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スポンサー付きブログの持つリスクと課題IT変革力【第28回】

企業が謝礼や商品を提供する代わりに、一般の消費者にブログに書いてもらうという「スポンサー付きブログ」が、マーケティングの中でも増えてきています。しかし、この新しいIT活用型マーケティングも、企業内部統制の視点から見ると問題が見えてきます。果たしてその問題、そしてそこから派生するリスクとは何でしょうか。

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 最近、企業が謝礼や商品を提供し、一般の消費者がブログを書く「スポンサー付きブログ」がはやっています。このIT活用型マーケティングの現象は、日本だけではなく米国でも頻繁に見られます。消費者個人のブログが一種の代理店の役割をする、アフィリエイトプログラムに関連したブログに見られるように、「スポンサー付きブログ」は一般に悪いわけではありません。しかしともすれば、ステルスマーケティングとかアンダーグラウンドマーケティングと呼ばれている新手のマーケティングの一種と考えられています。そして、企業内部統制の基本であるCOSOフレームワークの視点から見れば、いくつかの問題があります。また、Web2.0と呼ばれる新たなネット環境の下では、顧客の大きな反発を招いてしまうリスクがあります。今回はこれを論じましょう。

スポンサー付きブログとは何か

 2006年11月3日のNHK「ニュースウォッチ9」でスポンサー付きブログの現状が放映されました。筆者も後でYouTube上に投稿されていた番組ビデオを見ましたが、この番組ではミスキャンパスとしてブログを書いている多数の女子大生が登場しました。そして企業から食事や商品、サービスの供与、謝礼をもらっている場面が流されました。その結果、「企業から金をもらって提灯記事を書いているブロガー」という非難が集中し、番組に登場した女子大生のブログが大炎上したという事件が起こりました。

▼参照:「NHKに取り上げられた 女子大生のブログ炎上」

 企業から依頼されて消費者が書くブログは、「スポンサー付きブログ」と呼ばれています。米国でも日本でも「スポンサー付きブログ」は流行の兆しを見せています。そして、日本企業を含む多くの有名企業が「スポンサー付きブログ」を試み始めています。しかし、上述した「女子大生ブログの炎上」のように消費者からはいろいろな批判もあります。

スポンサー付きブログの何が問題か

 それでは、一体、「スポンサー付きブログ」の何が問題なのでしょうか。

 一足先に「スポンサー付きブログ」を経験した米国では、米国広告協会が、ステルスマーケティングやアンダーグラウンドマーケティングと呼ばれている「スポンサー付きブログ」の問題点を以下のように指摘しています。

 (1)「スポンサー付きブログ」は法律違反ではない

 (2)しかし倫理上の問題がある

  −スポンサー付きであることを隠している

  −自ら体験してもいない商品やサービスを褒めて勧める傾向がある

  −体験した商品やサービスの感想が正直に書かれていない

内部統制の視点から見てみよう

 明らかに米国広告協会の指摘は、内部統制上の視点を踏まえています。これは、J-SOXと呼ばれている金融商品取引法においても指摘されている問題です。読者の皆さんは、内部統制における6つの要素の中に「統制環境」があったことを覚えていらっしゃると思います。「統制環境」の中には企業の誠実性や倫理観が入っています。「ステルスマーケティングやアンダーグラウンドマーケティングと呼ばれるスポンサー付きブログ」は、この「統制環境」に触れると考えられます。会社として「誠実ではなく倫理上問題がある」というわけです。当然、ブログの炎上はブランドイメージに対する「リスクへの評価と対応」の問題として考えるべきでしょう。

 上記の米国広告協会は、スポンサー付きブログを以下のように改めるべしという指針を出しています。

 −スポンサー付きであるとブログ上に明言する

 −商品やサービスを必ず体感する

 −感想は正直に書く

 確かにこうすれば、「スポンサー付きブログ」は俳優や女優が出演しているテレビコマーシャルなどと位置づけが同じになり、不誠実という批判は消えてしまいます。

 また、上記のような正直な対応は、内部統制上の重要な要素である「情報と伝達」という視点からも十分なものとなると考えられます。

誠実さ、倫理観の視点を重視する

 さて、Web2.0という新しい時代には、「スポンサー付きブログ」などの新たなIT活用型マーケティングが流行すると考えられます。そして、CGM(大衆表現社会)と呼ばれる新しい環境下では、個として自立した「人や企業の信頼感」が最も重要な要素になります。下手をすれば消費者や顧客からブログが炎上するような思わぬ反発を招いてしまうリスクがあります。

 そういった環境下では、ステルスマーケティングやアンダーグラウンドマーケティングなどは受け入れられず、早晩消えていく運命にあると認識してIT活用型マーケティングを支援しましょう。

(野村総合研究所 社会ITマネジメントコンサルティング部 上席研究員 山崎秀夫)

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