性向上やコスト削減といった成果を享受できる」と指摘する。AI技術の活用が国際競争力を左右する時代において、日本企業にはAIツールを使いこなすための制度設計と、失敗を許容しつつ信頼を醸成していく取り組みが急務だと言えそうだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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